スカラロボットメーカーおすすめ19社|特徴・価格を現役エンジニアが解説します!
2025.11.05

今回は、設備メーカーでロボット導入を検討している方に向けて、スカラロボットの主要メーカーをご紹介します。
筆者は産業用ロボット業界で10年以上の経験を持つ現役エンジニアです。実務上の経験からの視点を踏まえて解説していきます。
さらに、今回は海外のスカラロボットメーカーも紹介します。ロボットの老舗メーカーである欧州系のメーカーに加え、産業用ロボットの一大市場である中国を中心にシェアを拡大する新興メーカーも紹介します。
この記事を読むと、スカラロボットのメーカーを網羅的に理解できます。メーカーごとのラインナップや各社スカラロボットの特徴が分かると、自社の設備にどのロボットが適しているかのヒントが得られるはずです。
「スカラロボットのメーカーは、どんな会社があるか知りたい」
「スカラロボットの各社特徴や価格を知りたい」
そんな方にとって、導入検討の参考になれば嬉しいです。
目次
スカラロボットとは
スカラロボットとは、「Selective Compliance Assembly Robot Arm(選択的柔軟性を持つ組立用ロボットアーム)」の略称です。
主に平面方向(X・Y)に素早く動き、垂直方向(Z)に高い剛性を持つ産業用ロボットです。
スカラロボットが得意な作業は、次のようなものがあります。
✅組立作業:ねじ締めや組付けなど
✅搬送作業:箱詰めやハンドリングなど
スカラロボットは産業用ロボットの1種です。産業用ロボットには、アームの構造によってさまざまな種類があります。
こちらの記事で産業用ロボットの種類について解説しています。あわせてご参考ください。
スカラロボットをどういう基準で選べばいいかわからない、という方は、こちらの「スカラロボットの選び方」についての記事をご参考ください。
スカラロボットのシェアが高いと言われるメーカー3選
まずは、スカラロボットのシェアが高い、いわゆる大手と言われるメーカー3選を紹介します。
エプソン
エプソンは、長野県に本社を置くスカラロボットの最大手メーカーです。2011年から12年間連続でスカラロボットの世界シェアNo.1を誇っています1。
同社のスカラロボットの年間生産台数は、2020年で1万5000台程度とみられています2。
エプソンのロボットは「ジャイロプラステクノロジー」という技術が特徴です。
この技術は、ロボットの手先にジャイロセンサーを搭載し、振動を検知・制御で抑えることでタクトタイムを短くします。
同社はジャイロセンサーを内製しており、ロボットに搭載することで自社の強みを活かしています。
エプソンのスカラロボットの価格は、Tシリーズが72万円~3、GXシリーズが112万5000円~4となっています。
ヤマハ発動機
ヤマハ発動機は、静岡県に本社を置くメーカーです。同社のセグメントは輸送機器メーカーで、売上高の6割以上は二輪車、四輪バギーなどのランドモビリティとなっています。
同社のロボティクス事業の売上高は2023年度で1014億円5。スカラロボットの生産台数は公開していませんが、スカラロボットではエプソンに次いで有名な会社、という印象です。
ヤマハ発動機は完全ベルトレス構造のスカラロボットをリリースしており、これが同社の技術的な特徴となっています。
ベルトを使わずにモータを手先軸に直接配置することで、ロボットの剛性が高まり、動作時に振動しにくくなります。無駄な振動が少なくなることで、タクトタイムの短縮が期待できます。
また、ベルトの伸びや経年劣化の心配が不要になるので、長期間メンテナンスフリーで稼働できることもメリットです。
ヤマハ発動機のロボットの価格は、アーム長610mm、可搬質量10kgの「YK610XE-10」が104万3,900円となっています6。
Shenzhen Inovance Technology(Inovance)
近年中国市場を中心に急成長し、シェアを大きく伸ばしているのがShenzhen Inovance Technology(Inovance)です。
Inovanceは、中国・深圳に本社を置くFAメーカーです。インバータやPLCなどの自動化機器、エレベーターなどの自動化ソリューションを中核に、近年は産業用ロボットにも参入しています。
同社はスカラロボットの中国国内市場でトップを占め、20.8%のシェアを獲得しています7。中国市場2023年上半期のスカラロボットの出荷台数は約34,000台(年間出荷台数の概算は約68,000台)です8。
Inovanceのロボットの2023年の年間出荷台数は、68,000(台)×20.8(%) =14,144(約1万4000台)と見積もることができます。
エプソンの年間台数が2020年で1万5000台ですので、同社のスカラロボットはグローバルでもトップシェアに近いと言えるでしょう。
日本のスカラロボットメーカー9選
ここからは、日本のスカラロボットのメーカーを紹介します。
デンソーウェーブ
デンソーウェーブは愛知県の産業用機器メーカーで、自動車部品メーカーのデンソーの子会社です。同社は小型の産業用ロボットを製造・販売しており、スカラロボットもラインナップされています。
同社のスカラロボットは可搬質量3kg~20kgまでのラインナップがあります。
3kg可搬の「LPH040」は、ロボットプログラミングの知識がなくてもPLCから制御可能なことが特徴です。
デンソーウェーブのスカラロボットの価格は、Unichained Roboticsの販売価格で€9,900(約170万円)です9。ただし、こちらは海外企業経由の販売価格となります。日本で購入する場合の価格は販売店・代理店にお問い合わせください。
IAI
IAI(アイエイアイ)は、静岡県に本社を置く産業機器メーカーです。電動アクチュエータ「ロボシリンダ」で有名な企業であり、電動アクチュエータでは台数ベースで国内シェア約6割を誇ります10。
IAIのスカラロボットは、低価格でコストパフォーマンスの良さが特徴です。同社のロボットにはパルスモータを使用しており、パルスモータは一般的にACサーボモータよりも安価であることが理由です。
同社は電動アクチュエータのメーカーですので、ロボット用のモータも安く製造・調達できると思われます。
IAIのスカラロボットの価格は、LC Automationの販売価格で£5,500(約109万円)となっています11。ただし、こちらは海外企業経由の販売価格となります。日本で購入する場合の価格は販売店・代理店にお問い合わせください。
ファナック
ファナックは、産業用ロボット全般で世界トップシェアを誇るロボット大手メーカーです。スカラロボットにおいては可搬質量3kg~20kgの製品をラインナップしており、自動車、医療機器などの分野で使用されています12。
産業用ロボットのメーカー売上高ランキングについては、こちらの記事をご参考ください。
ファナックのスカラロボットの価格は、6kg可搬のモデル「SR-6iA」がebayの販売価格で$18,999(約279万円)となっています。ただし、こちらは海外企業経由の販売価格となります。日本で購入する場合の価格は販売店・代理店にお問い合わせください。
オムロン
オムロンは体温計などヘルスケアの印象が強いですが、主力事業はPLCやリレーなどのFA(ファクトリーオートメーション)事業です。
2015年に米国のAdept Technologyを買収し、ロボット事業に本格参入しました。
オムロンのスカラロボットのラインナップは、次の3商品となっています。
・i4L:可搬質量5kgでコンパクトなスカラロボット
・i4H:可搬質量15kg、壁吊りや天吊りモデルもあり
・eCobra:Z方向の繰り返し精度が良い(±0.003mm)
オムロンのスカラロボットの価格は公開されていません。詳細は、メーカーや販売代理店にお問い合わせください。
三菱電機
三菱電機は、1921年に設立された総合電機メーカーで、社会インフラからFA機器まで幅広く手掛けています。同社のロボットは「MELFA」ブランドで展開されており、スカラロボットは可搬質量3kg~20kgのラインナップを揃えています。
三菱電機のスカラロボットの価格情報は公開されていません。詳細は、メーカーや販売代理店にお問い合わせください。
安川電機
安川電機は、福岡県北九州市に本社を置く産業用電気機器メーカーです。産業用ロボットのほかにサーボモータ、インバータといったモーションコントロール製品を手掛けています。
安川電機のスカラロボットは、SGシリーズという汎用タイプと、重量物搬送用のMOTOMAN-ME1000の2種類のラインナップがあります。
特徴的なのはMOTOMAN-ME1000の存在です。このロボットはEVバッテリー搬送に対応し、可搬質量が1,000kg(1t)もある大型のスカラロボットです。
このクラスの可搬質量を持つスカラロボットは、2025年8月の執筆時点では安川電機のMOTOMAN-ME1000くらいしかありません。
安川電機のスカラロボットの価格情報は公開されていません。詳細は、メーカーや販売代理店にお問い合わせください。
芝浦機械
芝浦機械は、もともと東芝グループに属していた工作機械メーカーです。1938年に芝浦製作所(現:東芝)から分社し、2020年に社名を東芝機械から現社名の芝浦機械に変更しました。
芝浦機械のスカラロボットのラインナップは、次の3商品となっています。
・THEシリーズ:高速・高精度モデル
・THLシリーズ:軽量、省エネをコンセプトとしたモデル
・TH1200A:アーム長1200mm(業界トップクラス)のアーム長さが特徴
芝浦機械のスカラロボットの価格は、83万円~(THLシリーズ)となっています13。
不二越
不二越は、富山県を創業地とする機械メーカーで、ベアリング、工作機械、油圧機器、産業用ロボットなどを手掛けています。
同社はもともと垂直多関節ロボットを手掛けていましたが、スカラロボットは2021年から参入しました。電機・電子分野の用途向けに6kg可搬モデルの「EC06」と天吊りタイプの3kg可搬モデル「EZ03」をラインナップしています。
不二越のスカラロボットの価格ですが、「ES12」が100~500万円の価格帯と記載されています14。しかし、この機種は2025年8月現在の同社 ロボット総合カタログにはラインナップされていません。
詳細は、メーカーや販売代理店にお問い合わせください。
オリエンタルモーター
オリエンタルモーターは、ステッピングモータやブラシレスDCモータを手掛けるモータメーカーです。自社のモータを使ったスカラロボットも販売しています。
同社のスカラロボットは「小型ロボット OVR」の1ラインナップとして展開しています。このロボットの特徴はアームが薄型のため、狭い場所でもアプローチができることです。
また、価格の安さも特徴で「OVR3041K3-H」の定価は60万円です。これは、筆者が調べたスカラロボットの中では最安値となっています。
海外のスカラロボットメーカー7選
ここからは、海外のスカラロボットのメーカーを紹介します。
Staubli
Staubli(ストーブリ)は、スイスに本社を置く機械メーカーです。1892年に繊維機械メーカーとして創立して以降、ロボット、電気、流体コネクタといった事業を展開しています。
同社のスカラロボットの特徴は、高い繰り返し精度と高速動作です。
以下にストーブリのスカラロボット「TS2-40」(可搬質量8.4kg)と、エプソンの「GX8-C45」(可搬質量8kg)の繰り返し精度・標準サイクルタイムを比較しました。
| メーカー | ストーブリ | エプソン |
| 型式 | TS2-40 | GX8-C45 |
| 可搬質量 | 8.4 kg | 8 kg |
| アーム長 | 460 mm | 450 mm |
| 繰り返し精度(第1軸・第2軸) | ±0.01 mm | ±0.015 mm |
| 繰り返し精度(第3軸) | ±0.004 mm | ±0.01 mm |
| 繰り返し精度(第4軸) | ±0.002 ° | ±0.005 ° |
| 標準サイクルタイム※ | 0.25 s | 0.28 s |
結果、わずかながらストーブリのスカラロボットが繰り返し精度・標準サイクルタイムともに良いことが分かります。
もちろん、実際の装置での動作によっては必ずしも「ストーブリが速い」とは言い切れませんが、カタログスペック上は高精度・高速であることがわかります。
こちらの動画はストーブリの別機種ですが、ワークを高速で移動させているデモが確認できます。
ABB
ABBは、スイスに本社を置く重電メーカーです。電力、オートメーションなど電機系の事業を幅広く手掛けています。産業用ロボットでは世界トップクラスのシェアを誇るメーカーです。
ABBのスカラロボットは以下のモデルがあります。
・IRB 901INV:天井設置型のスカラロボット
・IRB 920T/IRB 920:可搬質量6kgの高速・コンパクトモデル。エレクトロニクス業界向け
・IRB 930:可搬質量12kg/22kgの高可搬モデル
KUKA
KUKAは、1898年にドイツ・アウクスブルグで創業されたロボットメーカーで、自動車分野を中心に実績を積み上げてきました。2016年には中国Midea Groupの傘下となりましたが、世界各地に子会社を持つグローバルメーカーです。
KUKAのスカラロボットのラインナップは可搬質量6kg~60kg、アーム長さは500mm~1200mmと幅広いです。同社のロボットで最大の可搬質量60kgを持つ「KR 60」は、EV向けのバッテリーセルのハンドリングを目指して開発されたようです。
Shanghai STEP Electric(STEP)
Shanghai STEP Electric(新時達)は、1995年設立の中国・上海に本拠を置く産業機器メーカーです。制御機器や電力・ドライブシステム、ロボティクスなど、幅広い自動化製品を展開しています。中国とドイツに研究開発センターと製造センターを置いています。
同社のスカラロボットは、ADTECH(STEPグループ傘下)による「ARシリーズ」です。可搬質量2kg~20kgのラインナップがあります。
STEPのスカラロボットの価格は、Made-in-China.comで$6,500(約95万円)で販売されています15。
Shanghai Turin Smart Robot(Turin)
Shanghai Turin Smart Robot(Turin)は、上海宝信ソフトウェアのグループ会社として生まれた、中国のロボットメーカーです。国家レベルで「革新的なハイテク企業」に認定されており、センサーや制御システムを自社開発しています。
同社のスカラロボットのラインナップは、可搬質量3kg~50kgと幅広く取り揃えています。
Delta Electronics(Delta)
Delta Electronics(Delta)は、1971年に台湾で設立された電子・自動化メーカーです。電源機器やACサーボモータなど、産業オートメーション機器を広く手掛けています。
同社のスカラロボットは、電子部品の組立やはんだ塗布などに使われています。
HIWIN
HIWINは、1989年創業の台湾の精密モーション部品メーカーです。同社はリニアガイドやボールねじ、ロータリーテーブルなどの機械要素を手掛けています。産業用ロボット分野にも進出し、ロボットで使われるボールねじなどの部品を内製しています。
同社のスカラロボットはRS405/RS410の2種類をラインナップしており、位置決め精度±0.01mm、小型コントローラを特徴としています。
- 出典:マイナビニュース「セイコーエプソンのロボティクス 40周年の過去、現在、未来(後編) – 新たな40年へ、次世代プラットフォームへの進化」 ↩︎
- 出典:ニュースイッチ「主力拠点は中国だが…エプソンがロボットの国内生産能力を5倍に高める狙い」 ↩︎
- 出典:KEISOKUTEN「【エプソン】コントローラー 一体型スカラロボット(Tシリーズ)」 ↩︎
- 出典:MONOist「エプソンがスカラロボット新シリーズ投入、高速精密動作で生産性向上」 ↩︎
- 出典:ヤマハ発動機「ファクトブック2024」 ↩︎
- 出典:ヤマハ発動機「スカラロボット「YK610XE-10」「YK710XE-10」新発売 ~低価格モデルYK-XEシリーズに高可搬機種追加~」 ↩︎
- 出典:「国产工业机器人冠军:销量突破2万辆,超过库卡跻身中国市场前二」 ↩︎
- 出典:国際ロボット展2023年のMIRデータバンク 講演より ↩︎
- 出典:Unchained Robotics「DENSO HS-045A1 – Start Smart」 ↩︎
- 出典:日本経済新聞「産業ロボのアイエイアイ、新本社工場を稼働 生産能力倍」 ↩︎
- 出典:LC Automation「IAI Expand Range of Cost-Effective SCARA Robots」 ↩︎
- 出典:FANUC「SCARA Robots | FANUC America」 ↩︎
- 出典:芝浦機械「THL series」 ↩︎
- 出典:京二「不二越 高速 高精度搬送 スカラロボット『ES12』」 ↩︎
- 出典:Made-in-China「ADTECH 4 axis scara robot AR4215」 ↩︎


