図面の効率的保管の方法~プロジェクトファイルと図面データベースとの関係から考える
2024.02.17
皆さんは図面がどのように保管されているかを考えたことがありますか?
図面の効率的な保管法は紙図面と電子化された図面では考え方が異なりますし、電子化された図面管理であっても、やり方次第では、効率は上がりません。ここでは、図面の保管について、プロジェクトファイルと図面データベースとの関係を中心に考えてみたいと思います。
目次
図面の保管の本質
図面の保管とは何でしょうか。図面の保管とは「図面とその関連文書を適切に保管すること」です。図面は、製造の指示だけでなく、メンテナンスや営業と言った製造業の活動のベースとなるものであり、重要な「技術資産」です。
そのため、図面を適切に保管・管理することは、これらの活動を進めていくうえで極めて重要です。
また、図面は「技術資産」ですが、その本質は「情報資産」です。上で述べたように、様々な立場の人たちが図面に記載された情報をもとに、それぞれの立場に立って読み取り、行動の出発点にしています。
例えば、注文を受注すると図面を作成し、それを見積もりと共に客先に提案します。客先は、その図面をもとに検討し、営業と交渉を行います。つまり、顧客と営業の交渉の出発点は図面に書かれた「情報」をもとにしているのです。
したがって、「図面の保管」とは「情報の管理」と言い換えることができます。そして、中小企業ではこの「情報の管理」が適切に行われていないことが多々あるのです。
図面情報の電子化の波
一方ずいぶん昔から、この「情報」を電子化し、コンピュータ上で管理するということが行われています。このような、古くは「OA化」、近年では「デジタル化」と呼ばれる動きはかなりの成果を収めています。
そして近年、図面を情報と捉える「デジタル化」の流れが中小企業にも波及してきています。
図面の保管システム
次に伝統的な紙図面の管理システムと、電子化された図面管理システムの特徴と違いを、プロジェクトファイルと図面データベース(図面庫)と関係を例にして説明します、
伝統的な紙図面の管理システム
伝統的な紙図面の図面管理システムはすべて人の手で行われます。つまり、図面管理の専門のスタッフがおり、その人たちが中心になって、このシステムを維持しています。小さな会社では、専門スタッフを置かず、間接部門が他の業務と兼務している場合もあります。
設計部門では図面を起こすたびに図番を取り、それを図面管理台帳に記入します。プロジェクトに関する図面をすべて作成し終わると、その図面のコピーを取り、紙のファイルにファイリングします。そして、作成した図面のコピーでない方(原図)を図面庫に保管します。つまり、図面は原図とコピーの二つ存在することになります。
なお、図面庫はいままで作成した図面が蓄積・管理された「紙図面のデータベース」的なものです。ただし、図面庫の現場は図面管理用の棚が並んだ図書館のような雰囲気です。
設計を行っていくと必ず修正や変更が生じます。このため、プロジェクトファイルにファイリングされた原図のコピーに赤鉛筆や赤ボールペンで修正を加えます。つまり、この時点で、コピー図面と原図では差異が生じます。
無事、製品が完成し、客先に納入が完了すると、図面庫から原図を取り寄せ、まとめて原図に修正を加えていきます。修正が終わると、再び修正した原図を図面庫に収め、一連のプロジェクトは終了となります。
つまり、原図とファイリングされたコピーはリアルタイムでは修正されません。「原図とプロジェクトファイルにファイリングされたコピーの結合が弱い」のです。
電子化された図面管理システム
これに対し、電子化された図面管理システムでは、上で述べた紙図面の場合のプロセスが原則としてすべてコンピュータ上で自動的におこなわれます。
また、図面に変更や修正が発生した場合には、図面データベースに蓄積された原図に直接リアルタイムで修正が加えられます。つまり紙図面のシステムでは、原図とコピーの二種類が存在していましたが、電子化された図面管理システムでは原図を直接修正するため、図面の二重化は原則として行われません。されていたとしてもシステムに障害が発生した時のバックアップとしての二重化であり、図面管理システムのユーザは通常それを意識する必要はありません。
なお、電子化された図面管理システムでも、プロジェクト単位でのアクセスは可能ですが、紙図面の場合のようにコピーされた図面が現実に別データとして存在するわけではなく、プロジェクト単位で表示することが可能になっているだけです。
電子化された図面保管システムのメリット・デメリット
それでは、図面を二重化しないことのメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリット
図面を二重化しないことのメリットは「煩雑さが減り、タイムリーな図面の変更・修正が可能」ということです。
上で述べたように、人手でやる場合、図面の修正があった場合、まずコピーの図面に修正が加えられます。その後原図に修正が加えられますが、その履歴や内容は設計担当が管理しなければなりません。また、人間のやることですから、転記漏れや誤記の発生の可能性があります。
これに対して、電子化された場合、図面の修正CADから図面データベース(紙図面の図面庫に相当します)に直接アクセスされ、原図相当のデータがダイレクトに修正されます。これにより、履歴管理や内容管理の負担が減り、タイムリーな図面修正が可能となります。
デメリット
図面管理を電子化するデメリットは、「イニシャルコストがかかる」ことです。システムの導入経費が結構かかります。しかし、人手による図面管理を長く続けた場合の人件費や設計担当の業務負担を考えると、長い目で見た時には電子化した方が、メリットの大きい場合がほとんどです。
もっとも最近では、クラウドシステムにより、イニシャルコストを下げ比較的低価格で導入が可能なシステムが登場しています。
電子化された図面管理システムに必要なこと
最後に、特に中小企業が図面管理システムを導入する際の注意点を簡単に説明します。
CADとの連携ができること
上述したように、電子化はCADとの連携が大前提です。よくあるのが、図面作成はCADで行うが、図面の保管や管理は紙図面で行うというパターンです。これは一見すると、設計の効率が上がるように見えますが、CADを「作図ソフト」としてしか使っておらず、効率化は十分ではありません。また、図面管理は紙で行うので本質的には人手による図面管理と同じです。
そのため、CADの電子データをそのまま図面データベースにアップロード・ダウンロードできることが望まれます。
操作がシンプルで分かりやすいこと
次に操作がシンプルで分かりやすいことです。操作がシンプルで分かりやすいことは、図面管理の時間を節約し、気軽に図面の検索を行うことにつながります。
図面単位での検索とプロジェクト単位での検索が簡単にできること
そして、できれば図面単位での検索とプロジェクト単位での検索が簡単にできることが望まれます。設計者はプロジェクト単位で図面を記憶しています。そのため、似たような仕様の受注があった場合、自分の経験から最も近いプロジェクトを検索して、それをもとに設計していきます。そのため、プロジェクトごとの図面の検索ができることがまず大前提です。
そのうえで、個々の図面単位での検索もできるといいでしょう。新規のプロジェクトで新しく設計する場合でも、できるだけ過去の図面を利用して、設計を行った方が時間と経費の節約になります。
このため、「こんな部品ないかな・・・」と思ったときに過去の図面を素早く検索できるようにしておくと、新規の設計でも可能な限り効率を上げることができます。
長い時間をかけて積み上げてきた「技術資産」を有効活用して効率を上げることを考えていきましょう。
セキュリティー対策が行われていること
図面は「資産」つまり「会社の財産」です。そのため、セキュリティー対策は重要です。そしてセキュリティー対策は外部の専門家に相談するのが最も適切です。またしっかりしたクラウドサービスを利用するのも一つの手です。特に中小企業では自前でやるよりも高度なセキュリティー対策を実現することができます。
(まとめ)図面保管システムの電子化は設計業務の効率を上げます
以上、図面の保管システムについて、プロジェクファイルと図面データベースとの関係を中心に見てきました。
紙図面の場合プロジェクトファイルと原図の結合があまり強くなく、原図を直接リアルタイムで修正することはあまりありませんでした。これに対し、電子化された図面保管システムでは、プロジェクトファイルは原図データベースの一表現様式にすぎず、本質的には修正が発生した場合、原図が直接修正されていきます。つまり、電子化した方が、図面の修正を原図にタイムリーに反映することができるのです。
このように、図面保管システムを電子化することで様々なメリットがあります。まずは、比較的安価・容易に導入することのできる「図面バンク」でこのメリットを体感してみてはいかかでしょうか。ご相談はお気軽にお申しつけください。