工程管理表とその作り方

2024.06.16

プロジェクト、特に大規模なプロジェクトでタスクが多数かつ複雑な場合に皆さんはどのように管理していますか。小規模なプロジェクトであれば、ホワイトボードに書いて適宜更新していけばいいわけですが、大規模となるとそうはいきません。

ここでは、プロジェクト管理に必要な「工程管理表」について解説し、その概要、目的、必要性、作り方などについて述べ、最後に、複雑なプロジェクトの工程管理表に良く使われる「ガントチャート」と「PERT図」について説明します。

工程管理表とは

工程管理表は、プロジェクトの各要素の進捗状況を表すための強力なツールです。これにより、プロジェクトマネージャーやチームメンバーは現状を正確に把握し、適切な判断と調整を行うことができます。工程管理表を作成しプロジェクトの進行に応じてアップデートさせることにより、プロジェクトを効率的かつ計画的に進めることができます。

そして、各作業工程の開始日、終了日、進捗状況を可視化し、関係者全員が現状を把握しやすくすることができます。結果として、プロジェクトの遅延を防ぎ、コストを抑え、品質を向上させることができます。

工程管理表の目的と理由

工程管理表が必要な理由は、プロジェクトを計画的かつ効率的に進めるために重要な情報を可視化し、関係者間で共有することです。具体的には以下のような理由があります。

進捗管理

工程管理表を使用することで、プロジェクトの各タスクの進行状況を一目で把握できます。これにより、進捗が遅れている部分を早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。

スケジュールの調整

タスクの開始日と終了日を明確にすることで、各作業のスケジュールを効率的に調整できます。これは、リソースの最適な配分を可能にし、無駄な時間を削減する助けになります。

リソース管理

工程管理表は、必要なリソース(人員、資材、設備など)を明確に表示するため、リソースの過不足を防ぎ、適切なタイミングで必要なリソースを確保するのに役立ちます。

責任の明確化

各タスクの担当者を明確にすることで、誰がどの作業を担当しているのかを把握しやすくなり、責任の所在が明確になります。これにより、問題が発生した場合の対応が迅速化されます。

コミュニケーションの改善

工程管理表は、プロジェクトの現状や今後の計画を関係者全員が共有できるツールです。これにより、チーム内や関係者間のコミュニケーションが円滑になり、情報のギャップや誤解を減少させます。

リスク管理

プロジェクトの進行中に発生する可能性のあるリスクを早期に識別し、対策を講じるために工程管理表は役立ちます。問題点やリスクを記録し、対策を計画することで、プロジェクトの成功率を高めます。

コスト管理

各タスクに対するコストを明確にすることで、プロジェクト全体の予算を管理しやすくなります。工程管理表を用いることで、予算オーバーを防ぐための調整がしやすくなります。

品質の向上

計画的な工程管理は、作業の無駄を減らし、各タスクが適切に実行されることを保証するため、最終的な成果物の品質向上につながります。

工程管理表の作り方

工程管理表を作成するための手順は、プロジェクトの計画段階から進行管理までを効率的に行うための具体的なステップを含みます。以下に、その基本的な作り方を示します。

プロジェクトの全体像を把握する

まず、プロジェクトの目標やスコープ、成果物を明確にします。この段階で、プロジェクトの全体像を理解しておくことが重要です。

タスクのリストアップ

プロジェクトを完了するために必要なすべてのタスクを分析し詳細にリストアップします。これはブレインストーミングやチームメンバーとの協議を通じて行います。

タスクの階層構造化

リストアップしたタスクを階層構造(WBS:Work Breakdown Structure)に整理します。大きな作業を小さなタスクに分解し、それぞれのタスクの関係性を明確にします。

タスクの順序と依存関係の設定

各タスクの実行順序と依存関係を設定します。これにより、あるタスクが完了する前に他のタスクを開始できない場合などの関係性を明確にします。

タスクの期間設定

各タスクの開始日と終了日を設定します。これには、タスクの予想所要時間とリソースの可用性を考慮します。

リソースの割り当て

各タスクに必要なリソース(人員、資材、設備など)を割り当てます。また、担当者や責任者を明確にします。

進捗管理の設定

タスクの進捗状況を定期的に記録し、更新するための仕組みを設定します。これには、進捗度(%)や完了した日付などの情報が含まれます。

視覚的な表示

工程管理表を視覚的に表示するための形式を決定します。代表的な形式には以下があります

タスクの開始日と終了日をバーグラフ形式で表示し、タスクの進行状況を視覚的に把握できる「ガントチャート」、タスクをカレンダー上に配置して、各タスクのタイムラインを視覚化する「タイムビュー」、タスクの詳細情報を表形式で整理し、進捗状況を管理する「スプレッドシート」などです。

レビューと調整

作成した工程管理表を関係者と共有し、フィードバックを受けて必要な調整を行います。これにより、計画の現実性や効率性を確認します。

定期的な更新

プロジェクトの進行に伴い、工程管理表を定期的に更新します。進捗状況を記録し、計画の変更があればその都度反映させます。

工程管理表の作成に役立つITツール

Microsoft Excel

スプレッドシート形式で工程管理表を作成でき、ガントチャートのテンプレートも利用可能です。

Microsoft Project

プロジェクト管理に特化したソフトウェアで、詳細な工程管理表を作成可能です。

その他、様々なプロジェクト管理システムに内蔵されています。

ガントチャートとは

ガントチャートは、プロジェクト管理において使用される視覚的なスケジュール管理ツールの一つで、最も一般的です。ガントチャートを利用することで、プロジェクトの各タスクのスケジュールと進捗状況を一目で把握することができます。

ガントチャートの概要

ガントチャートは、縦軸にタスクを、横軸に時間を配置した棒グラフ形式の図です。各タスクの開始日と終了日を示すバーが横軸に沿って配置され、タスクの順序や依存関係も視覚的に表示されます。

ガントチャートの利点

まず、挙げられるのは、タスクの進行状況やスケジュールを一目で把握できるため、計画の全体像を理解しやすいことです。また、タスク間の依存関係を明確に示すことで、スケジュールの調整やリスク管理が容易になります。

さらに、タスクの進捗状況を視覚的に表示することで、遅延や問題点を早期に発見できる可能性が高くなります。最終的には関係者全員が同じ情報を共有できるため、プロジェクトの進行状況に関するコミュニケーションが円滑になります。

PERT図とは

PERT図(Program Evaluation and Review Technique)は、プロジェクト管理において使用されるツールの一つで、プロジェクトのタスクの順序と依存関係を視覚的に表現するためのネットワーク図です。

PERT図は、プロジェクトのタスクをノード(円や四角)で表し、それらを矢印で結んでタスクの順序と依存関係を示します。この図は、プロジェクトの完了までの最適な経路を見つけるのに役立ちます。ガントチャートによる表現が難しいタスク間の依存関係が複雑なプロジェクトにおいて特に効果的です。

さらに、プロジェクトにおけるもっとも手間のかかるタスク(クリティカルパス)を見つける場合にもPERT図が用いられます。

PERT図の利点

タスク間の依存関係を視覚的に示すことで、作業の流れを理解しやすくします。またプロジェクトの最長経路を特定し、その経路上のタスクに注力することで、遅延を防ぐことができます。さらに、タスクの所要時間を見積もり、最適なスケジュールを計画するのに役立ちます。

その結果、タスク間の依存関係やクリティカルパスを明確にすることで、リスクを早期に特定し、対策を講じることができます。

PERT図の作成方法

PERT図を作成する際の基本的な手順は以下の通りです

まず、プロジェクトに含まれるすべてのタスクを分析リストアップし、タスクの実行順序と依存関係を決定します。

次に、タスクをノード(イベント)と矢印(アクティビティ)で表現するとともに、タスク間の依存関係を矢印で示します。そして、各タスクの所要時間を見積もり、アクティビティに記入します。

最終的に、アクティビティを追いかけつつ所要時間を積算し、積算した所要時間の最も多いクリティカルパスを特定します。実際の管理としては、見つけたクリティカルパス上のタスクを重点的なタスクとして管理することになります。

これにより、プロジェクト完了までの期間と重要タスクの特定を行うことが出来ます。また、

クリティカルパス上のタスクの遅延を防ぐため、リソースを集中して管理しやすくなります。さらにクリティカルパス上のタスクに集中することで、リスクを早期に発見し、対策を講じることができます。

(まとめ)工程管理表はプロジェクトの成功に大変重要な要素です

以上、工程管理表とその作り方について見てきました。工程管理表を作成するためには、プロジェクト全体を俯瞰的に見る目と、各タスクにブレイクダインしていく分析的な視点の両方が必要です。プロジェクトの出来・不出来はこの工程管理表の出来・不出来にかかっていると言っても良いでしょう。

そして、このようなスキルは一朝一夕では身に付けることができません。これがどの企業でも大きな悩みの種の一つなのです。人財を地道に育てていくしかなさそうですね(困)。

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