【初心者向け】PLCの選び方を5つの視点で徹底解説!おすすめメーカーも紹介

2025.07.21

設備メーカーの設計部や工場の生産技術部に配属されている方は、PLCという言葉は一度は聞いたことはあるのではないでしょうか。

PLCとは、工場の中の自動機械、設備、生産装置で使われる制御装置です。Programmable Logic Controller(プログラマブル・ロジック・コントローラ)の略称でPLCと呼ばれています。

制御装置を分かりやすく言うと、コンピュータの一種です。プログラムによって機械やセンサ、スイッチなどの工場で動く機器を動かします。

私たちが普段使っているパソコンは、キーボードやマウスなどの入力装置と、ディスプレイやプリンタなどの出力装置が備わっています。

マウスを使ってブラウザのアイコンをダブルクリック(入力)すると、ブラウザが立ち上がり、インターネットが使える(出力)状態になりますよね。

PLCも入力と出力があるのは同じですが、産業用の機器を動かすのに特化しています。
例えば、
入力:スイッチ、近接センサ、カメラ、温度センサ
出力:ランプ、パネル表示機、リレー、電磁弁、モーター、ヒーター
などの機器を接続し、これら機器の全体の動きを制御します。

今回の記事では、PLCの選び方を解説します。

結論、どのPLCが正解というより、「自社の仕様にあった選定」が重要です。
PLCごとに得意なこと/不得意なことがあるので、最適なPLCは自社が何をしたいかによって変わります。

とはいえ、
👤まずはどんなポイントから絞り込めばいいのか知りたい…
👤PLCのメーカーはたくさんあってよく分からない…
という方もいらっしゃると思います。

筆者はFA(ファクトリーオートメーション、工場の自動化)業界で、PLCメーカーの動向を調べたり、実際に複数のメーカーのPLCを業務で使った経験があります。
その経験から、どういう観点でPLCを選べばよいか、ポイントを5つに絞って解説します。
ぜひ、参考にしてみてください。

ポイント①:メーカーで選ぶ

PLCを選定するにあたってまずメーカーから選ぶ、ということはよくあります。

よほどニッチな領域でなければ、多くの用途においては複数のメーカーからPLCを選べる状態です。
メーカーを最初に決めると、そのメーカーのラインアップから選定することになるので、選ぶべき機種がかなり絞られます。

日本だと、三菱電機、オムロン、キーエンス、横河電機、パナソニック、ジェイテクトなどのPLCメーカーがあります。

とは言っても、「メーカーが多すぎて、どうやって決めたらいいのか分からない・・・」という方もいらっしゃるかと思います。

PLCメーカーを選ぶための、2つの観点をご紹介したいと思います。

①類似機種の実績から選ぶ
すでに社内でよく使われている、実績のあるメーカーを選びます。新しい装置を作るときに、過去の類似機種を流用して設計することはよくあります。

PLCのハードウェア部分の接続や各種設定、プログラムを流用または参考にすることで、イチから作るよりも新機種の開発期間を短くできるからです。

②顧客の指定
こちらは能動的に選ぶというよりは、顧客の都合でメーカーが決まってしまう場合になります。

装置メーカーは顧客とまず仕様をすり合わせて、お互い問題なければ注文が入る、という流れが一般的かと思います。

仕様すり合わせの際に、例えば「PLCは三菱電機製にしてください」など、顧客からPLCメーカーを指定されることがあります。
顧客もユーザーとしてPLCを使っているので、生産設備側の都合や、周辺機器との接続設定を大きく変えたくない、という事情があるでしょう。そんな時に、このようなメーカー指定が入ってきます。

PLCおすすめメーカー2選:三菱電機・キーエンス

ここでは、筆者のPLCおすすめメーカー2選として、三菱電機とキーエンスを紹介します。

✅FA機器や、工場の自動制御にPLCを使いたい
✅「このメーカーでないとダメ」みたいな特殊仕様を必要としない
このような方にお勧めできるメーカーとなっています。

三菱電機 ― 国内シェアトップの定番メーカー

三菱電機のPLCは「シーケンサ」という商品名で展開されており、日本国内では非常に高いシェアを誇ります。そのシェアは国内PLC市場の約半数と言われており、多くの設備や装置で採用されている代表的なPLCメーカーです。

FA機器は「類似機種や前機種で、使われた実績があるか」が選定の大きなポイントになります。
三菱電機のシーケンサはシェアが大きい分、過去に導入された事例が豊富なため、新規設備でも“実績あり”として安心して選ばれやすいです。

制御盤メーカー(いわゆる「盤屋さん」)にも三菱シーケンサの扱いに慣れた設計者が多く、外注する場合でも仕様のすり合わせがスムーズに進むというメリットがあります。

三菱電機のシーケンサは自動車で言うトヨタみたいな存在と言っていいでしょう。

キーエンス ― 営業の対応が早く、ツールも使いやすい

キーエンスは営業対応が非常に迅速で、問い合わせをすればすぐに訪問・デモ対応をしていただけます。また、納期面でも基本的に当日出荷なのは魅力です。

キーエンス製のPLCはマニュアルがわかりやすく、プログラミングツールが使いやすい印象です。
筆者自身も初めてキーエンス製のPLCを使用した際、ツールの操作で迷うことはほとんどなく、比較的スムーズに装置を立ち上げることができました。

✅「PLCの納期を短くしたい」
✅「使いやすいプログラミングツールで、開発工数を短縮したい」
という方にキーエンス製のPLCはおすすめです。

ポイント②:I/O点数で選ぶ

ここからは、メーカー以外の観点でのPLCの選び方を解説します。

まずは、I/O点数で選ぶという観点です。
I/OとはInput (入力) /Output (出力) の略で、外部機器との間で信号を送受信する機能のことです。

下の図に、最もシンプルなI/O接続の例を示しました。入力端子に接続しているのがスイッチで、出力端子に接続しているのがランプです。

I/Oにスイッチ(入力)とランプ(出力)を接続

・スイッチを1回押したらランプが点灯し続ける(自己保持回路)
・スイッチを押したらランプが1秒ごとに5回点滅する

というような動作をPLCのプログラムで作ることができます。

I/O点数は少ないものだと数点(例:入力8点、出力8点)、多いものだと数千点(例:入力2,560点、出力2,560点)まで幅広いレンジがあります。
工場や装置で必要なI/O点数で機種を絞っていきましょう。

ポイント③:周辺機器との接続で選ぶ

I/O以外の周辺機器を接続するのか?というのもPLCの選定ポイントの一つです。

サーボモータを例に挙げて考えてみます。
✅PLCから位置指令をサーボモータに送り、複雑なパターンで位置決めをさせたい
✅複数のサーボモータを同期して動かしたい
このような場合は、PLCに「モーションユニット」と呼ばれる専用ユニットを増設し、サーボモータと接続します。

モーションユニットとサーボモータは、パルス指令(パルスを送るごとに、モータが回転する)やフィールドネットワーク(CC-LinkやEtherCATなどのデジタル通信)で接続します。

もう少し厳密に言うと、サーボモータはモータに電流を流して動かすためのサーボアンプという機器とセットになっています。モーションユニットは、サーボアンプと接続をします。

PLCとサーボモータの接続をまとめると、下図のようになります。

PLCとサーボモータの接続

PLCは周辺機器との接続手段がI/Oしかない機種もあります。サーボモータで位置決め制御をさせたい方は、モーションユニットに対応した機種を選びましょう。

ポイント④:設置方法やサイズで選ぶ

装置のサイズや制御盤の構成によっては、設置方法やスペースが制約になることもあります。

新規で装置を開発し、かつ制御盤のサイズが十分に大きい場合は、PLCのサイズが問題になることは少ないでしょう。

ただ、
✅既存の装置でPLCを新機種に置き換えたい
✅小型の装置で、制御盤の容積が限られている
このような場合は、確認したいポイントです。

PLCの設置方法
設置方法は、主にねじ止め式とDINレール取り付け式があります。

ねじ止め式は、制御盤の背面にねじで固定する方式です。

DINレール取り付け式は、DINレールにスライドさせて取り付ける方式です。

DINレールとは電気機器を取り付けるための金属製のレールで、ドイツのDIN規格が発祥です。レールへの取り付けが簡単で、制御盤への組立が楽なのが特徴です。欧州で多く使われている方式です。

次の動画に、PLCをDINレールに取り付ける方法が紹介されています。DINレールがどんなものか、PLCをどのように装着するかが分かりやすいです。

PLC を DINレールに取り付ける 方法 – SJ-ETHERシリーズ – 株式会社ジェイテクトエレクトロニクス

PLCのサイズ
「制御盤に入れるPLCのスペースが小さい」
このような場合は小型のPLCを選ぶことになります。

小型PLCの例としては、キーエンスのKV NanoシリーズパナソニックのFP0Hなどがあります。

パナソニックのFP0Hは、名刺サイズの小型ボディにI/OだけでなくEthernetやRS232を搭載しています。小型にもかかわらず、インタフェースが充実しているのが特徴です。

ポイント⑤:特殊仕様で選ぶ

PLCのユーザーの中には、ユーザー特有の仕様(特殊仕様)を要求される場合もあります。特殊仕様が要求される段階でPLCの機種はかなり絞られます。

筆者の経験で言えば、「μs単位のパルス入力を取り込みたい」というお客様がいらっしゃいました。
一般的なI/O入力の受付時間はms単位なので、μs単位の取り込みは高速で、特殊仕様と言えます。

この仕様を満たす一例として、オムロンのCS/CJシリーズを採用し、パルスキャッチ入力ユニットを使うことが考えられます。
同社のパルスキャッチ入力ユニットはON幅0.05ms(50μs以上)のパルス幅を取り込むことができます。

参考リンク:https://faq.fa.omron.co.jp/tech/s/article/faq02838

(まとめ)選定のポイントをつかんで、装置に最適なPLCを選ぼう

今回の記事では、装置メーカーや工場の生産現場でPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を選ぶための具体的な視点について解説しました。

今回解説したのは、次の5点です。
1.メーカーで選ぶ
2.I/O点数で選ぶ
3.周辺機器との接続で選ぶ
4.設置方法やサイズで選ぶ
5.特殊仕様で選ぶ

PLCは、「とりあえずこれを選べば正解」という機種はありません。自社の装置仕様や制約によって、最適な機種が変わってきます。
今回解説した上記のポイントに絞って選定していけば、選定において大きく外れることはないでしょう。
必要に応じて、各メーカーのカタログや営業の説明などを比較しながら検討を深めていくと、より失敗の少ない選定につながるはずです。

ぜひ本記事の内容を参考に、自社にとって最適なPLC選定を進めてみてください。