AIピッキングとは?従来のロボットと比べたメリットと関連企業10選を解説!

2026.03.31

AIピッキング

AIは、画像や動画情報から物体を検出したり、自然言語を理解し、自然言語で文章を生成するといったことが可能です。

これをロボットに応用し、「カメラで得た情報から物体を認識し、ロボットアームで物体を掴み、目的の場所に持っていく」作業を実現するシステムがAIピッキングです。

今回はAIピッキングの基礎知識として、
✅AIピッキングが従来のロボットシステムと比べてどんなメリットがあるのか
✅AIピッキング関連企業10選
について解説します。

AI×ロボット技術やAI活用に興味のある方は、ぜひ最後までお読みください!

AIピッキングとは

まず「ピッキング」とは、棚や箱の中から目的の製品や部品を取り出す作業を指します。このピッキング作業をAIで支援するのが「AIピッキング」です。AIがカメラ映像を解析し、部品の位置や形を判断して、ロボットに「どこをつかむか」を指示する仕組みです。

AIピッキングは、多品種・不定形の部品や商品を扱う現場で、人手作業からの置き換えが期待されている技術です。

従来のピッキングロボットと比較したメリット

従来のピッキングロボットと比較した場合、AIピッキングロボットのメリットは以下の通りです。

産業用パレタイジングロボットと比較:ティーチングでは不可能な作業ができる

従来の産業用ロボットは、ティーチングによって動作を記録・再生する仕組みのため、「決まった場所のものをつかむ」作業にしか対応できませんでした。

しかし、多品種の商品を扱う現場では、「次に何をつかむか分からない」「箱の中で位置が毎回違う」といった状況で商品を掴まなければいけません。AIピッキングはこうした変動条件下でも、カメラ映像を解析して最適な掴み方を瞬時に判断することができ、従来ロボットでは難しかったランダムピッキングを実現します。

ばら積みピッキングとの比較:光が反射する形状や不定形形状に強み

こうした課題を解決するために「ばら積みピッキング」と呼ばれるロボットシステムが実用化されています。

箱の中にランダムに積まれた(ばら積みされた)物体をカメラで認識し、産業用PCで物体を認識し、ロボットアームの軌道計算をし、ロボットコントローラに指令を送る仕組みとなっています。

下記の動画のようなロボットシステムです。

高速バラ積み取出し

従来のばら積みピッキングは、CADモデルを事前に登録し、カメラで認識した物体がどのモデルに一致するか判定するパターンマッチングで認識をしています。

このパターンマッチングは形が一定の工業部品には正確に認識できるのですが、認識が苦手な形状があります。

ビニール袋に入った商品や、光沢のある物体は、光の反射によってカメラの認識能力が落ち、形状を正確に判定することが難しくなります。また、ケーブルや野菜、唐揚げのような形が不規則な物体も同様に認識が難しいという課題がありました。

AIピッキングでは、形や大きさが厳密に一致していなくても物体の特徴を見つけ、「これは唐揚げだ」というように認識することができます。

AIピッキング関連企業10選

ここでは、AIピッキング関連企業10選を紹介します。

安川電機

安川電機は、子会社のAI3(エイアイキューブ)と開発したAIピッキングロボット「Alliom Picking」を製品化しています。用途は多品種小ロットの部品供給や物流現場のばら積みピッキングを想定しています。

Alliom Pickingの特徴は金属部品から柔らかいケーブル、唐揚げのような不定形物まで同じハンドで扱えることです。実機の代わりにシミュレータで大量データを作り、照明や摩擦も再現して短期間で高精度モデルを生成。AI手法はディープラーニング+デジタルツインで、実写データから合成画像を増やし、少ないデータからでも効率的に学習します。

【安川電機】Alliomで広がるものづくり現場の自動化-2022国際ロボット展

東芝

東芝は、物流倉庫のピッキング自動化に向けて「吸着パッド式ロボットハンド」とAIを組み合わせた独自技術を開発しています。

同社のAIピッキングは、形や大きさが異なる商品を高精度に判別し、最適な位置を選んで吸着することで、封筒・箱・ボトルなど多様な荷物を一台で扱えるのが特長です。

また、AIは2段階構成となっています。1段目のAIでまず画像から吸着できる平面を検出し、2段目のAIでその面に対してロボットハンドの角度や位置を決定します。この仕組みにより、わずか0.5秒以内で把持位置を計算でき、従来より6.2%以上成功率が向上しました1

同社は今後、物流倉庫での実証を進め、2026年度以降に製品の実用化を目指しています。

ヤマハ発動機

ヤマハ発動機は、組立ラインの部品仕分け(キッティング)を自動化する「AIピッキングシステム」を開発しました2

部品仕分けは、部品箱から必要な部品を必要な数だけ取り出し、トレーに並べる作業です。同社のAIピッキングシステムを用いると、従来必要だった部品把持用のプログラミングや手動でのマスタ登録が不要になりました。これによりピッキングの準備にかかる工数を大幅に減らし、ラインの変更や多品種ピッキングの構築を効率化します。

AIは深層学習を用いて「どの部品をどこからつかむか」を自動で推論し、シミュレーション上で数万件のピッキングデータを生成・学習することで、実環境に近い高精度なモデルを構築します。さらに、把持した部品の種類や個数をチェックする「品質AI」も組み込まれており、誤品や取りこぼしを防止します。

実証実験では、長さや形が似たボルト類の仕分けにも高い成功率を示し、ヒューマンエラー削減と省人化を両立。今後は社内ラインだけでなく、外販による他社工場への展開も見据えています。

京セラ

京セラは、協働ロボットにAIと3Dビジョンを組み合わせたクラウド型サービス「京セラロボティックサービス」を展開しています3

特徴は、クラウド経由でAIの学習ができることです。新しい部材を扱う場合、ユーザーは新規部材のサンプルを京セラに郵送し、京セラの技術者が画像認識のAIモデルや作業の設定をしてロボットを更新する仕組みになっています4

同社のピッキングシステムはAIによる画像認識を用いて、カメラ映像からワークの位置・向き・表裏を判断。さらに京セラ独自の経路計画アルゴリズムでロボットの動作を最適化します。光沢金属や黒色ゴムなど従来のカメラでは難しかった部品にも強く、電子部品や小型部品の整列工程で効果を発揮します。

京セラロボティックサービス概要編

ニコン

ニコンは、AIと3Dセンシングを組み合わせた「ばら積みピッキングシステム」を発売しています。2D/3Dの2種類のカメラを用いて部品の高さや角度を瞬時に把握し、高速かつ安定したピッキングを実現します。

部品を取り残さないよう、カメラの姿勢を変えて複数角度から撮影するリトライ機能や、掴んだワークの位置ずれを補正するずれ検出機能も備えています。

同社のピッキングシステムは「AIブースト」と呼ばれる、AIを組み合わせて画像認識能力を強化する機能もあります。基本はパターンマッチングによる認識で、オプション的にAIを用いて検出精度を高める製品のようです。

AutoStore

AutoStoreの「CarouselAI」は、物流倉庫の自動収納システムと連携するAIピッキングロボットです。

AutoStoreはECサイト向けの自動倉庫を手掛けるメーカーです。注文が入って商品を出庫するときに、自動倉庫が商品が入った箱を倉庫の入出庫口の前まで持ってきます。ロボットアームが必要な商品の数をピックして、出庫用の箱に入れる作業をCarouselAIが担当します。

AutoStore | CarouselAI™ by AutoStore | AI-Powered Robotic Picking for Fast, Accurate Fulfillment

最大650個/時という高い処理能力を持ち、ネット通販商品の9割以上に対応できる汎用性が特徴です。AIはカメラ映像から最適な掴み位置やロボットアームの軌道を自動判断。SKU(品目)ごとの重量や形状に応じて吸着力を調整します。

Osaro

Osaro(オサロ)は、AIピッキング技術を開発する米国発のスタートアップです。

最大の特長は「マスターレス認識」。事前に3Dモデルを登録しなくても、AIがカメラ映像から物体を認識し、最適な掴み位置を自動で判断します。AI技術には機械学習を用いた画像解析と、ティーチング不要のモーションプランニング(動作経路生成)を組み合わせており、ロボットが自律的に把持と動作を決定。これにより導入時の設定や調整を大幅に削減できます。

日本ではイノテック社と提携し、実機デモや社内テストを行う「AIピッキングラボ」を展開中です。用途はEC倉庫の仕分け、食品・薬品・部品ピッキングなど多岐にわたり、手作業に頼っていた工程の自動化を現実のものとしています。

OSARO 国際ロボット展に降臨。東6Eホール ブース#6E38

Dexterity

Dexterity(デクステリティ)は、倉庫業務をまるごと自動化するAIロボットソフトウェアを開発する米国スタートアップです。AIによるピッキング・箱詰め・パレタイジング(積み上げ)・デパレタイジング(荷下ろし)までを一貫して制御できるのが特長です。

米国では同社のAIを搭載した荷積みロボットが大手物流会社のFedExに採用され、実証実験が行われています5。また、同社は川崎重工と戦略的提携を結び、トラック積込みロボット「Mech(メック)」を共同開発しました6。Mechは狭いところでもアーム先端が届くように8軸で構成されており、専用のロボットアーム構造であることが確認できます。

日本では住友商事と合弁会社「Dexterity-SC Japan」を設立し、日本市場での早期実用化を目指しています。

Introducing Mech

Physical Intelligence

Physical Intelligence(フィジカル・インテリジェンス)は、元Googleのエンジニア達が設立したロボットAIのスタートアップです。

2025年10月時点の同社の最新AIモデル「π0.5」は、視覚・言語・行動を統合したVLA(Vision-Language-Action)型の基盤モデルで、未知の環境でも自律的に掃除や片づけなどの複雑な作業をこなせるのが特長です。人間が操作したデモデータや音声指示を学習し、タスクの流れを理解して行動を生成します。これにより、訓練データにない初めて見る物体や環境でも、すでに学習した知識を応用してロボットが自律的にタスクを実行します。

応用分野は家庭・オフィスなどの自律ロボットを想定しているようです。デモでは家で食器を片づけたり、寝室に散らばっている布類を片づけたりといったタスクを行っています。

π0.5: a VLA with Open-World Generalization

Covariant

Covariant(コバリアント)は、UCバークレー発のAIロボティクス企業で、AIプラットフォーム「Covariant Brain」を開発しています。このAIは世界中の倉庫で稼働するロボットと連携し、互いの学習データを共有することで他のロボットの学習結果を反映できることが特長です。

技術的には、基盤モデル(Foundation Model)を用いてあらゆるピッキングのユースケースをトレーニングさせることでピッキングを自律的に行うAIモデルを構築しています7。ビニール袋に入った製品や、光沢のある製品など光を反射する製品も検出可能です8

主な用途は物流倉庫のピッキング自動化です。米国の医薬品販売業者McKesson社9などすでに世界の数十社以上の顧客にピッキングシステムを納入しており10、AIピッキングシステムの商用化で先行しています。基盤モデルAIを使ったAIピッキングロボットとしては、初の商用化の事例となっています。

Covariant Robotic Induction | Explainer Video
  1. 東芝「物流現場において、複数の吸着パッドを持つロボットハンドが正確かつ高速に対象物を掴む位置や掴み方を計算するAIを開発↩︎
  2. ヤマハ発動機「AIピッキングシステム↩︎
  3. 京セラ「ロボティクス↩︎
  4. 日本経済新聞「京セラ、協働ロボ運用クラウド AI更新で複雑作業に対応↩︎
  5. Dexterity-SC Japan「News ニュース↩︎
  6. 川崎重工「米国ユニコーン企業Dexterity向けのロボットアームを開発↩︎
  7. Covariant「AI at its best: A closer look at the Covariant Brain↩︎
  8. IEEE Spectrum「Covariant Uses Simple Robot and Gigantic Neural Net to Automate Warehouse Picking↩︎
  9. Covariant「McKesson delivers for customers with the KNAPP Pick-it-Easy Robot, powered by Covariant↩︎
  10. 日経クロステック「ロボット向け基盤モデルが驚愕の商用化へ、ロボAI権威Abbeel氏創業の米Covariantが快挙↩︎