図面管理、PDM、PLMの違い:製品情報管理の3つの段階について解説!

2024.04.06

製造業において、製品情報を効率的に管理することは、企業の生産性を高める重要なポイントです。この製品情報管理は、実は様々な段階があります。企業の規模や個別の事情により、最適な製品管理の方法は異なります。

本記事では、製品情報管理の3つの段階である「図面管理」、「PDM(製品データ管理)」、「PLM(製品ライフサイクル管理)」の違いと役割を解説します。

端的に違いを述べると、図面管理は製品情報管理の第一歩となり、主に図面を管理します。PDMは製品設計に必要なデータ全体(図面、3D CADデータ、設計文書やBOMなど)を管理します。PLMはPDMで管理するデータに加え、製造・調達・品質管理・アフターサービスも含めた製品全体のライフサイクルを管理します。

「PDMとPLMはよく耳にするけど、違いがよく分からない」
「中小企業である自社には、どのような製品情報管理が適しているのか知りたい」

このような方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

製造業における製品情報管理の重要性

製造業では、製品の企画、設計、生産、販売、アフターサービスにいたるまで、膨大な情報が生成されます。この情報を効率的に管理し、活用することが、競争力の源泉となります。

ベテラン社員が今後退職して行く中で、新人社員を1日でも早く現場での戦力にしたいと考えられている昨今では、製品情報を正確かつ迅速に共有することは、企業の成功にとって重要です。

製品情報管理が重要である理由は、以下の通りです。

1. 製品品質の向上:正確な製品情報を管理することで、設計上や製造上のミスを防ぎ、品質を向上させられます。たとえば、常に最新版の図面にアクセスできれば、古い版の図面を使って製造するというミスを減らすことができます。
2. 情報の個人依存の解消:製品情報を社内の誰もがアクセスできるシステムに登録することで、情報の共有が促進されます。これにより、営業部門や調達部門などの関係者が、設計者本人に直接問い合わせる必要性が減ります。
3. 生産性の向上:情報検索の時間を削減することで、一人あたりの生産性を向上させることができます。
4. コンプライアンスの強化:製品情報を適切に管理することで、法規制への対応や品質問題の追跡が容易になります。

製品情報管理ができていない現場の課題

製品情報管理が不十分な企業では、設計現場において以下のような課題が見られます。

1. 情報の散在:製品情報が部門ごと、拠点ごとに散在しており、どこに製品情報があるのか有識者に聞かないと分からない。
2. データ形式の不統一:CADデータ、設計文書、プログラムデータなどのデータ形式が部門・拠点ごとにバラバラである。
3. 情報の個人依存:製品情報が個人に紐づいており、個人に設計情報の問い合わせが殺到する。特に、製品設計を担当する設計者が、他部署のメンバーから問い合わせや資料請求の電話対応に追われている状況があてはまる。
4. 運用定着の難しさ:システムを導入しても、運用ルールが定着せず、十分に活用できないことがある。

これらの課題を解決するために、まずは図面管理、PDM、PLMのそれぞれの役割を理解しましょう。

図面管理:製品情報管理の第一歩

図面管理の情報管理の範囲

製品情報管理の第一歩として、多くの企業が取り組むのが図面管理です。製造業にとっての図面とは、製品の設計情報が記載された極めて重要な情報資産です。図面管理を適切に行うことは、製品情報管理の基礎となります。

図面管理の目的と機能

図面管理の主な目的は、以下の通りです。

1. 図面の一元管理:図面を一元的に管理することで、関係者の誰もが常に最新版の図面にアクセスできるようにすること。
2. 図面の共有:関連部門間で図面を共有し、コミュニケーションを円滑にすること。
3. 改訂管理:図面の変更履歴を記録し、いつ、誰が、何を変更したかを追跡できるようにすること。

多くの図面管理システムには、以下のような機能が備わっています。

1. ファイル管理:図面ファイルのアップロード、ダウンロード、検索などの基本的な管理機能。
2. 関連文書の保存:図面に紐づいたデータ(検査表やCAMなど)を図面と一緒に保存できる機能。
3. バージョン管理:図面の変更履歴を記録し、過去のバージョンにアクセスできる機能。
4. アクセス権管理:図面へのアクセス権限を設定し、セキュリティを確保する機能。
5. 承認ワークフロー:図面の承認プロセスを電子化し、紙の図面に押印しなくても承認ができる機能。

図面管理の導入効果と限界

図面管理を導入することで、以下のような効果が期待できます。

1. 業務効率の向上:図面検索の時間を短縮し、業務効率を向上させられる。たとえば、図面管理システムから過去の類似製品の図面をすぐに探せる。
2. 図面に関する問い合わせの低減:関連部門間で図面を共有することで、生産部門や調達部門のメンバーが設計者本人に問い合わせなくても図面にアクセスできる。
3. 手戻りの防止:最新版の図面が常に共有されていることで、古いバージョンの図面による製造ミスを防ぎ、手戻りを防止する。
4. 設計コスト削減:図面の再利用を促進することで、設計コストを削減できる。

ただし、図面管理には以下のような限界もあります。

1. 3D CADとの連携:図面管理システムは、主に2D図面の管理に特化しているため、3D CADデータの管理や運用には対応していないことが多い。
2. 他システムとの連携:図面管理システムは、CADや生産管理システムとの連携を想定していない場合が多い。
3. 業務プロセスの最適化:図面管理だけでは、業務プロセス全体の最適化は難しい。たとえば、市場に出た製品の品質データや不具合の情報を管理する、という使い方は想定されていない。

これらの限界を解決するためには、PDM(製品データ管理)やPLM(製品ライフサイクル管理)といった、より高度な製品情報管理のアプローチが必要になります。

PDM(Product Data Management):製品データ管理の中核

PDMの情報管理の範囲

PDM(Product Data Management)は、図面管理よりも広範囲の製品情報を管理するシステムです。PDMは、製品設計に関わるすべての情報を一元的に管理し、企業内の様々な部門間で情報共有を可能にします。

PDMの目的と機能

PDMの主な目的は、以下の通りです。

1. 設計情報の一元管理:図面だけでなく、部品表(BOM)、仕様書、CADデータなどの製品設計に関わるすべての情報を一元的に管理すること。
2. 情報の共有と活用:製品情報を部門内外で共有し、情報の再利用を促進すること。
3. 業務プロセスの効率化:設計変更や承認プロセスを電子化し、業務効率を向上させること。

PDMには、以下のような機能が備わっています。

1. データ管理:図面、CADデータ、文書などの製品データを一元的に管理する機能。
2. BOM管理:部品表(BOM)を管理し、製品の構成情報を管理する機能。
3. ワークフロー:設計変更や承認プロセスを電子化し、業務フローを管理する機能。

図面管理とPDMの関係

図面管理はPDMの一部であり、PDMはより広範囲の製品情報を管理します。具体的には、以下のような違いがあります。

1. 管理対象:図面管理は主に図面を管理するのに対し、PDMは図面だけでなく、部品表(BOM)、仕様書、CADデータなど、製品設計に関わるデータを管理します。
2. CADとの連携:多くのPDMは、CADシステムとの連携機能を備えています。例えば、CADソフトからシームレスにPDMを起動したり、PDMに格納されたCADデータからBOMを自動生成したりすることができます。

PDMの導入効果と限界

PDMを導入することで、以下のような効果が期待できます。

1. 業務効率の向上:類似製品の検索時間を短縮し、流用設計の時間を短縮できる。たとえば、PDMシステムから過去の類似製品の3D CADデータをすぐに探せる。
2. 設計データに関する問い合わせの低減:関連部門間で設計データを共有することで、設計者本人に設計データの場所を問い合わせする回数を低減する。
3. 法規制への対応:図面以外の製品情報(たとえば、構成部品の化学物質情報)を管理することで、法規制への対応を迅速に行える。

ただし、PDMにも以下のような限界があります。

1. 導入コスト:PDMシステムの導入には、ある程度の初期投資が必要になる。
2. 運用の難しさ:PDMを導入しても、運用ルールが定着しないと十分な効果が得られない。
3. 製品ライフサイクル全体の管理:PDMは主に設計情報を管理するため、製品ライフサイクル全体の管理は難しい。

製品ライフサイクル全体を管理するためには、PLM(製品ライフサイクル管理)の導入が必要になります。

PLM(Product Lifecycle Management):製品ライフサイクル全体の管理

PLMの情報管理の範囲

PLM(Product Lifecycle Management)は、製品のライフサイクル全体を管理するためのシステムです。製品のライフサイクルとは、製品の企画、設計、生産、販売、アフターサービス、廃棄までの製品が生み出されてから廃番になって市場から消えるまでの期間全体を指します。

PLMの目的と機能

PLMの主な目的は、以下の通りです。

1. 製品ライフサイクル全体の最適化:製品ライフサイクルのすべての段階で生成される情報を一元的に管理し、製品の価値を最大化すること。
2. 製品品質とコンプライアンスの確保:製品情報を適切に管理することで、品質問題の予防と法規制への対応を確実に行うこと。

PLMには、図面管理やPDMに加えて、以下のような機能が備わっています。

1. 製品情報管理:製品の生産計画、品質情報、サプライヤー情報、市場クレームなど、製品ライフサイクルにおける情報を一元的に管理する機能。
2. プロジェクト管理:製品開発プロジェクトの計画、実行、監視、成果物管理を行う機能。
3. 品質管理:品質問題の追跡と解決を支援し、規制への対応を管理する機能。

PDMとPLMの関係

PDMは製品設計のデータ管理、PLMは製品設計を含む製品のライフサイクル全体のデータ管理を行います。PLMはPDMを包含した、より広範なソリューションになります。

PLMの導入効果

PLMを導入することで、以下のような効果が期待できます。

1. 製品開発リードタイムの短縮:設計と生産のデータを一元管理できるため、部門間でのデータ共有が容易になり、新製品の市場投入までの時間を短縮できる。
2. 長期的な品質の向上:市場クレームなど、製品が市場に出た後の情報を適切に管理することで、品質問題の予防と今後の対策がしやすくなる。
3. サプライヤーの一元管理:PLMはサプライヤーの情報も管理するため、調達部門は見積もり依頼や発注、納期管理などの調達プロセスを効率化できる。

中小企業における図面管理、PDM、PLM

ここでは、中小企業における図面管理、PDM、PLMの導入について説明します。

中小企業におけるPDM、PLM導入時の課題

中小企業がPDMやPLMを導入する際の主な課題は、2つあります。

1つ目の課題は、予算の制約です。PDMやPLMシステムは、データ管理の機能が充実する分導入コストが高価になります。

ITmedia エグゼクティブの記事によると、PLMの導入コストについて「ハイエンドだと、伝統的なエンタープライズソフトウェアプロバイダーが5~10万ドルのものを提供している。」と記載があります。ここからPLMの価格帯をおおまかに推測すると、PLMの導入コストは750~1500万円程度になると考えられます。

出典:【第3回】PLMシステムの妥当な価格はいくら?

2つ目の課題は、人的リソースの不足です。東京商工会議所の調査によると、「デジタルシフト・DXの課題として最も多かったのは、『旗振り役が務まるような人材がいない』(33.8%)、「従業員がITを使いこなせない」(29.5%)といった人材面に関する課題であった。」とのことです。

出典:「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」 集計結果 ~コロナ禍で中小企業のIT導入は進むも、依然としてデジタル人材の不足が一番の課題に~

これらの課題から、中小企業がいきなり高価なPLMシステムを導入することは、あまり現実的とは言えないでしょう。(ちなみに、大企業であっても、PDM・PLMシステムの導入はそれなりのハードルがあり、うまく導入、運用しないと失敗します。)

まずは図面管理システムの導入を検討しましょう!

中小企業では、まず図面管理システムの導入を検討することをおすすめします。図面管理システムは、図面を一元管理することで、必要な図面を迅速に検索・取得できるようにします。

また、多くの図面管理システムは、図面だけでなく、見積書や検査表などの関連文書も一緒に保存することができます。これにより、過去の受注品の見積書を参考に、リピート品や類似製品の見積りを素早く作成することが可能になります。

「紙の図面を探すのに時間がかかっている」
「過去に似たような図面の製作依頼があったが、その時の見積書がなかなか見つからない」

このような課題を感じている方は、図面管理システムをご検討いただければと思います。

図面管理システムの一例に「図面バンク」があります。

図面バンクは、5~40名の工場や製作所向けのクラウド図面管理システムです。ブラウザ上で図面データをアップロードし、案件ごとに図面や見積書などのデータをまとめられるようになっています。

図面バンクの利用料金は月額26,000円(2024年4月時点)で、中小企業の予算内でも導入しやすい価格設定となっています。また、登録初月は全ての機能を無料で試用できるお試し期間が設けられているので、実際に使ってみてから導入を決めることができます。

まずこちらのページから登録・お試しをしてみて、実際に図面管理システムを体験されてから採用を考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

本記事では、製造業における製品情報管理の重要性と、図面管理、PDM、PLMの違いについて解説しました。

図面管理は製品情報管理の第一歩であり、図面の一元管理、共有、改訂管理を目的としています。PDMは図面管理を包含しつつ、製品設計に必要なデータ全体を管理します。PLMは図面管理、PDMを包含しつつ、生産情報や品質管理、調達情報、市場クレームなど、製品ライフサイクル全体の情報を管理します。

本記事で、図面管理、PDM、PLMの違いが分かり、製造業のみなさんの製品情報管理の取り組みに少しでも参考になれば幸いです。

中小企業の場合は、いきなりPLMを導入するには予算と人的リソースの課題があります。まずは図面管理から始めるのがよいでしょう。図面管理ができると、設計者や関連部門の方が欲しい図面にすぐにアクセスできるようになり、生産性が向上します。

図面管理をスムーズにするために、図面管理システムの導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。「図面バンク」は、月額26,000円(2024年4月時点)と手ごろな価格で、登録初月は無料ですべての機能をお試しいただけます。ぜひご検討ください。

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