生成AIのリスクとは?企業が知るべき7大リスクと今すぐできる対策を徹底解説
2026.06.16

「生成AIを業務で使いたいけど、情報漏えいが心配…」
「生成AIのリスクって具体的にどんなものがあるの?」
そんな疑問をお持ちの方に向けて、本記事では生成AIの7大リスクと、企業が今すぐ取り組める対策を解説します。
ChatGPTをはじめとする生成AIは業務効率化の強力なツールですが、使い方を誤れば情報漏えい・著作権侵害・法的トラブルなど深刻な問題を引き起こしかねません。実際に、社員がAIに社内の機密情報を入力してしまった事故や、AIが生成した架空の情報を業務に使ってしまった事例が起きています。
本記事では、具体的な被害事例も交えながら、製造業をはじめとした企業が押さえるべきリスクと対策をわかりやすくまとめました。ぜひ、自社のAI活用ルールづくりの参考にしてください。
目次
- 生成AIとは?いま企業が導入を急ぐ理由
- 生成AIの仕組みと従来AIとの違い
- 企業での活用が急速に広がる背景
- 生成AIの7大リスク
- ①情報漏えいリスク
- ②ハルシネーション(虚偽情報の生成)リスク
- ③著作権・知的財産権の侵害リスク
- ④サイバー攻撃に悪用されるリスク
- フィッシングメールやマルウェア生成への転用
- プロンプトインジェクションとは
- ⑤バイアス・倫理リスク
- ⑥ディープフェイクリスク
- ⑦法規制・コンプライアンスリスク
- EUのAI規制法(AI Act)と日本のAI事業者ガイドライン
- 「ソフトロー」でも無視できない理由
- 製造業固有の法的リスク
- 生成AIリスクの実際の被害事例・トラブル事例
- 事例①:Samsung社員がChatGPTに社内ソースコードを入力
- 事例②:弁護士がAI生成の架空判例を裁判に提出
- 事例③:AIが生成した偽画像が株価に影響
- 事例④:Amazonがバイアスを持つ採用AIツールの廃止
- 企業が今すぐ取り組むべき生成AIリスク対策5選
- ①セキュリティ要件を満たすAIツール・サービスの選定
- ②社内利用ガイドラインの策定
- ③入力してはいけない情報の明確化
- ④AI出力の品質チェック体制の構築
- ⑤従業員へのAIリテラシー教育
- まとめ|生成AIのリスクを正しく理解し、安全に活用しよう
生成AIとは?いま企業が導入を急ぐ理由

生成AIの仕組みと従来AIとの違い
生成AIとは、テキスト・画像・音声・動画などのコンテンツを新たに「生成」できるAI技術の総称です。ChatGPTやGemini、Claude、画像生成のMidjourneyなどが代表例として知られています。
従来のAIが「与えられたデータを分類・予測する」ことを得意としていたのに対し、生成AIは大量のデータを学習し、そこから新しいコンテンツを作り出す点が大きな違いです。
企業での活用が急速に広がる背景
生成AIは、文章作成・要約・翻訳・プログラムコードの生成など、これまで人間にしかできなかった知的作業を効率化できるため、業種を問わず企業での導入が急速に進んでいます。
一方で、導入が進むほど便利さの裏にあるリスクへの理解も不可欠です。次に、企業が生成AIを活用する際に知っておくべき7つのリスクと、具体的な対策を解説します。
生成AIの7大リスク

企業が特に注意すべき生成AIのリスクを7つに分類して解説します。
①情報漏えいリスク
生成AIに入力した情報が、AIの学習データとして取り込まれ、第三者への回答に利用されてしまうリスクです。企業にとって最も身近で深刻なリスクといえます。
例えば、社内の議事録をChatGPTに要約させたり、顧客リストをもとにメール文面を生成させたりする場合、入力した情報がOpenAI社のサーバーに送信されます。設定によっては、その情報がAIモデルの学習に使われる可能性があります。
生成AIには入力した情報・データを「AIモデルの学習に使わない」設定にすることは可能です。しかし、入力した情報は学習に使う/使わないに関係なく生成AI企業(ChatGPTならOpenAI)のサーバーに送信され、それ自体がリスクと言えます。
②ハルシネーション(虚偽情報の生成)リスク
生成AIが、事実に基づかない情報をあたかも正しいかのように出力する現象を「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
生成AIは「もっともらしい文章を生成する」ことに最適化されており、「正しい情報を出力する」ことが保証されているわけではありません。これはAIの構造的な特性であり、現時点では完全に防ぐことが困難です。
たとえば、AIに技術規格や法令の内容を質問した場合、実在しない規格番号や、改訂前の古い情報を自信満々に回答することがあります。これを検証せずに業務判断に使えば、製品の不具合や法令違反につながるおそれがあります。
筆者の体感では、最近の生成AIは2023年ごろの初期のモデルよりはハルシネーションは少なくなった印象です。しかし、生成AIが詳しくない分野や参照するデータに偏り・間違いがある場合は、生成AIの原理上ハルシネーションリスクは大きくなります。
③著作権・知的財産権の侵害リスク
生成AIは、インターネット上の膨大なデータ(テキスト・画像・コードなど)を学習しています。そのため、AIが出力したコンテンツが、既存の著作物と酷似してしまうことがあります。
AIが生成した文章や画像をそのまま自社のウェブサイトやカタログに使用した場合、意図せず他者の著作権を侵害してしまう可能性があります。「AIが作ったものだから大丈夫」という認識は危険です。
④サイバー攻撃に悪用されるリスク
フィッシングメールやマルウェア生成への転用
生成AIの文章生成能力は、攻撃者にとっても強力なツールとなり得ます。自然な日本語のフィッシングメールを大量に作成したり、マルウェアのコードを生成させたりする悪用事例が報告されています。
プロンプトインジェクションとは
プロンプトインジェクションとは、AIシステムに対して不正な指示を注入する攻撃手法です。機密情報を引き出すだけでなく、AIに意図しない操作(メール送信・ファイル操作など)を実行させたり、システムの動作ルールを書き換えたりすることも可能です。
特に警戒が必要なのが「間接プロンプトインジェクション」です。これは悪意ある指示をWebページやPDF、画像に埋め込んでおき、AIがその内容を読んだ瞬間に攻撃が発動する手法です。間接プロンプトは一見隠されていることが分からないため、ユーザー側での対策が難しいのが厄介です。
⑤バイアス・倫理リスク
生成AIの学習データに偏りがあると、出力にも差別的・偏向的な内容が反映されることがあります。例えば、採用支援AIが特定の性別や属性を不利に評価するケースが報告されています。
⑥ディープフェイクリスク
生成AIの画像・動画・音声の生成能力が向上し、一見すると本物のような偽コンテンツが容易に作れるようになりました。
企業にとってのディープフェイクの脅威は主に3つです。
・なりすまし詐欺:経営者や取引先の音声・映像を偽造し、不正な送金指示を行う
・風評被害:偽画像の拡散により企業イメージや株価に悪影響を与える
・証拠の改ざん:社内文書や映像記録を偽造し、不正を隠蔽する
ハルシネーションが「AIが意図せず嘘をつく」問題であるのに対し、ディープフェイクは「人間がAIを使って意図的に騙す」問題です。対策もAI検知技術の導入や社内認証フローの強化など、異なるアプローチが必要になります。
⑦法規制・コンプライアンスリスク
EUのAI規制法(AI Act)と日本のAI事業者ガイドライン
生成AIに関する法規制は国内外で急速に整備が進んでいます。
EUでは2024年に世界初の包括的AI規制法「AI Act」が成立しました。リスクの度合いに応じて規制の厳しさを変える「リスクベース・アプローチ」を採用し、違反した場合は最大3,500万ユーロ(約54億円)の罰則が科されます。EU域外の企業にも適用される「域外適用」の規定があり、EUに製品やサービスを提供する日本企業も対象となり得ます1。
日本でも、総務省・経済産業省が2025年3月に「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」を策定しました。AI開発者・提供者・利用者の3者すべてに対し、「人間中心」「透明性」「アカウンタビリティ」といった指針を示しています2。
「ソフトロー」でも無視できない理由
日本のAI事業者ガイドラインは、法的拘束力のない「ソフトロー」です。しかし、生成AIの活用が進むにあたって日本でもEU同様の流れが進む可能性は十分にあります。
また、ガイドラインではAIの「利用者」にもリスク低減の責任があると明記されており、「AIツールを使っているだけ」では免責されない点は押さえておくべきでしょう。
製造業固有の法的リスク
製造業にとっては、以下の観点でも法的リスクが生じます。
| リスクの観点 | 具体的な懸念 |
|---|---|
| PL法(製造物責任法) | AIが設計支援や品質検査に使われた場合、AIの判断ミスで製品事故が起きた際の責任所在 |
| 品質管理基準(ISO 9001等) | AIを設計・検査工程に導入した場合の判断プロセスの透明性・トレーサビリティの担保 |
| サプライチェーン要求 | 大手メーカーがAIガバナンスを強化すると、サプライヤーにも同様の対応が今後求められる可能性がある |
生成AIリスクの実際の被害事例・トラブル事例

ここでは、生成AIのリスクが実際に顕在化した事例を4つ紹介します。
事例①:Samsung社員がChatGPTに社内ソースコードを入力
2023年、韓国Samsung Electronics社の半導体部門で、社員がChatGPTに社内の機密情報を入力してしまう事案が発生しました。ChatGPTの社内利用を許可してからわずか20日間で3件の情報漏えいが起き、半導体工場のソースコード、生産設備のプログラム、社内会議の議事録がOpenAI社のサーバーに送信されました。Samsungはその後、ChatGPTの社内利用を全面禁止する措置をとっています3。
事例②:弁護士がAI生成の架空判例を裁判に提出
2023年、米国ニューヨークの弁護士が、訴訟担当のためChatGPTを使って類似の判例を求めたところ、生成された判例に非実在のものが含まれていました。
米国連邦地方裁判所は、非実在の判例を引用した弁護士らに5,000ドル(約72万円)の支払いを命じました4。
事例③:AIが生成した偽画像が株価に影響
2023年5月、「ペンタゴン(米国防総省)付近で爆発が発生した」とするAI生成の偽画像がSNSで拡散されました5。この画像を受けて米国株式市場が反応し、S&P500が一時約0.3%下落、日中の安値を付けました。偽画像であることが判明した後に市場は回復しましたが、ディープフェイクが実際に経済的影響を与えた象徴的な事例となりました。
事例④:Amazonがバイアスを持つ採用AIツールの廃止
Amazonは2014年から履歴書を自動評価するAIシステムを開発していましたが、このシステムが技術職において男性志願者を優遇していることが分かり、2017年に廃止しました6。
このシステムは過去10年間に提出された履歴書(その大半が男性のもの)を学習していたため、「女性の(women’s)」という単語を含む履歴書を自動的に低評価する傾向を示していたのです7。
企業が今すぐ取り組むべき生成AIリスク対策5選

リスクを理解した上で、企業が今すぐ着手できる対策を5つ紹介します。
①セキュリティ要件を満たすAIツール・サービスの選定
業務で生成AIを活用する場合は、以下のようなセキュリティ要件を確認した上でツールを選定しましょう。
・入力データがAIの学習に使用されないこと
・入力データが他社データと混在されないこと
・データの暗号化・保管ポリシーが明確であること
Microsoft Copilotのエンタープライズ版は、企業向けのデータ保護機能が充実しており、実際に多くの企業に導入されています。
②社内利用ガイドラインの策定
生成AIの利用ルールを明文化することが、リスク対策の第一歩です。
ガイドラインに盛り込むべき項目としては、以下が考えられます。
・利用目的と対象業務の範囲
・利用可能なAIツールの指定
・入力禁止情報の定義
・人間による確認・承認フロー
・インシデント発生時の報告体制
③入力してはいけない情報の明確化
生成AIに入力してはいけない情報を具体的に定め、社員に周知することが重要です。
例えば、以下のような情報は入力禁止を検討するべきでしょう。
| 分類 | 入力禁止情報の例 |
|---|---|
| 個人情報 | 顧客名・住所・電話番号・メールアドレス |
| 機密情報 | 未公開の経営情報・財務データ・契約内容 |
| セキュリティ情報 | パスワード・アクセスキー・システム構成 |
④AI出力の品質チェック体制の構築
生成AIの出力は、必ず人間が確認するルールを徹底しましょう。特に外部発表するような資料や報告書は、その分野の有識者のチェックが不可欠です。「明らかに生成AIが作成したような文章/資料」で、かつその出来が悪かった場合、企業の評判を大きく落とすことになります。
⑤従業員へのAIリテラシー教育
生成AIの基本的な仕組みと限界、情報漏えいリスク、ハルシネーションの特性などについて、全従業員を対象にした教育を実施しましょう。「生成AIは万能ではない」という認識を組織全体で共有すべきです。
まとめ|生成AIのリスクを正しく理解し、安全に活用しよう
本記事では、生成AIの7大リスク(情報漏えい、ハルシネーション、著作権侵害、サイバー攻撃悪用、バイアス・倫理、ディープフェイク、法規制)と、企業が取り組むべき5つの対策を解説しました。
生成AIは業務効率化の強力なツールですが、リスクを理解せずに使えば、情報漏えいや法的トラブルといった問題を引き起こしかねません。
まずは社内ガイドラインの策定と、入力禁止情報の明確化から始めましょう。特に製造業では、図面や設計データなどの技術情報の管理体制を見直すことが、AI時代のリスク対策の第一歩となります。
製造業のAI時代、DX時代におけるデータ管理の第一歩は図面管理から。図面バンクでは、製造業におけるDXの現状と課題をまとめた業界レポートを無料で配布しています。
興味がある方は、こちらからダウンロードしてください。
- 出典:JETRO「EU理事会、AI法案を採択、2026年中に全面適用開始へ」 ↩︎
- 出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」 ↩︎
- 出典:PC Watch「Samsung、ChatGPTの社内利用で3件の機密漏洩」 ↩︎
- 出典:ITmedia NEWS「ChatGPT生成の”存在しない判例”を使った米弁護士、約72万円の支払いを命じられる」 ↩︎
- 出典:Bloomberg「米国防総省付近で爆発とのAI偽造画像が拡散、米株下げる場面も」 ↩︎
- 出典:MIT Technology Review「「女子大卒は減点」アマゾンのAI採用、男性優遇判明で廃止に」 ↩︎
- 出典:Reuters「Insight – Amazon scraps secret AI recruiting tool that showed bias against women」 ↩︎


