AGV、AMRとは?特徴・用途・違いをやさしく解説!

2025.06.13

近年、製造現場や物流倉庫でよく耳にするAGV(無人搬送車)とAMR(自律走行搬送ロボット)。いずれも人の代わりに荷物を運ぶロボットですが、その仕組みや得意分野には明確な違いがあります。

「AGVとAMRって何が違うの?」
「自社に導入するなら、どっちが向いているんだろう?」
と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?

この記事では、製造業や物流業で働く新人~中堅技術者の方に向けて、AGVとAMRの違いをわかりやすく解説します。それぞれの特徴やメリット・デメリット、使用事例まで紹介します。

この記事でAGV・AMRについての理解を深め、自社に最適な搬送ソリューション選びの参考にしてください。

AGVとは

AGV(Automated Guided Vehicle)とは、人の代わりに荷物を運ぶ自動走行型の台車です。日本語では「無人搬送車」または「自動搬送車」などと訳されます。主に工場や倉庫内での搬送作業を自動化するために使われており、あらかじめ設定されたルートに従って決まった経路を正確に走行します。

AGVの最大の特徴は、ガイドが必要な誘導型走行であることです。磁気テープなどの「誘導体」を床や壁に設置し、その上をAGVがトレースするように移動します。

AGVが走行するルートは基本的に誘導体の上のみの決まったルートです。

AGVの代表的な走行方式
・磁気誘導式:床に貼った磁気テープを磁気センサーで読み取りながら走行
・光学誘導式:床に貼った誘導テープの光の反射を認識しながら走行
・レーザー誘導式:レーザーレーダーが反射板を検出してルート内の自己位置を検知しながら走行

AGVの種類と搬送方式の例
AGVは、搬送するものの種類や運搬方法によって複数のタイプがあります。
・台車型:ボックスコンテナなど比較的小さいものを運ぶタイプ
・牽引型:複数のかご車やパレットを連結して牽引。一度に多くのものを運ぶタイプ
・フォークリフト型:フォークリフト内蔵で、パレットに乗った大型の荷物を運ぶタイプ

以上のことから、AGVは「決まったルート上を往復してものを搬送する」用途に向いています。

AMRとは

AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、人の代わりに荷物を運ぶロボットの一種です。日本語では「自律走行搬送ロボット」などと訳されます。AGVと異なるのは、あらかじめ設定されたガイドや磁気テープに頼らず、自ら周囲を認識してルートを判断しながら走行する点にあります。

AMRにはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる技術が搭載されており、カメラやセンサを使って周囲の環境をマッピングし、自分の位置を把握しながら最適なルートを自律的に決定します。これにより、障害物を避けたり、レイアウトが変わった現場にも柔軟に対応したりできるのが大きな特徴です。

AMRの主な特徴
・自己位置推定・ルート探索:環境をマッピングし、最適な経路を自動生成
・障害物回避機能:人や物を検知すると減速・停止・ルート変更を自律的に実施
・人との協働作業への対応:人と同じ作業空間での使用を前提とした設計のものが多い

以上のことから、AMRは、頻繁にレイアウト変更が発生する現場や、人とロボットが同じエリアで作業する環境に適しています。

AMRが活用される代表的なシーン
・EC倉庫とピッキングエリアの搬送(人はピック、AMRは搬送)
・作業者の後ろを追従して工具や部品を運ぶ
・医療現場や小売業における配膳・物品運搬

従来のAGVでは対応が難しかった柔軟性が評価され、物流の自動倉庫の現場や製造業での変則的なルート搬送、小売店の品出しなどの導入事例があります。

AGVとAMRの違い

AGVとAMRはいずれも搬送作業を担うロボットですが、その走行方式や活用シーン、運用の柔軟性には明確な違いがあります。ここでは両者の主な違いを整理し、自社の運用方針に合った選定のヒントをお伝えします。

①走行方式の違い

項目AGVAMR
走行方式磁気テープなどの誘導体に従って走行SLAMによる自律走行
(ただし、精密な位置決めのため2次元コードを設置することもある)
障害物対応ルート上に障害物があると停止障害物を回避して移動を続けられる

AGVはあらかじめ決められたルートを忠実に走行する「決まった経路を走る車両」であり、対してAMRは「状況を判断して動くロボット」に近い存在です。

②運用の柔軟性

項目AGVAMR
初期設定の手間比較的シンプル
(誘導体の設置がメイン)
比較的複雑
環境マッピングやソフトウェア初期設定などの準備が必要
ルート変更への対応比較的工数がかかる
(誘導体の再設置が必要)
工数なし~比較的シンプル
(AMRが自律的に判断し走行ルートを変更。環境が大きく変わる場合は、地図データの再構築が必要)
向いている運用環境ルートが定常的な運用ルートが変則的な環境

AGVは、決まったルートで同じ作業を繰り返す環境に適しています。一方でAMRは、レイアウトが頻繁に変わるような現場やルートが変則的(状況ごとに向かう場所が異なる場合)な環境に適しています。

③人との協働性

AMRは、人と同じ作業空間を前提に設計された機種が多いです。カメラやセンサーによって周囲環境を把握し、人が走行ルート上に来ると減速・経路変更など人との接触を避ける動きをします。

一方AGVは、安全のために人と動線を分けたり、人と同じ場所で運用するにしても人と接触しない運用を前提としています。そのため、「協働」という観点ではやや制約があります。

〇上記をふまえた選定のポイント
✅決められたルートを走らせる→AGVが向いている
✅レイアウトが頻繁に変わる→AMRが向いている
✅運行ルートが毎回変則的→AMRが向いている
✅人との協働作業が多い→AMRが向いている

自社の課題とやりたいこと、AGV/AMRが得意なことを照らし合わせて、適した搬送ソリューションを導入しましょう。

AGV、AMRのメリット・デメリット

AGVとAMRはいずれも搬送の自動化に有効な手段ですが、それぞれに得意・不得意があり、導入環境や目的に応じた使い分けが重要です。ここではAGV・AMRそれぞれのメリットとデメリットを整理します。

AGVのメリット

・運用が安定している
 あらかじめ決められたルートを正確に走行するため、作業のばらつきが少なく、搬送業務を平準化できます。
・運用が比較的容易
 レイアウトが固定されている現場では、保守・運用も含めて運用が比較的容易です。

AGVのデメリット

・誘導体の設置が必要
 磁気テープやガイドなどのインフラをあらかじめ敷設する必要があります。また、レイアウト変更時には再設置が必要です。
・柔軟なルート変更ができない
 障害物がルート上にあると停止してしまうため、その都度人の手による対応が求められます。
 「バッテリー残量が低下すると自動的に充電ドックに向かう」という一時的なルート変更もできますが、その機能は限定的です。
・人との協働が限定的
 安全対策のため、人とAGVは別の動線で運用されるケースが一般的です。

AMRのメリット

・ルートを柔軟に変更できる
 センサやカメラにより環境を把握し、最適な経路を自ら判断します。レイアウト変更も誘導体を敷き直すなど大きな工事が不要です。
 ※ただし、2次元コードを位置決めに使用する場合は2次元コードの貼り直しが必要になる場合もあります。
・障害物を回避できる
 走行中に人や障害物を検知すると、自動で減速・停止・迂回といった対応を行います。
・人との協働作業に適している
 作業者と同じ空間を共有できるように設計されている機種が多いです。

AMRのデメリット

・導入時のマップ作成や設定に時間がかかる
 導入時には、現場環境のマッピングやロボットのソフトウェア設定に工数が要求されます。
・初期コストが高くなる傾向にある
 AMRは自律移動のために高機能なコンピュータ、センサ、制御ソフトウェアを備えているため、初期コストが高くなる傾向にあります。
 ※ロボットの可搬重量や付加機能、標準品か特注品化によってAGV/AMRの価格帯は大きく異なるので、あくまで一般的な傾向となります。

AGVの使用事例:自動車組み立てラインの部品供給

次の動画では、日産自動車の組み立てラインで働くAGVが紹介されています。組立の各工程に必要な部品をAGVが供給しています。

動画では「サザエさん」などのメロディーを流しながらAGVが動いています。自動車工場など大きな工場の中に入ったことがある人なら、聞いたことのある音ですね。

AGVが音楽を流すのは、「AGVが来るから注意してね」と人に知らせる役割があります。AGVは決められたルートを走るので、人が走行ルートに割り込むと部品の搬送が止まってしまいます。
このことからも、AGVは人との協働を前提とせず、動作中に人と接触しないような運用が基本であることがわかります。

AMRの使用事例:EC倉庫のピッキング補助

次の動画では、AmazonのEC倉庫で働くAMRが紹介されています。AMRは物流拠点内の作業工程のうち「保管・棚入れ」「棚出し」の工程で活用されています。

「保管・棚入れ」の工程では、作業者が入荷した商品をポッドと呼ばれる黄色い棚に入れます。商品が入ったポッドをAMRが棚の下から持ち上げるようにして倉庫に運んで保管します。

「棚出し」の工程では、注文が入ると商品が入ったポッドをAMRが作業者の近くまで運びます。作業者がその中から商品を棚出し(ピック)します。

これまでの棚出し業務は、作業員自身が棚のところまで足を運んでピックするため、商品の場所まで往復する時間がかかっていました。

AMRを使うことで、作業者がピックしている間にAMRが次の商品を作業者のところまで持っていくため、作業者は商品のピックだけに集中できます。そのため、同じ時間でより多くの棚出しが可能になっています。

(まとめ)AGVとAMRの違いを理解し、自社に最適な搬送方式を選ぼう

AGVとAMRはいずれも、人の代わりに荷物を運ぶ搬送ロボットですが、その仕組みや得意分野には明確な違いがあります。

・AGVは、あらかじめ決められたルートを安定的に走行する自動搬送台車。
 → 搬送ルートが決められた場所を往復して荷物を運ぶ運用に向いています。

・AMRは、周囲の状況を自律的に判断しながら走行する自律移動ロボット。
 → ルートが変則的な搬送現場や、人との協働作業が求められる環境に適しています。

どちらが優れているということではなく、搬送現場の状況に応じて選ぶことが重要です。
導入を検討する際は、次のような視点で整理してみましょう。

・現場の動線やレイアウトは頻繁に変わるか?
・搬送ルートはあらかじめ決まっているか、変則的か?
・作業員とロボットは同じ空間で動く必要があるか?
・初期導入の負担と、将来的な保守・運用体制はどうか?

この記事が、AGVやAMRの違いを正しく理解し、貴社にとって最適な搬送ソリューションを選ぶヒントになれば嬉しいです。