SOLIDWORKS 2026の新機能から見るCAD×AIの現在地|AIは設計者の「次の一手」をどこまで先回りする?

2026.08.11

次に使うコマンドを探して、メニューを開く。
ボルトを配置して、一つずつ合致を設定する。
3Dモデルが完成したら、今度は図面を開き、ビューや寸法を配置する。

一つひとつは小さな作業でも、設計者は一日の中で何度も繰り返しています。
では、CADが「次に何をするか」を先に読めるようになったらどうでしょうか?

SOLIDWORKSでは、AIが現在の作業から次に使うコマンドを予測し、ファスナーを認識して配置し、3Dモデルから図面を自動生成するところまで、設計作業へのAI活用が広がっています。
さらに2026年のアップデートでは、AIバーチャルコンパニオンのLEOが、図面の作成・修正、アセンブリの性能分析、設計変更の影響確認、PLM上の設計履歴の参照などにも踏み込みました。2026x FD03では、図面ビューの作成・配置・修正、組立手順書やマクロの生成にも対象が広がっています。

CADのAIは、単に質問に答えるだけでも、図面を作るだけでもなくなりつつあります。

この記事では、SOLIDWORKS 2026と2026年に提供されたAI機能を公式情報から整理し、AIが設計者の仕事をどこまで「先回り」できるようになったのかを見ていきます。

SOLIDWORKS 2026のAI機能は「一度に登場した」のではない

最初に、SOLIDWORKS 2026のAI機能を調べる際に、少し分かりにくい点を整理しておきます。

2025年11月に一般提供されたSOLIDWORKS 2026では、設計、シミュレーション、電気設計、PDMなどに数百項目の機能強化が加えられました。開発・提供するダッソー・システムズは、AIによる図面作成やファスナー認識、AIバーチャルコンパニオンなどを主要な強化点として挙げています。

ただし、今回紹介するAI機能がすべてSOLIDWORKS 2026で初めて登場したわけではありません。

たとえば図面の自動生成は2025x FD01ですでに提供が始まっており、2025x FD03ではビューや注記の自動配置、穴認識などがさらに強化されています。AIによるファスナー認識・組み付けも2025x FD03で提供されています。

これは、SOLIDWORKSの機能提供方法そのものが変化しているためです。

SOLIDWORKS Designでは、年次のGeneral Availability(GA)だけでなく、Functional Delivery(FD)やService Pack(SP)を通じて年間を通して機能強化が提供されています。公式サイトでは、3D CADの機能強化を年5回のペースで提供すると説明しています。

そこで本記事では、SOLIDWORKS 2026の初期リリースだけでなく、2026年8月時点で公開されているR2026x FD03までを含めて「2026世代」のAI機能として見ていきます。

なお、LEOをはじめとする一部のAI機能は3DEXPERIENCEプラットフォームとの接続を前提とし、ベータ提供のものもあります。利用できる機能や条件は契約・環境によって異なるため、導入時には最新の提供条件を確認する必要があります。

Command Predictor:AIが「次に押すボタン」を先回りする

SOLIDWORKSのAI機能の中で、日常的な操作に直結するのがCommand Predictorです。
Command Predictorは、3Dモデリング中の操作を分析し、次に使う可能性の高いコマンドを予測して表示します。

たとえばカットを作成した後であれば、フィレットや面取りなど、その後の工程で使う可能性があるコマンドが候補として表示されます。候補は現在の作業に応じて動的に変化するため、メニューやタブから目的のコマンドを探す回数を減らせます。

一見すると、単なる「おすすめコマンド」にも見えます。
しかし、CAD作業では目的のコマンドを探す行為が一日の中で何度も発生します。

メニューを開く。タブを切り替える。アイコンを探す。
一回にかかる時間は数秒でも、それが何十回、何百回と積み重なれば無視できません。

Command Predictorが興味深いのは、設計者がAIへ質問しなくても動くことです。
「次は何をすればいい?」と聞くのではなく、CAD側から「次はこれではないか」と候補を差し出します。

これまでCADは、人がコマンドを指定して初めて動く道具でした。
Command Predictorでは、その関係が少し変わります。

人が指示し、CADが実行するだけでなく、CADが人の次の操作を予測するようになったのです。

AIファスナー認識:ボルトを置いた「後」の作業まで減らす

AI Fastener Recognitionは、ナット、ボルト、ワッシャーなどの形状をAIが認識し、アセンブリへ配置する際の合致作業を自動化する機能です。

SOLIDWORKS Toolboxの標準部品だけでなく、カスタム部品やサードパーティーのファスナー、STEPなど一般的な3Dファイルについても、形状からファスナーとして認識できると説明されています。部品を挿入すると、SOLIDWORKSがファスナーを認識し、適切な位置へスナップして組み付けます。

従来は、ボルトを配置した後に、軸を合わせ、面を指定し、合致条件を設定する必要がありました。

数本なら大きな負担ではありません。
しかし、数十、数百のファスナーを使うアセンブリでは、同じ操作が何度も繰り返されます。
AI Fastener Recognitionが減らすのは、この反復部分です。

こちらの記事で取り上げたDesigncenter Solid Edge 2026にも、部品を配置する際に接続可能な面やエッジを認識し、拘束を自動適用するMagnetic Snap Assemblyがありました。

対象や仕組みは同じではありませんが、両者に共通するのは、設計者が一つずつ指定していた「部品同士をどう結び付けるか」までCAD側が推測し始めていることです。

CADのAIは、形状そのものを作るだけでなく、設計者がその後に行う操作まで省略する方向へ進んでいます。

Auto-Generate Drawing:「白紙から作図する」工程をなくせるか

図面作成にもAIが入っています。
Auto-Generate Drawingは、3Dモデルから図面シートを作り、ビューや候補寸法を自動的に配置する機能です。

SOLIDWORKS 2026では、ネイティブのSOLIDWORKS形状だけでなくインポートした形状についても穴を認識し、穴注記を適用できます。また、ビューを自動配置し、使用するシートフォーマットや規格に合わせる機能も説明されています。

ただし、この機能の面白さは「図面を自動生成できる」ことだけではありません。
2026年に入り、人がAIへ条件を伝えながら図面を作る方向へ進んでいることです。

2026x FD01では、AI-powered Drawing Generation Through Promptsがベータ提供されました。
テンプレートや規格、主要ビューなどを事前に指定し、生成前のプレビューをプロンプトで調整したうえで図面を作成できます。

つまり、「AIが作った図面を受け取る」だけではなく、「この条件で図面を作ってほしい」と指示する方向へ進んだわけです。

2026x FD02では、さらにAuto-Generate DrawingからAIバーチャルコンパニオンのLEOへアクセスし、テキストで会話しながら図面や図面表を変更できるようになりました。

2026x FD03では、LEOに図面ビューの作成、配置、修正を依頼する機能も追加されています。
流れを並べると分かりやすいでしょう。

  1. 最初は、図面を自動生成する。
  2. 次に、生成する前に条件を伝える。
  3. さらに、生成した後もAIと対話しながら変更する。

図面作成は、「白紙から人が作る」工程から「AIが下地を作り、人が条件を与えて仕上げる」工程へ変わり始めています。
ただし、現時点でAIによる図面生成にはベータ提供の機能も含まれます。
また、図面が生成されたことと、製造現場へそのまま渡せることは同じではありません。

  • どの寸法を基準にするのか。
  • どこへ幾何公差を設定するのか。
  • 加工や検査に必要な情報が十分か。
  • 設計意図を正しく伝えられているか。

こうした判断と最終確認は、依然として設計者に残ります。

Designcenter Solid Edge 2026の解説記事でも見えてきた、「AIが作図を先に進め、人が設計意図を仕上げる」という構図が、SOLIDWORKSでも現れ始めています。

SOLIDWORKS公式のDelivery Dayでは、プロンプトを使った図面生成やLEO/AURAなど、2026x FD01で追加されたAI機能の実際の操作を確認できます。

AURAとLEO:AIは「操作支援」から「設計情報を読む」へ

SOLIDWORKS 2026のAIを考えるうえで、コマンド予測や図面生成だけを見ると全体像を見誤ります。

もう一つ重要なのが、AIバーチャルコンパニオンです。
SOLIDWORKS 2026では、AURAが新しいAIバーチャルコンパニオンとして紹介されました。
AURAは3DEXPERIENCEプラットフォームのユーザーを対象に、3DSwym上の投稿やWiki、質問、公式ドキュメントなどから情報を取得し、内容を要約したり、操作方法などの質問へ回答したりします。

つまりAURAの役割は、設計形状を直接作るというより、組織やコミュニティに蓄積された知識を探して取り出すことにあります。

そして2026年のFunctional Deliveryでは、LEOが設計環境へさらに深く入ってきました。

FD02では、LEOへアセンブリの性能について質問すると、対象のアセンブリを分析し、改善案を提示できます。
設計変更を行う前に、その変更によってどの部品やアセンブリ、下流の依存関係が影響を受けるかを分析するDesign Change Impactも追加されました。

さらに興味深いのがPLM Model Insightsです。
LEOは、関連するリビジョン、成熟度、所有者、関連ファイル、変更アクションなどのPLM情報を検索できます。
特定のファイルについて、誰が作業したのか、何回編集されたのか、編集がどの時期に行われたのかといった設計履歴についても、会話形式でレポートできると説明されています。

FD03では、LEOの役割はさらに広がりました。
3Dモデルから組立順序を分析し、画像付きの組立手順書を生成したり、「ファイル名を一括変更したい」「特定形式で出力したい」といった要求からSOLIDWORKSマクロを生成したりできます。大規模アセンブリの性能分析や簡略化まで、自然言語から進められる機能も追加されています。

ここまで来ると、AIの役割は「次に使うコマンドを教える」だけではありません。

  • 設計作業を支援する。
  • 図面を作る。
  • 問題を分析する。
  • 設計情報を探す。
  • 履歴を読む。
  • 必要な自動化処理そのものを作る。

AIがCADの中の一つの機能ではなく、設計環境のさまざまな情報や操作へアクセスする窓口になり始めています。

AIだけではない:図面を「正確に伝える」機能も進化

SOLIDWORKS 2026には、AI以外にも図面業務に直結する改良があります。

たとえばマグネットラインは、従来のバルーンに加え、注記や溶接記号などのアノテーションの配置・整列にも利用できるようになりました。

幾何公差では、GTOL値の中へ任意のテキストや記号を追加できます。
寸法線についても、テキストや注記と交差・重複する部分に自動的にブレークを設け、図面を読みやすくする機能が強化されています。
AIによる自動生成は目を引きます。

しかし、製造現場では「生成できること」と同じくらい、「正しく伝わること」が重要です。
寸法や幾何公差、注記が読みにくければ、加工者や検査担当者が経験で補わなければなりません。
図面を速く作るためのAIと、完成した図面を誤解なく伝えるための機能。

SOLIDWORKS 2026では、この両方が進んでいます。

こちらの記事もおすすめです

AutoCAD、Solid Edge、SOLIDWORKS:3つを並べるとCAD×AIの現在地が見える

ここまで本連載では、3つのCADを見てきました。

第1回のAutoCAD 2027では、Autodesk Assistantを通じて現在開いている図面について質問し、図面情報を確認するAIを取り上げました。

第2回のDesigncenter Solid Edge 2026では、3Dモデルから2D図面を作る工程をAIで大幅に自動化するAutomatic Drawingを取り上げました。

そしてSOLIDWORKSでは、次のコマンドを予測し、ファスナーを認識し、図面を生成し、さらにLEOが設計変更やアセンブリの状態、PLM上の設計履歴まで扱う方向へ進んでいます。SOLIDWORKS自身も、Command PredictorやGenerative Drawingsなど、予測型・支援型・生成型のAIを設計環境へ組み込んでいます。

もちろん、これらのように完全に分けられるわけではありません。

  • AutoCADは「答えるAI」。
  • Solid Edgeは「作るAI」。
  • SOLIDWORKSは「先回りするAI」。

各製品の機能領域は、すでに重なり始めています。
それでも3製品を並べると、大きな方向性は見えてきます。

CADのAIは、「質問すると答える」ところから、

  • 「次の作業を提案する」
  • 「作業そのものを実行する」
  • 「図面などの成果物を生成する」
  • 「設計情報や履歴を探す」

ところまで、設計プロセスの中へ入り始めています。
CADは、人がすべての操作を細かく指定する道具から、設計者と一緒に次の工程を進める環境へ変わりつつあります。

AIが先回りするほど、「過去を読める状態」が重要になる

SOLIDWORKSの進化から、もう一つ重要なことが見えてきます。

以前であれば、「CADのAIが見ているのは、いま開いているモデルや目の前の作業だけ」と整理できたかもしれません。

しかし、LEOがリビジョンや所有者、変更履歴などのPLM情報へアクセスし、AURAが蓄積された知識を検索・要約するようになった現在、その説明は正確ではありません。

AIは、現在の作業だけでなく、蓄積された情報から過去を探し、設計の履歴を読み解く方向へ進んでいます。

だからこそ、次の問題が浮かび上がります。
AIが賢くなれば、過去の設計資産は自動的に活用できるのでしょうか。
答えは、そう単純ではありません。

AIが検索・参照できるのは、AIからアクセスできる場所にあり、検索できる状態になっている情報です。

  • 10年前の図面が紙のまま書庫にある。
  • PDFが共有フォルダの奥に散らばっている。
  • 「最終」「最終2」「最新版」といったファイル名で、どれが正しいのか分からない。
  • 図面と仕様書、見積書、検査記録が別々に保存され、関連付けられていない。

このような状態では、AIの能力だけが高くなっても、過去の設計資産を十分には活用できません。

SOLIDWORKS自身が、AURAで蓄積された知識を検索し、LEOでPLMデータや設計履歴を扱う方向へ進んでいることは、逆に言えば、AIが参照できるデータ基盤の重要性が高まっていることを示しています。これは公式機能から導ける一つの示唆です。

作図を担うAIと、過去図面を活かすデータ基盤。

この二つは、別々の話ではなくなり始めています。

AIが高度になるほど、「そのAIに何を読ませられるのか」が重要になるからです。

AIは「次の一手」だけでなく、「過去の一手」も読む時代へ

Command Predictorは、設計者の次の一手を予測します。
Auto-Generate Drawingは、その先に必要になる図面作成を支援します。
LEOは、設計変更の影響を分析し、PLM情報や設計履歴を探し、さらに作業そのものの自動化へ踏み込み始めました。

CAD×AIの現在地は、「人がコマンドを選び、CADがそれを実行する」という従来の関係から、確実に変わり始めています。

これから設計者に求められるのは、すべての操作を自分の手で行うことではありません。

  • どこをAIに任せるのか。
  • 出てきた結果をどう評価するのか。
  • どこで人間が設計判断をするのか。
  • その境界を設計することが、これまで以上に重要になります。

そして、AIが「過去の一手」まで読めるようになるほど、その過去を読める状態で残しているかが問われます。

AIにとって存在しないのは、古い図面ではありません。
データとして見つけられない図面です。

図面バンクは、紙やPDFで蓄積された過去図面のデジタル化、検索、関連情報のひも付けを通じて、設計資産を次の仕事で使える状態にする仕組みづくりを支援します。

AIを導入する前に、AIが読める設計資産をどう整えるか。
CADのAIが進化するほど、この問いは重要になっていくでしょう。

参考資料・出典

  1. [1]Dassault Systèmes「Dassault Systèmes Announces SOLIDWORKS 2026: AI-Powered Design and Collaboration for the Generative Economy」
  2. [2]SOLIDWORKS Blog「What’s New in SOLIDWORKS 2026 – Design」
  3. [3]SOLIDWORKS「SOLIDWORKS AI: CAD Tools for Workflow Optimization」
  4. [4]SOLIDWORKS「What’s New in SOLIDWORKS Design」
  5. [5]SOLIDWORKS Blog「What’s New in SOLIDWORKS 2026x FD01 – Design and Modeling」
  6. [6]SOLIDWORKS Blog「What’s New in SOLIDWORKS Design R2026x FD02 – Design and Modeling」
  7. [7]SOLIDWORKS Blog「What’s New in SOLIDWORKS 2026x FD03 – Design and Modeling」
  8. [8]SOLIDWORKS Blog「What’s New in SOLIDWORKS AI R2026x FD03」
  9. [9]SOLIDWORKS Blog「What’s New in SOLIDWORKS 2026 – Collaboration and Data Management」