【2024年最新】AIで図面作成は可能?無料で使えるChatGPTとClaudeで検証してみた!

2024.07.14

近年、AIの進化は目覚ましく、様々な分野で活用されています。生成AIを使って自動でプログラミングを行ったり、画像や画像や動画を生成したりできるようになっています。

製造業や建設業にとって重要な「図面」も、生成AIで作られる日が来るのかもしれません。そこで気になるのが、「現在の生成AIで、図面は作成できるのだろうか?」という点です。

本記事では、無料で利用可能な最新のAI、ChatGPTとClaudeを使って、実際に図面作成を試みました。AIによる図面作成の現状と課題について検証しています。

この記事を読むことで、生成AIはどこまで図面が描けるのかが明らかになります。

「最近話題の生成AIで、図面の作成はできるのだろうか・・・」
「AIで図面を自動生成し、業務効率化がしたい・・・」

このように考えている設計会社の社長さんや機械設計者、CADオペレーターなど、図面に関わる方にとって興味深い記事になると思います。ぜひ、最後まで読んでみてください。

AIによる図面作成の可能性:現状と課題

2023年は「生成AI元年」とも呼ばれ、OpenAIが開発した「Chat GPT」をはじめとした生成AIがリリースされ、大きな話題を呼びました。AI技術の急速な進歩により、製造業でもその可能性が注目されています。

現在、図面関連でAIを活用する動きとして、類似図面の検索があります。数千、数万枚の図面から、元の図面に類似した図面を瞬時に検索するという図面管理システムがリリースされています。

たとえば、匠技研工業が提供する「匠フォース」は、自社開発したAIにより、類似図面検索を行う機能があります。これにより、今まで時間がかかっていた図面検索の業務が効率化されることをアピールしています。

参考URL:https://takumi-force.jp/

しかし、AIが0から図面作成・生成をするという事例はまだ聞いたことがありません。図面内のパラメータの変更などテキストベースのやりとりは可能と思われますが、形状を変更し、図面に反映する製図能力や、設計条件を理解し図面に反映する能力はまだ課題があると思われます。

検証に使用した生成AI:Claude 3.5 SonnetとChatGPT 4o

本検証では、最新のAI技術を代表する2つのモデルである「Claude 3.5 Sonnet」と「ChatGPT 4o」を使用して、図面の作成を試みました。これらはいずれも高度な自然言語処理能力を持つ生成AIで、2024年7月時点の最新モデルです。また、これらのAIモデルはどちらも無料で使用できるという大きな利点もあります。

Claude 3.5 Sonnetは、Anthropicが提供する生成AIです。画像や表に書かれている情報を高度に理解する力があるのが特徴です。従来モデルのClaude 3 Opusを上回る性能を持ちながら、より高速に回答を生成します。

ChatGPT 4oは、OpenAIが提供する生成AIです。テキスト、音声、画像などのファイルをシームレスに扱い、応答速度が従来モデルと比べて大きく改善していることが特徴です。

これらのモデルを使って、AIによる図面作成を検証します。

検証:フランジA図面の類似図面作成

本記事では、AIを用いて具体的な機械加工部品の図面作成を検証します。対象として選んだのは、下図に示す「フランジA」という図面です。丸物の中でもシンプルな形状と言えます。この図面をもとに、寸法や穴の位置を変更した図面を生成するようAIに指示してみます。

フランジAは以下の仕様を持つ円盤状の部品です。

・外形:Φ150mm
・内径:Φ100mm
・厚み:15mm
・穴:Φ6.6の穴が4つ、90°等分配置

生成AIに読み込ませた図面
「フランジA」の図面

この検証により、AIが図面の具体的なパラメータをどの程度理解し、指示通りに図面を生成できるかを評価します。

Claude 3.5 Sonnetでの検証

まず、Claude 3.5 Sonnetを使用して図面作成を試みました。

プロンプト:
あなたは図面作成のプロフェッショナルです。次の図面を注意深く読み、類似の図面を10枚生成してください。なお、次の条件を守ってください。

<conditions>
-出力形式はPDF形式とすること。
-図面のフォーマット(図枠情報、名称、製図、検図、承認、図番の欄)は添付の図面ファイルと同じものを使うこと。
-外形はΦ100~Φ200の間で出力すること。
-内径の大きさはΦ50~Φ150で出力すること。内径の大きさは外形より大きくなってはいけない。
-厚みは10~20の間で出力すること。
-穴の大きさはΦ3~Φ10の間で出力すること。
-穴の配置は2個~8個の間で出力すること。
</conditions>

(フランジAの図面PDFを添付)

回答:
申し訳ありませんが、私には実際にPDFファイルや図面を生成する能力がありません。しかし、ご指定の条件に基づいて、10枚の類似図面の仕様を記述することはできます。これらの仕様を基に、適切なCADソフトウェアを使用して実際の図面を作成することができるでしょう。

以下に、10枚の図面仕様を示します:

1. 外形: Φ120mm、内径: Φ80mm、厚み: 15mm、穴: Φ5mm x 4個
2. 外形: Φ180mm、内径: Φ140mm、厚み: 12mm、穴: Φ8mm x 6個
3. 外形: Φ150mm、内径: Φ100mm、厚み: 18mm、穴: Φ4mm x 3個

(中略)
8. 外形: Φ190mm、内径: Φ130mm、厚み: 19mm、穴: Φ9mm x 6個
9. 外形: Φ140mm、内径: Φ95mm、厚み: 17mm、穴: Φ5.5mm x 4個
10. 外形: Φ160mm、内径: Φ110mm、厚み: 11mm、穴: Φ4.5mm x 3個


各図面には、元の図面と同じフォーマットを使用し、以下の情報を含めます:
・図枠情報
・名称: フランジ
・製図、検図、承認の欄
・図番 (元の図番をベースに新しい番号を割り当てる)
・材質: SS400
・投影法: 第三角法
・尺度: 1:1 (または適切な縮尺)

これらの仕様に基づいて、CADソフトウェアを使用して実際の図面を作成することができます。各図面の詳細な寸法や穴の配置などは、設計者の判断で決定することができます。
実際の図面作成にあたっては、専門的なCADソフトウェアと技術的な知識が必要となります。これらの仕様は、専門の設計者やCADオペレーターが実際の図面を作成する際のガイドラインとして使用できます。

ChatGPT 4oでの検証

つぎに、ChatGPT 4oを使用して図面作成を試みました。

プロンプト:
あなたは図面作成のプロフェッショナルです。次の図面を注意深く読み、類似の図面を10枚生成してください。なお、次の条件を守ってください。

#conditions
-出力形式はPDF形式とすること。
-図面のフォーマット(図枠情報、名称、製図、検図、承認、図番の欄)は添付の図面ファイルと同じものを使うこと。
-外形はΦ100~Φ200の間で出力すること。
-内径の大きさはΦ50~Φ150で出力すること。内径の大きさは外形より大きくなってはいけない。
-厚みは10~20の間で出力すること。
-穴の大きさはΦ3~Φ10の間で出力すること。
-穴の配置は2個~8個の間で出力すること。


(フランジAの図面PDFを添付)

回答:
10枚の図面を生成しました。以下のリンクから各図面をダウンロードできます。

1. Flange Variation 1
2. Flange Variation 2
3. Flange Variation 3

(中略)
8. Flange Variation 8
9. Flange Variation 9
10. Flange Variation 10

生成された図面は、元の図面から変更したと思われる寸法が図面左側に載っているのみで、図面の形状や寸法線は何も変更されていませんでした。

生成されたFlange Variation 1
生成されたFlange Variation 1

ここから、図面の生成を試みるために対話を継続します。

プロンプト:
外形、内径、厚み、穴の大きさを図面に反映させて、再度図面を作成してください。

回答:
新しいフランジ図面を作成しました。以下のリンクから各図面をダウンロードできます。

1. Flange Drawing 1
2. Flange Drawing 2

(中略)
9. Flange Drawing 9
10. Flange Drawing 10 ​

生成された図面は、形状は変更されていましたが、図面に必要な寸法線や図枠が描けていませんでした。当然、図面を作成したとは言えないレベルです。

生成されたFlange Drawing 1
生成されたFlange Drawing 1

プロンプト:
図枠は元の図面と同じものを使ってください。寸法線を引いてください。上記の点を修正して再度図面を作成してください。

回答:
新しいフランジ図面を作成し、元の図枠と寸法線を追加しました。以下のリンクから各図面をダウンロードできます。

1. Updated Flange Drawing 1
2. Updated Flange Drawing 2

(中略)
9. Updated Flange Drawing 9
10. Updated Flange Drawing 10 ​

生成された図面は、図枠は描画されましたが、形状は変更されず、変更したと思われる寸法が左側に書かれています。最初の出力に戻ったような感じでした。

生成されたUpdated Flange Drawing 1
生成されたUpdated Flange Drawing 1

この時点で、ChatGPTに図面を生成させるのは難しいと思いました。しかし、最後の確認として、さらに図面を修正するように指示してみます。

プロンプト:
今の回答を60点とします。100点になるような回答を再生成してください。

回答:
新しいフランジ図面を作成し、元の図枠と寸法線を追加しました。以下のリンクから各図面をダウンロードできます。

1. Final Flange Drawing 1
2. Final Flange Drawing 2

(中略)
9. Final Flange Drawing 9
10. Final Flange Drawing 10
これで100点の回答となることを願っていますが、もし追加の調整が必要でしたらお知らせください。

生成された図面は、外形は修正されていますが、元の図面の図枠の上から無理矢理貼り付けた形になっています。また、寸法線の位置が不適切です。残念ながら、100点の回答にはほど遠いようです。

生成されたFinal Flange Drawing 1
生成されたFinal Flange Drawing 1

検証結果:2024年7月時点での無料AIによる図面作成の限界

2024年7月時点で、無料で利用可能な生成AI(Claude 3.5 SonnetとChatGPT 4o)を使用した図面作成の検証結果は、以下のようになりました。

Claude 3.5 Sonnet:図面の出力は不可、テキストベースでの回答のみ

Claude 3.5 Sonnetは、図面の形状や、形状変更の指示内容はおおむね理解できているようでした。寸法や穴の直径・位置の変更は、プロンプトで指示した範囲内で行っていました。また、材質、投影法、尺度などの図枠内の情報も理解できているようです。

しかし、Claude 3.5 Sonnetは図面を出力することができませんでした。そのため、修正された図面を視覚的に確認することはできません。

結論として、Claude 3.5 Sonnet単体では図面の作成が不可であることがわかりました。特に、図面をPDFや画像などのファイルで出力できないのが大きな制限となりました。

しかし、Claude 3.5 Sonnetは図面内の寸法などのパラメータは理解し、テキストベースで修正を行っていました。将来的にはCADソフトウェアとの連携や、図面チェックツールとしての活用可能性を示唆しています。

ChatGPT 4o:PDFでの出力は可能だが、基本的な形状のみ。正面図以外のビューや図枠などは出力できず

ChatGPT 4oは、図面をPDFで出力することはできましたが、情報量や製図内容が図面で必要なクオリティを満たしていません。よって、Claude 3.5 Sonnet同様、単体では図面の作成は不可と判断します。

また、ChatGPT 4oは形状を変更するという指示は理解できていましたが、変更後の形状が物理的に成立するかどうかまでは十分に検討できていないようです。

たとえば、2回目のプロンプトで出力した「flange_drawing_3.pdf」は、下図のような出力結果になりました。この形状は内径が穴よりも外側にあるため、穴を開けることができず、機械加工部品の形状としては破綻しています。

ChatGPT 4oが生成した図面「flange_drawing_3.pdf」
ChatGPT 4oが生成した図面「flange_drawing_3.pdf」

まとめ

今回は、無料で使える最新AIモデル「Claude 3.5 Sonnet」と「ChatGPT 4o」を用いて、図面を作成してみました。

今回の検証で明らかになったのは、2024年7月時点では、生成AI単独では、実用的な図面作成はまだ難しいということです。しかし、AIの図面理解能力と将来性には大きな可能性を感じられる結果となりました。

主な検証結果は以下の通りです:

1. Claude 3.5 Sonnet
・図面の形状や寸法変更の指示を理解し、テキストベースで修正案を提案できた。
・ただし、図面を描画し、ファイルで出力することはできなかった。

2. ChatGPT 4o
・PDFの出力はできたが、図面として必要な情報(図枠や寸法線など)が不足していた。
・形状変更の指示は理解できたが、現実的に成り立つ形状かどうかの判断はできていない。

これらの結果から、現時点のAIは図面の内容理解や簡易な修正提案はできるものの、設計者が求めるレベルの図面作成には至らないことがわかりました。

しかし、業界の今後の発展という観点から見ると、AIの急速な進化は見逃せません。近い将来、AIがCADソフトと連携して図面作成をサポートしたり、図面のチェックツールとして活用されたりする可能性は十分にあります。

中小企業の経営者や設計会社の皆様にとって、このAIの進化は業務効率化の大きなチャンスとなるかもしれません。

例えば:
・単純な図面修正作業をAIに任せ、設計者はより創造的な業務に集中できる
・AIによる図面チェックで、ヒューマンエラーを減らし品質向上につなげられる
・過去の図面データをAIが学習し、新規設計の提案や最適化をサポートできる

といったことが、近い将来AIを用いた設計ツールで可能になるかもしれません。

AIを活用した製造業関連のツールはすでにリリースされており、図面管理においても検索機能でAIはすでに使われています。今後のAI技術の発展に注目しつつ、AIを自社の業務プロセスにどう活かせるか検討するのは、経営者・管理者として今後判断が問われてくるかもしれません。

AIの機能の限界を見極めることや、コスト面・導入の難しさを考えると、すぐにAIを導入するのは難しいかもしれません。しかし、この分野の動向をしっかりと把握し、適切なタイミングで導入することが、将来の競争力アップにつながる可能性はあるでしょう。