【保存版】図面改訂の完全ガイド:現役機械設計者が教える図面改訂のルールとテクニック
2024.09.01
設計の世界で、製図した図面を変更することはよくあります。製品の開発過程で新たな要求が生まれたり、製造上の制約が明らかになったりと、設計現場で働いていると図面の修正は避けられません。そこで重要になってくるのが「図面改訂」のスキルです。
しかし、多くの新人設計者や経験の浅い機械設計エンジニアにとって、図面改訂は悩みの種。「改訂のルールがよくわからない」「どこをどう直せばいいの?」といった声をよく耳にします。
本記事では、現役の機械設計者として10年以上のキャリアを持つ筆者が、図面改訂の方法を徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたも自信を持って図面改訂ができるようになるはずです。
図面の改訂は、機械設計者としての業務内容の一部です。改訂の手順さえ覚えてしまえば、日々設計現場で発生する図面の修正にも素早く対応できるでしょう。ぜひ、この記事でマスターしてください。
目次
図面の改訂とは
図面改訂とは、既に作成された図面の情報(形状、寸法、注記など)を修正し、更新することを指します。製品開発の過程で設計変更が生じたり、製造現場からのフィードバックを反映したりする際に行われます。
機械設計における図面の改訂は「改版」「変更」と呼ばれることもあります。これらはほぼ同じ意味で使われるのですが、企業によって呼び方が異なります。本記事では「改訂」と呼びます。
改訂された図面は、通常ファイル名の後ろに改訂番号を付けて管理します。例えば、「部品A_rev1.dwg」のようにします。ここでの「rev」は「Revision(改訂、改版)」の略です。
なぜ改訂が必要なのか
図面改訂が重要な理由は主に以下の3点です:
1. 設計変更の履歴管理: 製品開発の過程を追跡し、どのような変更がいつ行われたかを明確にします。
2. 製造現場とのコミュニケーション: 修正箇所を明確にすることで、製造現場の加工者、組立者は何をどう変更すべきかが分かりやすくなります。
3. 品質管理: 改訂履歴を管理することで、問題が発生した際に原因追及や対策立案が容易になります。
適切な図面改訂を行わないと、古い設計情報に基づいて製造が進められたり、変更点の見落としによる不良品の発生につながったりする可能性があります。つまり、図面改訂は製品の品質と生産効率に直結する重要なプロセスなのです。
図面改訂のルールを解説
それでは、実際の図面改訂のルールについて、具体例を交えながら詳しく見ていきましょう。
本記事では下記の改訂図面「フランジA_rev2」を例に、説明していきます。
改訂記号について
改訂記号(改正マークと呼ばれることも)は、図面上で変更された箇所を示すマークです。一般的には三角形(△)が使用されますが、企業によっては丸(○)や四角(□、◇)を使用することもあります。
変更した箇所の改訂ルール
1. 変更箇所に改訂記号を付ける
2. 古い情報に取り消し線を引く(1本または2本)
3. 新しい情報を記入する
4. 寸法、形状、注記など、改訂するすべての箇所に1~3を行う
2回目以降の改訂は、改訂マークの数字を増やして(例:△2)、改訂の版数がわかるようにしましょう。
図枠の改訂ルール
1. 改訂番号(Revision番号)を記入する
2. 改訂履歴を記載する(日付、変更内容、承認記録など)
3. 改訂箇所の数を記入する(改版記号の数を記入。図枠によっては省略可)
改訂時には、新図の発行同様に上位者からの承認を得て正式発行としましょう。
形状変更時の改訂
形状を変更する場合、以下の手順で行います:
1. 変更前の形状は消さずに残しておく
2. 下図のように、変更後の形状を描く
3. 変更図の近くに改訂記号を付ける
改訂箇所が多くなった場合
改訂を重ねると、改訂記号を置くスペースがなかったり、改訂箇所が多すぎて図面が読みづらくなったりします。
このような場合は、最新の形状を新規で書き直します。下図のように、図枠の改訂内容は「全面書き換え」などと記入しましょう。
3D CADの図面改訂
ここでは、3D CADを用いた場合の図面改訂の注意点を解説します。3D CADの図面は、基本的に2次元に投影した3Dモデルの形状に寸法を記入することになります。そのため、改訂の方法が2D CADと少し異なる点があります。
寸法変更後の改訂
3D CADの2次元図面は、3Dモデルの形状に基づいて寸法が自動的に記入されます。例えば、直径をΦ6.6からΦ9に変更した場合、改訂後の図面は寸法が自動的に「Φ9」に変わります。
この対策としては、下図のように変更前の寸法を取り消し線付きのテキストボックスで記入する方法があります。
CADの寸法を無理やりオーバーライドして改訂前の寸法とし、テキストボックスで改訂後の寸法を追記する方法もあります。個人的には、この方法はおすすめしません。改訂を重ねた時に、オーバーライドした寸法を再度変更するときに混乱が生じる恐れがあるからです。
形状変更時の改訂
3D CADの2次元図面は、3Dモデルのビューを平面に投影して形状を描きます。そのため、3Dモデルを改訂のために形状変更すると、形状変更前のものが図面に残せなくなります。
この対策としては、現状は一般的なルールはありません。先輩社員や上司に聞くなどして、所属企業のやり方に準拠して改訂しましょう。
改訂方法の一つとしては、変更後の形状を〇で囲んで、「形状変更 △3」などと注記を入れておく方法が考えられます。この方法は、変更前の形状は改訂前の図面を参照する必要はありますが、どこを変更したかが分かりやすくなっています。
形状変更が大きなものであれば、「全面書き換え」とする方法も考えられます。
3D CAD単体での3Dモデルの改訂管理は困難
3D CADの製品によっては、モデリングの履歴(ヒストリー)を保持する機能を持っています。しかし、これらの履歴が単なる修正なのか、正式な改訂なのかを区別することはできません。
そのため、3D CAD単体の3Dモデルの改訂管理は難しいです。
PDMでバージョン管理が可能
3D CADデータを含む図面の改訂管理をするために、多くの企業がPDM(Product Data Management)システムを導入しています。
PDMを使用することで、3D CADファイルのバージョン管理が可能となり、改訂理由や承認者の記録を追うことが容易となります。
代表的なPDMツールは、以下のようなものがあります:
・Solidworks PDM
・PTC Windchill
・Autodesk Vault
これらのツールを使用することで、3D CADデータの改訂管理を効率的に行うことができます。
PDMって何?という方は、下記の記事でPDMの定義や、図面管理・PLMとの違いを詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。
まとめ
図面の改訂は、製品開発プロセスにおいて非常に重要な作業です。適切な改訂管理を行うことで、以下のような利点があります:
1. 設計変更の履歴が明確になる
2. 製造現場で、どこを変更すればいいかが一目で分かる
3. 品質管理において、設計変更の時期のトレースが可能になる
図面改訂のルールの基本をまとめると、以下のようになります:
・変更したすべての箇所に改訂記号を付け、変更点を明確にする
・寸法や注記の改訂は、取り消し線で変更履歴を残す
・形状を変えた場合は、変更後の部分図を変更前の形状近くに示す
・図枠に改訂の番号と、日付や承認記録を残す
・改訂箇所が多くなって図面が見にくい場合は、全面書き換えとする
本記事で紹介した図面改訂のルールとテクニックを活用し、より効率的で品質の高い製品開発を実現してください。
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