シーケンス制御の歴史をやさしく解説|からくり、リレー、PLCまでの3つの時代
2025.10.11

「PLCでシーケンス制御を組んでいるけど、こうした制御の考え方っていつからあったんだろう?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
本記事では、シーケンス制御の歴史について、現役エンジニアの視点でわかりやすく解説します。
シーケンス制御を大きく次の3つの時代に分類して紹介します。
①からくりや機械でシーケンス制御を行う時代
②リレー回路でシーケンス制御を行う時代
③PLCでシーケンスを行う時代(現在)
機械・装置の設計や制御に関わる方にとって、基礎的な理解を深める一助になれば幸いです。
目次
シーケンス制御とは
シーケンス制御とは、簡単に言うと「決められた順番どおりに、ものごとを自動で進めていく仕組み」のことです。
例えば、自動販売機では「お金を入れる→ボタンを押す→商品が出てくる→おつりが出る」といった流れがありますよね。
この流れを自動で実行する仕組みが、シーケンス制御です。
ちなみに、JISでは「あらかじめ定められた順序又は手続きに従って制御の各段階を逐次進めていく制御」1と定義されています。
シーケンス制御の身近な事例:自動販売機
先ほども例で挙げた「自動販売機」のシーケンス制御を、もう少し詳しく見ていきましょう。
お金を入れ、商品ボタンを押すと、商品の排出・お釣りの計算などが決められた手順で実行されます。
以下の図は、自動販売機のシーケンスの流れを図解したものです。

待機状態からお金を入れると、購入可能な商品が表示されます。ボタンが押されると、商品とおつりが排出されます。
この一連の流れはシーケンス制御となっています。
シーケンス制御の歴史①:昔のからくりや機械にもみられるシーケンス制御
実は、シーケンス制御の本質である「順番に動かす」という考え方は、電子制御が登場するはるか以前から存在していました。
たとえば、日本の庭園によく見られる「ししおどし」や、19世紀に流行した「ディスクオルゴール」が挙げられます。これらは一般的に「シーケンス制御されている」とは言い難いですが、「手順に従って動作を実行する」という意味では本質的にシーケンス制御と同じことをしています。
今なら電子制御で行うことを、当時はからくり(機械仕掛け)で行っていたのです。
ししおどしの例
ししおどしは、竹がシーソーのようになっていて、片方に水がたまると傾いて水を落とし、音を出す仕掛けです。
この動作の流れは、以下のようになっています。

ディスクオルゴールの例
ディスクオルゴールは、円盤状のディスクに刻まれた突起で音を鳴らす仕掛けの自動演奏楽器です。19世紀ごろ、音楽を嗜むための嗜好品としてレストランなど公共の場で置かれるなど普及しました。コインを入れると1曲流れる仕組みになっており、いわゆるジュークボックスとして使われていました。
ディスクオルゴールの動作の流れは、以下のようになっています。

シーケンス制御の歴史②:リレー回路によるシーケンス制御の時代(1900年ごろ~1960年代)

電気信号を用いたシーケンス制御は、まずリレー回路によって実現されました。
リレーとは、電気の力でスイッチのオン・オフを切り替える電磁式の部品です。
スイッチからの信号に応じて、決められた順序で動作を制御するのに使われ、シーケンス制御を構成するための基本的な要素でした。
当時の技術者はリレーを使って順序や条件を組み合わせて回路(リレー回路)にし、装置の動作を設計しました。リレー回路は1900年ごろから産業用途で使われ始め、鉄道の信号制御やエレベータの自動制御などに使われました。
しかし、この方式にはいくつかの課題がありました。
・制御内容が複雑になるほど、リレーの数や配線数が膨大になる
・回路の不具合(バグ)の検証・検出が難しい
・仕様変更のたびに配線の手直しが必要
・制御盤のスペースが大きい
これらの課題を解決したのが、次に紹介するPLCの登場でした。
シーケンス制御の歴史③:現在主流のPLCを用いた制御へ(1970年代~現在)

1970年代以降、こうした課題を解決する形で登場したのが「PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)」です。
PLCとは、装置の動作をプログラムで制御するための機器で、リレー回路の代わりとして1970年代以降一気に普及しました。
現在に至るまで、工場の生産設備をはじめとしたシーケンス制御はPLCを用いることが主流となっています。
PLCによるシーケンス制御のメリット
PLCによるシーケンス制御のメリットは、以下の通りです。
✅プログラムの作成・変更が簡単
PLCはパソコンでプログラムを作成・編集でき、配線を変更することなく仕様変更が可能です。そのため、設計や保守の効率が飛躍的に向上し、生産現場での使いやすさも格段にアップしました。
✅ハードウェアの簡素化
シーケンス制御を構築するために物理的なリレーは不要。PLC内部のメモリ(内部リレー)上で制御が完結します。その分、制御盤もコンパクトになります。
✅コスト削減
リレー部品や人件費(設計・配線工数)を削減できます。デバッグ作業においては、PLCの機能でエラー内容がモニタできるため、プログラムのどの部分に問題があるかすぐにチェックできます。この機能により、リレー回路では時間がかかっていた不具合の原因特定・修正が効率化できました。
まとめ
この記事では、「シーケンス制御の歴史」をテーマに、からくり装置からリレー回路、そして現代のPLCを用いた制御に至るまでの流れを解説しました。
シーケンス制御の歴史は、大まかに分けて次の3つの時代があります。
①からくりや機械でシーケンス制御を行う時代
②リレー回路でシーケンス制御を行う時代
③PLCでシーケンスを行う時代(現在)
シーケンス制御は自動化が盛んになった産業革命以降の技術に見えるかもしれません。一般的にもいわゆる「からくり」のことをシーケンス制御とは言わないでしょう。
しかし、その考え方自体は、ししおどしやディスクオルゴールといった昔の機械にも見ることができます。
電気制御の発展とともに、リレー回路による複雑な配線制御が広まり、1970年代以降はPLCの登場によって、より柔軟で効率的な制御が可能になりました。
現在では、PLCによるシーケンス制御は製造業や自動化設備に欠かせない存在となっています。
関連記事
「PLCは時代遅れなのか?」というテーマについて記事を書きました。あわせて参考にしてみてください。
- 引用:JIS Z8116「自動制御用語-一般」 ↩︎


