中小企業のDX化の課題~現場の待遇を上げるために
2024.07.31
今、製造業は現場の人手不足が深刻です。考えてみれば当たり前です。3Kで稼ぎが少なければ敬遠されるのは当然といえるでしょう。
一方で中小企業のDX化には様々な課題があります。ここでは、まずそれらの課題をそれぞれ説明しながら主に「心理的な側面」に焦点を当てつつ、DX化によって現場の待遇をあげることについて考えてみたいと思います。
目次
- 中小企業のDXの課題
- 経営者の意識不足
- 人材不足
- コストの問題
- ITインフラの未整備
- 文化的な抵抗
- データ管理の課題
- 法規制の対応
- 管理者・経営者のためのDXなのか、従業員のためのDXなのか
- 管理者・経営者のためのDX
- 従業員のためのDX
- 今のDX会社のマーケティング戦略は経営者のためのDXを強調しすぎ
- 人間は「ラクして、給料を上げたい」
- 製造業でリモートワークが進まない理由
- 経営層に「横並び意識」が強い
- 横並び意識の理由
- 現場の待遇が改善しないのもDX化が遅れているから
- 業務効率の低さ
- 労働環境の改善が遅れる
- スキルアップの機会不足
- データ活用の不足
- DX化で生産性が上がれば収益が上がり現場が稼げるようになる
- 業務効率の向上
- コスト削減
- 品質向上
- 市場競争力の強化
- (まとめ)DX化によって収益が出れば「必ず」現場に還元しましょう。
中小企業のDXの課題
中小企業(SME)がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める際に直面する主な課題は以下の通りです。
経営者の意識不足
経営者がDXの重要性や効果を十分に理解していない場合、導入が遅れることが多いです。また、明確なデジタル戦略がないと、DXの方向性が曖昧になりがちです。
人材不足
DXを推進するための専門知識やスキルを持つ人材が不足しています。また、既存の従業員をデジタルスキルでトレーニングするためのリソースが限られています。
コストの問題
DXのためのインフラ整備やシステム導入には多額の初期投資が必要です。維持・運用にかかるコストも経済的な負担となります。
ITインフラの未整備
既存のシステム(レガシーシステム)が古く、新しいデジタル技術との統合が難しい場合があります。セキュリティ対策が不十分で、デジタル化によるリスクが増大する可能性があります。
文化的な抵抗
従業員が新しい技術やプロセスに対して抵抗を示すことがあります。また、コミュニケーション不足によりDXの意図や目的が組織全体に十分に共有されていないことが多いです。
データ管理の課題
異なる部門間でデータが分断されているため、統合的なデータ活用が難しいです。また、正確で信頼性のあるデータの収集と管理が課題となります。
法規制の対応
データ保護規制や業界ごとの規制に対応する必要があります。さらにグローバルに展開する場合、各国の規制に適応する必要があります。
管理者・経営者のためのDXなのか、従業員のためのDXなのか
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、組織全体に影響を及ぼすため、管理者・経営者と従業員の両方にとって重要です。それぞれの視点から見たDXの意義と利点は以下の通りです。
管理者・経営者のためのDX
DXにより、リアルタイムのデータ分析と報告が可能になり、経営判断の精度が向上します。また、デジタル技術を活用することで、市場の変化や顧客のニーズに迅速に対応できます。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのツールを導入することで、業務効率を向上させ、コストを削減できます。さらに、デジタル技術を活用することで、サプライチェーン全体の可視化と最適化が可能になります。
新しいビジネスモデルやサービスの開発が促進され、競争優位性を確保できます。また、デジタルチャネルを通じて、よりパーソナライズされた顧客体験を提供できます。
従業員のためのDX
反復的な作業が自動化されることで、従業員はより価値の高い業務に集中できるようになります。さらに、テレワークやリモートワークが可能になり、働き方の柔軟性が向上します。
また、DXにより、従業員は新しいデジタルスキルを習得し、キャリアの幅を広げることができます。Eラーニングやオンライントレーニングプログラムを通じて、継続的な学習が可能になります。
さらに、デジタルツールの活用でチーム間のコミュニケーションやコラボレーションが強化され、生産性が向上します。また、クラウドベースのプラットフォームを活用することで、情報の共有とアクセスが容易になります。
今のDX会社のマーケティング戦略は経営者のためのDXを強調しすぎ
多くのDX関連企業のマーケティング戦略は、経営者向けの利点や経営改善に重点を置いていることが多いです。これは、経営者が最終的な意思決定権を持ち、資金を提供する立場にあるため、彼らにアピールすることが効果的であると考えられているからです。しかし、従業員に対するDXの利点も強調することは、DXの全体的な成功にとって非常に重要です。
人間は「ラクして、給料を上げたい」
多くの人間は「ラクして、給料を上げたい」という動機を持っています。これは自然な人間の心理であり、DXのマーケティング戦略においてもこの点を考慮することが重要です。従業員がDXを支持し、積極的に参加するためには、DXが彼らの期待に応えるものであることを明確にする必要があります。
「ラクして、給料を上げたい」というモチベーションに応えるためには、DXが業務の効率化や柔軟な働き方、スキルアップにどのように寄与するかを明確に示すことが重要です。従業員がDXのメリットを実感し、積極的に参加することで、企業全体のDX推進がスムーズに進むでしょう。
製造業でリモートワークが進まない理由
製造業では、製品の組み立てや機械の操作など、物理的な作業が多く含まれており、これらは現場にいなければできない仕事です。また、機械のメンテナンスや修理は、現場での作業が不可欠です。
製造現場では、労働安全衛生法などの規制に基づいた安全管理が必要であり、現場での監督が重要です。さらに製品の品質を維持するためには、現場での厳格な品質管理が求められます。
一部の製造施設では、リモートワークを支えるためのネットワークインフラが整備されていない場合があります。また、製造プロセスをリモートで管理・監視するための適切なデジタルツールが不足していることがあります。
製造業には、現場での直接的なコミュニケーションや対話を重視する文化が根強く残っている場合があります。さらに新しい働き方や技術に対する抵抗感が存在することがあります。これは結構大きな要因です。
経営層に「横並び意識」が強い
経営層に「横並び意識」が強い場合、他の企業の動向や業界の標準に従う傾向があり、新しい取り組みや変革に対して慎重になることがあります。これは製造業に限らず、多くの業界で見られる現象です。このような意識がDXの進展を妨げる要因となることもあります。
横並び意識の理由
・リスク回避
他社と同じことをしていれば失敗のリスクが少ないと考え、革新的な取り組みを避ける傾向があります。
・イノベーションの遅れ
業界の慣習や標準に従うことで、イノベーションが遅れる可能性があります。他社が導入していない技術や方法を採用するのをためらいます。
・競争優位性の喪失
他社と同じことをしているだけでは、競争優位性を確保するのが難しくなります。独自性や差別化が欠けるため、顧客に対する魅力が減少します。
現場の待遇が改善しないのもDX化が遅れているから
現場で実際に手を動かしている従業員の待遇改善が進まない理由の一つに、DX化の遅れが関係していることが考えられます。DXが進むことで、現場作業員の業務効率や労働環境が改善され、それに伴って待遇も改善される可能性が高まります。
業務効率の低さ
DXが進まないと、業務プロセスの効率化が進まず、作業の負担が大きいままとなります。これにより、従業員の生産性が低くなり、待遇改善の余地が少なくなります。
労働環境の改善が遅れる
デジタルツールや自動化技術の導入が遅れると、労働環境の改善も遅れます。これにより、従業員の満足度が低下し、待遇改善が進みにくくなります。
スキルアップの機会不足
DXが進まないと、従業員が新しいデジタルスキルを習得する機会が少なくなります。これにより、キャリアの成長や昇進の機会も制限され、待遇改善が難しくなります。
データ活用の不足
労働環境や業務プロセスの改善に必要なデータが不足しているため、現場の問題を正確に把握し、対策を講じることが難しくなります。
DX化で生産性が上がれば収益が上がり現場が稼げるようになる
生産性が向上することで、企業全体の収益が増加し、それが現場作業員の待遇改善や報酬に反映されることが期待できます。生産性向上のメリットとその効果は以下のとおりです。
業務効率の向上
単純作業や反復作業を自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。これにより、全体の業務効率が向上します。また、データ分析に基づいて業務プロセスを最適化し、ボトルネックを解消することで、スムーズな業務運営が可能になります。
コスト削減
生産プロセスの効率化により、原材料やエネルギーの使用量が最適化され、コスト削減が実現します。そして、デジタルツールを活用することで、在庫管理や生産スケジュールの最適化が進み、無駄なコストを排除できます。
品質向上
IoTセンサーやリアルタイムデータ分析を活用して、製造プロセスの品質を監視・管理することで、不良品の発生を抑制し、品質を向上させます。また、機械の故障やトラブルを未然に防ぐための予防保全を実施し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
市場競争力の強化
デジタルツールを活用することで、市場の変化に迅速に対応できるようになり、顧客のニーズに柔軟に応えることができます。その結果、DXによって新しいビジネスモデルやサービスを創出し、市場での競争力を強化することができます。
(まとめ)DX化によって収益が出れば「必ず」現場に還元しましょう。
以上、中小企業でのDX化の課題について解説しました。
製造業、特に現場の仕事はいわゆる「3K」の仕事です。昔は、それでもなり手がたくさんいて、その中から素晴らしい職人さんたちがたくさん生まれました。また、キツイ仕事でもあり、かなり稼ぎの良い職人さんも多くいたと聞いています。
しかし、今では3Kで稼ぎもあまりよくない現場仕事は敬遠される傾向にあります。加えて「失われた30年」の間に経営層が委縮してしまい、利益が出ても社員に還元せず、内部留保としてしまう傾向が強くなっています。
このような状況をDX化によって打破し、生産性を上げ、社員に利益を還元するような流れを作っていくことが重要です。
また、DX化も単なるペーパーレス化ではなく、「生産の本質」の自動化・知能化を推進する必要があると考えます。
製造業は最終的には「モノを作って、ナンボ」の世界です。製造業の宝である現場の待遇を上げるためにも中小企業のDX化はこれからますます重要になっていくでしょう。
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