製造業の生成AI活用事例とは?導入メリット・注意点・進め方も解説
2026.03.10

製造業でも、生成AIの活用が着実に広がり始めています。
生成AIは、報告書作成や議事録整理、品質情報のまとめなど、これまで人手で行っていた情報整理業務を効率化できるツールとして注目されています。
一方で、「製造業では具体的にどのように活用できるのか」「導入するとどのような効果があるのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、製造業における生成AIの基本から、設計・品質管理・保守での具体的な活用事例、導入によって期待できる効果、活用時の注意点、導入の進め方までを解説します。
生成AI活用を検討している製造業の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
生成AIとは

生成AI(Generative AI)とは、大量のデータを学習し、文章や画像などを自動生成できるAIのことを指します。
従来のAIは「データを分類する」「異常を検知する」といった特定の用途で使われるものでした。一方で生成AIは、ユーザーが入力した質問や指示(プロンプト)に応じて、文章を作成したり、情報を要約したり、アイデアを提案したりすることができます。この特徴により、生成AIはさまざまな業務の効率化に活用され始めています。
代表的な生成AI
代表的な生成AIを、以下にまとめました。
| 生成AIの名前 | 開発元 | 特徴 |
| ChatGPT | OpenAI | 対話形式で質問・要約・文章作成・アイデア出しなどを幅広くこなせる、汎用性の高い生成AIです。自然な会話で使いやすく、代表的な生成AIとして紹介しやすいです。 |
| Claude | Anthropic | 長文の読解・要約・文章整理に強い生成AIです。加えて、コードの理解や記述、開発支援にも強みがあり、文章業務とコーディング業務の両方で活用しやすいのが特徴です。 |
| Gemini | Googleが提供する生成AIです。Google系サービスとの連携がしやすいのが特徴で、スプレッドシートやGoogleカレンダーに直接出力できます。さらに、Nano Bananaという画像生成に強いツールを使えます。 | |
| Copilot | Microsoft | Microsoftが提供する生成AI。Microsoft 365と連携して資料作成、要約、情報整理、業務効率化に活用しやすいのが特徴です。 企業向けのエンタープライズ版は入力したデータの保護機能を備えています。企業で使う生成AIとしておすすめできる代表格です。 |
これらはいずれもチャットベースで対話し、テキストだけでなくPDFやエクセル、画像といったファイルも扱えます。また、どの生成AIも基本的な機能は無料で使うことができます。
製造業の生成AI活用事例
製造業の生成AI活用事例として、「設計・製図での活用」「品質管理での活用」「保守・メンテナンスでの活用」を紹介します。
設計・製図での活用
設計業務では、仕様整理やレビュー資料作成など、多くの文書業務が発生します。生成AIを活用することで、設計仕様書や資料をもとに報告書のたたき台を素早く作成できます。
また、設計レビューの議事録作成にも活用できます。文字起こししたデータを入力することで、決定事項や課題を整理した議事録を作成できます。
議事録のデータは、必ずしも録音したデータを文字起こしする必要はありません。体裁の整っていないメモレベルのテキストを会議中に作成し、どんな風にまとめてほしいかという指示とともに生成AIに入力します。そうすると、まとまった議事録をテキストで出力してくれます。
議事録作成の例として、「装置用部品の加工見積依頼についての打ち合わせ議事録」をChatGPTに作ってもらいました。その結果が下図です。
結構いい感じにまとまっていると思うのですが、いかがでしょうか?

設計での他の活用例ですが、過去のトラブル報告書を読ませて、新機種の設計時の注意点を事前に洗い出してもらうことも可能です。もちろん、100%の精度で設計トラブルを予測することはできません。的外れな回答をすることもあるでしょう。しかし、ゼロから考えるよりはあらかじめ60点~70点の回答でもいいので洗い出してもらうと、そこから派生してアイデアが思いつくものです。
なお、製図の場面での生成AI活用を念頭に、生成AIに図面作成をお願いしてみました。その時の詳細を下記の記事に書いています。簡単な図面であっても現在の生成AIでは図面作成は難しそうです。
現在の生成AIは、図面の読み方・書き方や製図ルールを十分に学習していないものと思われます。
生成AIに検図をお願いしてみました。下記にその時の詳細を記事にしています。現在の生成AIでは、少し複雑な図面になると図面を読み違えてしまい、検図をAIにお願いするのはまだ難しそうです。
図面検索などの業務では、生成AIよりもAI類似図面検索が実用性が高いです。AI類似図面検索とは、大量の図面データベースから形状の類似した図面を素早く・高精度に検索するAIです。
図面管理システム「図面バンク」は、AI類似図面検索機能を搭載しており、過去図面を効率よく探すことができます。
以下の記事で、図面バンクのAI類似図面検索機能を実際にレビューしました。どのような機能なのか参考になればと思います。
品質管理での活用
品質管理では、不良製品の調査報告書や品質会議資料など多くの文書を作成します。生成AIは、検査結果や不良情報を整理し、品質報告書の作成を支援するツールとして活用できます。
例えば、不良内容や原因、対策を箇条書きで入力することで、報告書のたたき台を作成できます。また、不良データをまとめて要約することで、不良傾向の把握にも役立ちます。
品質そのものを生成AIが判定するわけではありませんが、品質情報の整理などの周辺業務を効率化することで改善活動を支援できます。
保守・メンテナンスでの活用
設備保全では、点検記録や故障履歴など多くの情報が蓄積されます。生成AIを使えば、これらの記録を要約し、トラブル傾向の整理を行うことができます。
生成AIは点検記録や保守履歴を読み込み、過去にどんな傾向のトラブルが多かったか分析することが得意です。
例えば、日々蓄積される点検記録を生成AIに読み込ませれば「最近3か月で多かった異常傾向」や「特定設備で頻発しているトラブル内容」などを整理しやすくなります。人間が点検記録を全件確認するよりも、素早く状況を確認することができます。
また、保守マニュアルや手順書の整備も設備保全の重要な仕事です。こうした資料作成の場面では、生成AIの画像生成機能も役立ちます。
一例として、製品の写真をもとに、説明用の線画を作成する方法を紹介します。例えば、下図のキーボードの写真を、生成AIに線画に作成してもらいます。

下記のプロンプト(命令文)と画像を生成AI「Gemini」に入力します。
こちらのキーボードの画像を、線画にしてください。目的は手順書用のイラスト作成です。背景は無地の白にしてください。

Geminiが出力してくれた画像は以下になります。

手順書で使えそうな線画が出力されました。
このような画像作成にも生成AIは活躍し、文書作成の効率を上げてくれるでしょう。
生成AI導入で期待される効果
生成AIを導入することで、製造業では次のような効果が期待できます。
文書作成や情報整理の効率化
製造業では、設計・品質・保守などの技術業務に加えて、報告書作成や会議資料の準備、情報整理といった間接業務が多く発生します。
生成AIは、このような文書作成や情報整理業務を効率化するツールとして活用できます。
例えば、箇条書きのメモを入力することで、報告書や議事録のたたき台を短時間で作成できます。これまでゼロから文章を書いていた場合と比べて、資料作成にかかる時間を減らすことが可能です。
壁打ちによるアイデアの創出
生成AIは、設計や改善活動におけるアイデア出しの壁打ち相手としても活用できます。製造業では、新しい装置構想や工程改善を考える際、打ち合わせでアイデア出しを行うことが一般的です。複数人で議論することで、さまざまな視点のアイデアを出せるというメリットがあります。
職場のメンバーとのいわゆる「ワイガヤ」でアイデアを出し合う重要性は、今も昔も変わりません。
一方で、生成AIを使う利点は、いつでも気軽にアイデアを出してもらえることです。テーマを入力するだけで複数の視点から案を提示してくれるため、設計者が一人で検討を進める際のヒントになります。
また、本格的な打ち合わせの前に生成AIで壁打ちしておくことで、あらかじめアイデアの方向性を整理できます。その結果、ブレインストーミングの議論が深まり、より質の高いアイデアを出しやすくなることも期待できます。
生成AI活用の注意点・課題

生成AIには多くのメリットがありますが、利用する際にはいくつかの注意点があります。
著作権・データの取り扱いに注意する
生成AIに入力する情報には注意が必要です。設計図面や顧客情報などの機密情報を外部AIサービスに入力することは、情報漏えいのリスクがあります。
情報漏えいの事例として、サムスン電子が社内機密のソースコードをChatGPTにアップロードし、誤って流出させたことを発表しています。
この情報流出が同社に直接被害をもたらしたかは不明ですが、サムスン電子としては生成AIに共有したデータがAIサービス企業のサーバーに保存され、他のユーザーの回答に使われてしまうことを懸念しているようです。
情報漏えいの対策として、入力したデータを暗号化する、AIの学習に使わないといったセキュリティ機能を持つ生成AIを使用しましょう。
例えば、Copilotのエンタープライズ版は、このようなデータ保護機能が搭載されています。
内容の正確性は人が確認する必要がある
生成AIは自然な文章を生成できますが、必ずしも内容が正しいとは限りません。誤った情報を出力する「ハルシネーション」が発生する場合もあります。そのため、AIの出力はそのまま使用せず、必ず人が内容の正確性を確認しましょう。
社内利用ルールを整備する
生成AIを業務で活用する際には、社内での利用ルールを整備することが重要です。生成AIは便利なツールである一方、使い方を誤ると情報漏えいや誤った判断につながる可能性があります。
例えば、次のような項目を整理しておくとよいでしょう。
・特に機密性の高い情報や、顧客情報、従業員の個人情報は入力しない
・社外向け資料にAIで生成した文章を使う際は、必ず確認を行う
・生成AIの回答をそのまま業務判断に使わない
社内ルールをあらかじめ決めておくことで、現場では安心して生成AIを活用できるようになります。
生成AI導入の4ステップ
生成AIのような新しいツールは、いきなり全社導入するのではなく、小さく試して効果を確認し、段階的に活用範囲を広げていくことが重要です。次の4ステップで導入を進めていきましょう。
STEP1. 生成AI活用が期待できる業務を洗い出す
まずは、報告書作成やナレッジ整理など、生成AIと相性のよい業務を洗い出します。
STEP2. ツール選定・設計を行う
自社の目的に合った生成AIを選定します。STEP1で想定した活用ができそうかといった観点の他、セキュリティ・データ保護の観点も重視しましょう。
STEP3. 生成AIの導入計画を策定する
社内ルールの策定、導入部門の範囲、対象部門の拡大スケジュールなどの導入計画を立てます。
STEP4. 小規模で実証検証(PoC)し、段階的に拡大する
まずは一部の部署や業務で試し、運用上問題ないことを確認してから段階的に利用部門を拡大していきます。
まとめ:生成AIを活用し、製造業の現場業務を効率化しよう
生成AIは、文書作成や情報整理を効率化できる技術として、製造業でも活用が広がり始めています。
ただし、AIは万能ではなく、正確性の確認や情報管理など適切な運用が重要です。また、業務によっては生成AIよりも専用AIの方が適している場合もあります。
例えば、図面管理では類似図面検索AIを備えた図面管理システムを活用することで、過去図面の検索効率を大きく改善できます。
「図面バンク」では、AIによる類似図面検索機能を搭載しており、設計資産の再利用や図面検索の効率化を支援しています。
図面管理に課題を感じている場合は、AIを活用した図面管理システムの導入もご検討ください。


