設備の予備品管理とは?Excel台帳の作り方と欠品・過剰在庫を防ぐ方法を解説
2026.09.27

生産設備が故障し、交換すべき部品を特定できた。
しかし、倉庫にあるはずの予備品が見つからない。ようやく見つけた部品も、現在の設備に適合する型式なのか分からない。一方で、倉庫を整理してみると、使い道が分からない部品や、同じ部品を別々の部署が重複して保管していた。このような状況に遭遇したことは、少なくとも一度はあるのではないでしょうか。
設備の予備品管理には、こうした「予備品が見つからない」と「管理のムダ」の2つの問題があります。必要な部品がなければ設備の復旧が遅れ、必要以上に保有すれば購入費用や保管場所を圧迫します。そのため予備品管理では、単に在庫数を把握するだけでなく、どの設備に使用する部品なのか、交換が必要になった際に調達できるのかまで確認できる状態が求められます。
この記事では、設備予備品の基本的な考え方から、Excelを使った管理台帳の作り方、欠品と過剰在庫を防ぐための保有数の決め方、設備図面との紐付けまで、具体的に解説します。
設備の予備品管理とは?
設備の予備品管理とは、設備の故障や定期的なメンテナンスに備えて、必要な交換部品を把握し、調達・保管・使用履歴などを管理することです。
対象となるのは、モーターやセンサー、ベアリング、ベルト、制御機器など、設備の修理や保全に必要な部品です。故障時に使用する部品だけでなく、計画的な交換が必要な消耗部品や、メーカーからの調達に時間がかかる部品なども管理対象になります。
予備品管理について米国のテクノロジー企業のIBMは、部品の計画、調達、保管、追跡、配布を含む一連のプロセスと定義しています。部品を保管すること自体が目的なのではなく、必要なタイミングで適切な部品を利用できるようにするための管理です。
例えば、故障したセンサーの交換が必要になったとき、保全担当者が知りたいのは、倉庫にセンサーが何個あるかという情報だけではありません。そのセンサーが現在の設備に適合するのか、どの棚に保管されているのか、在庫がなければいつ入手できるのかまで確認する必要があります。
設備の予備品管理では、こうした情報をあらかじめ整理し、交換作業が必要になった際に利用できる状態にしておくことが重要です。
予備品管理が難しくなる4つの原因
設備の予備品管理が難しくなるのは、保管する部品の種類が多いからだけではありません。設備の導入や改修に伴って管理対象が変化し、複数の担当者や部署が情報を更新することにも原因があります。

原因①部品の名称や型式が統一されていない
同じ部品でも、設備メーカーから受け取った部品表、購買部門の発注履歴、保全部門の在庫台帳では、異なる名称が使われていることがあります。例えば、メーカー型式は同一でも、ある台帳では正式な製品名、別の台帳では社内で使っている略称、倉庫の棚札には過去の呼び名が記載されている場合です。これでは、同じ部品を保管していることに気づかず、重複して発注してしまう可能性があります。
一方、名称が似ているからといって、必ずしも同じ部品として扱えるわけではありません。製品の改訂や仕様変更によって、取り付け寸法、電気的仕様、使用条件などが異なる場合もあります。そのため、部品名だけでなく、メーカー名や正式な型式を管理し、表記の統一と互換性の確認を分けて考える必要があります。
原因②どの設備に使う部品なのか分からない
倉庫に部品があっても、使用する設備が分からなければ、その部品を有効に活用できません。特に設備の導入時期やメーカーが異なる工場では、似たような部品を使用していても、それぞれの設備で適合する仕様が異なる場合があります。同じ型式の部品を複数の設備で共通使用しているのか、それとも特定の設備にしか使えないのか。この対応関係が整理されていないと、保全担当者が設備図面やメーカーの部品表を毎回確認する必要があります。
日立産業制御ソリューションズの設備管理システムにおいても、設備から使用部品を探す方法と、部品から使用設備を探す方法の両方が採用されています。予備品管理では、部品単位で在庫を管理すると同時に、使用設備との対応関係を把握することが重要です。
原因③実際の在庫数と管理台帳が一致しない
Excelで予備品を管理している場合、部品を倉庫から持ち出した後に、担当者が台帳の数字を変更する運用も考えられます。しかし、緊急のトラブル対応では、部品交換を優先するあまり、在庫台帳の更新が後回しになることがあります。また、倉庫の在庫数と、交換作業用に既に確保されている部品の数が区別されていない場合もあります。帳簿上は在庫があるにもかかわらず、実際にはすぐに使用できる部品がないという状態です。
リコーの事例でも、設備予備品の管理が手作業、目視確認、メモ、Excel転記に依存していたことが改善課題として紹介されています。在庫の正確性を保つには、台帳の作成だけでなく、誰が、いつ、どの作業に部品を使用したのかを記録する運用が欠かせません。
原因④設備の改修や廃止によって予備品の使い道が変わる
設備は導入して終わりではありません。長期間使用する間に部品交換や改修を行い、制御機器やモーターなどを別の型式へ変更することもあります。ところが、設備の改修内容が予備品台帳へ反映されなければ、既に使われていない部品を保管し続けることになります。
反対に、新しく採用した部品について必要な予備品を準備していない可能性もあります。そのため予備品台帳は、倉庫の棚卸し時だけでなく、設備の改修や更新、廃止のタイミングでも見直す必要があります。
設備の予備品を管理する5つの手順
予備品管理を改善するために、最初から専用システムを導入する必要はありません。まずは現在の保管状況を把握し、部品情報と使用設備の対応関係を整理するところから始めます。

STEP1:現在保有している予備品を棚卸しする
最初に、倉庫や各部署で保管している予備品を確認します。工場内に部品庫が複数ある場合は、中央倉庫だけでなく、設備の近くに置かれている部品や、各担当者が保管しているものも確認します。
この段階では、在庫数を数えるだけでなく、部品のメーカー名、型式、保管場所、使用可能な状態かどうかも調べます。長期間保管されている部品については、劣化の有無や保管条件にも注意が必要です。例えば、部品によっては保管期限や、定期的な状態確認が指定されている場合があります。
すべての予備品を一度に調査することが難しければ、生産停止への影響が大きい設備や、直近で交換頻度の高かった部品から始める方法もあります。
STEP2:部品番号や型式を統一する
次に、棚卸しで確認した部品を台帳に登録します。ここで重要なのは、同じ部品を別の部品として二重に管理しないことです。部品ごとに社内で使う管理番号を設定し、正式なメーカー型式や名称と紐付けます。例えば、保全担当者が普段使っている略称は検索用の別名として残しつつ、部品の識別には社内管理番号と正式なメーカー型式を使用します。
ただし、部品の名称や型式の表記が似ていても、互換性が確認できていなければ同じ部品として統合してはいけません。代替品を設定する場合は、設備メーカーの仕様書や承認情報などから適合性を確認し、元の部品との関係を台帳へ記録しておきます。
STEP3:予備品と使用する設備を紐付ける
部品を整理できたら、次にどの設備で使用するのかを明確にします。設備番号や設備名称に加え、可能であれば組立図・部品図の図番、使用箇所、使用数量まで登録します。例えば、同じセンサーを3台の包装機で使用している場合、そのセンサーの台帳から3台の使用設備を確認できる状態にします。反対に、包装機の設備番号から、その設備で使用しているセンサーやモーターなどの部品一覧へアクセスできるようにします。
ここで注意したいのは、使用数量と保有数量は異なる情報だということです。設備内で同じ部品を10個使用しているからといって、必ずしも予備品を10個保有する必要はありません。現在の設備構成を把握するための使用数量と、故障や交換に備えるための保有数量は分けて管理します。
また、設備の改修によって部品が変更された場合は、図面や使用機器リストだけでなく、予備品との対応関係も更新する必要があります。
STEP4:部品の重要度と調達期間に応じて保有数を決める
ここまで整理できたら、部品ごとの保有方針を検討します。予備品を必要以上に保有すれば、購入費用や保管場所が増えます。一方、在庫を減らしすぎると、設備が故障した際に部品の入荷を待たなければならなくなります。
重要なのは、すべての部品に同じ在庫基準を適用しないことです。例えば、比較的安価で頻繁に交換する部品と、数年に一度しか交換しないものの、故障すれば生産ライン全体が停止する特殊なモーターでは、適切な管理方法が異なります。
部品の保有方針を決める際には、交換頻度に加えて、設備停止時の影響、調達にかかる期間、代替品の有無などを考慮します。具体的な保有数の考え方については、後ほど詳しく解説します。
STEP5:入出庫と設備改修時の更新ルールを決める
最後に、整理した台帳を継続的に更新するためのルールを決めます。予備品管理で避けたいのは、棚卸しの直後だけ在庫数が正しく、時間が経つほど実際の在庫と台帳が食い違ってしまう状態です。
そのため、部品を倉庫から持ち出したときには、使用した担当者や日時、数量、使用先の設備を記録します。部品を補充した場合も、入庫数と保管場所を更新します。加えて、設備改修による使用部品の変更や、設備の廃止も台帳の見直し対象にします。故障対応時の交換履歴と在庫情報を連動させる方法は、既存の設備管理システムでも採用されています。
管理方法が複雑すぎると、緊急時に記録が後回しになる可能性があります。まずは誰が、いつ、何を記録するのかを決め、現場で続けられる運用にすることが大切です。
Excelで設備の予備品管理台帳を作る方法
予備品の種類がそれほど多くなく、更新する担当者も限られている場合は、Excelで管理台帳を作成する方法もあります。Excelで予備品管理を始める際には、部品情報を登録する台帳と、使用設備との対応関係、入出庫の履歴を分けて管理すると整理しやすくなります。
部品台帳には何を登録する?
まず、部品そのものの情報を登録する台帳を作成します。
| 部品ID | 品名 | メーカー型式 | 現在庫 | 発注点 | 保管場所 | 調達期間 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SP-001 | 近接センサー | S-100 | 3 | 2 | A-01 | 7日 |
| SP-002 | 搬送モーター | M-200 | 1 | 個別判断 | B-03 | 45日 |
| SP-003 | ベアリング | B-300 | 8 | 4 | A-05 | 5日 |
この例では、部品IDを使って部品を一意に管理しています。メーカー型式と現在庫に加え、保管場所と標準的な調達期間も登録します。発注点は、在庫がその数量まで減ったときに補充を検討する目安です。ただし、表中の数値は説明用の仮定であり、実際の設定値は自社の交換実績や調達条件などから決定する必要があります。
使用設備と部品の対応関係を別シートで管理する
次に、別のシートで使用設備との対応関係を管理します。例えば、部品ID「SP-001」の近接センサーを、設備番号「EQ-001」と「EQ-003」の両方で使用している場合、設備ごとに使用箇所、使用数量、関連する図番などを登録します。
こうすることで、同じ部品を複数の設備で共通使用していても、部品台帳自体を重複して作成する必要がなくなります。部品台帳から使用設備を調べられるだけでなく、設備番号から必要な予備品一覧を確認できるようにしておけば、故障対応や定期交換の際にも活用できます。

入出庫履歴を記録し、定期的に実在庫と照合する
さらに、部品を持ち出したり補充したりした履歴も残します。例えば、部品ID「SP-001」のセンサーを設備「EQ-001」で1個交換したのであれば、使用日時、数量、使用設備、担当者などを記録します。
入出庫の履歴が残っていれば、在庫数が変化した理由を確認できるほか、一定期間にどの部品がどれだけ使用されたのかも把握できます。Excelの台帳では入力漏れや更新の遅れが起こる可能性があるため、定期的な実地棚卸しによる照合も必要です。棚卸しの頻度は、部品の重要度や出庫頻度などに応じて決めるとよいでしょう。
欠品と過剰在庫を防ぐには?予備品の保有数の決め方
予備品の管理台帳が整ったら、次に考えたいのが適切な保有数です。設備予備品の場合、一般的な消耗品と、めったに故障しない重要部品とでは管理の考え方を変える必要があります。
交換頻度が高い部品は発注点を設定する
使用量をある程度予測できる部品では、発注点管理が一つの方法になります。例えば、定期的に交換するフィルターや、過去の交換実績から一定の需要が見込まれる消耗部品などです。発注点は、調達期間中に使用すると見込まれる数量に、需要や納期の変動に備える安全在庫を加える方法などで設定します。
この方法を利用する場合は、実際の交換実績や発注から入荷までの日数を記録し、定期的に設定値を見直す必要があります。設備予備品の管理製品でも、発注点や保管場所、期限などを管理し、欠品や余剰在庫を防ぐ仕組みが提供されています。
なお、定期交換の時期が事前に分かっている部品は、保全計画に合わせて調達する方法もあります。すべての交換予定分を常時在庫として持つ必要があるかは、納期の確実性なども踏まえて判断します。
使用頻度が低くても重要な部品は別に考える
一方、数年に一度しか故障しない特殊なモーターや制御機器などは、過去の使用頻度だけで保有数を決めると判断を誤る可能性があります。例えば、故障した場合に生産ライン全体が停止し、代替品もなく、メーカーからの調達に長期間かかる部品であれば、使用頻度が低くても予備品を保有する意味があります。反対に、調達が容易で代替手段もある部品については、常時保管せず、必要なタイミングで購入する方法も考えられます。
こうした判断には、部品の価格や年間使用金額を基準にするABC分析だけでは不十分な場合があります。ABC分析と並行して、設備停止への影響や安全上の重要度などを確認することが必要です。また、設備メーカーが部品の供給を終了する場合や、調達期間が長くなる場合にも、保有方針の見直しが必要になります。
使われなくなった予備品も定期的に確認する
過剰在庫を減らす際に見落としやすいのが、現在は使われなくなった部品です。設備の廃止や改修によって使用しなくなった予備品が、以前の管理台帳のまま倉庫に残っていることがあります。
そのため、長期間出庫されていない部品については、単に不要と判断するのではなく、どの設備で使用しているのか、他の設備でも共通使用できるのか、今後の保全計画で必要になるのかを確認します。不要になった部品を特定するためにも、部品と使用設備の対応関係を維持しておくことが重要です。
Excelによる予備品管理に限界が来るケース
Excelによる予備品管理は、比較的手軽に始められる方法です。しかし、設備数や使用部品の種類が増え、複数の部署で情報を更新する環境では、運用が複雑になることがあります。
例えば、生産技術部門が設備メーカーから新しい部品表を受け取っても、保全部門の予備品台帳に反映されていなければ、改修後の設備に必要な部品が正しく登録されません。また、複数の部署がそれぞれ予備品を保管している場合は、他部署の在庫を把握できず、同じ部品を重複して発注してしまう可能性があります。
リコーの事例では、こうした手作業中心の予備品管理に対してRFIDを活用した改善が紹介されています。部品の入出庫記録や棚卸しを効率化する仕組みも、管理方法の選択肢になります。
専用システムへの移行を検討する際には、単にExcelの入力作業を減らしたいのか、実在庫をより正確に管理したいのか、それとも設備と予備品の対応関係を改善したいのかを整理しておく必要があります。
設備図面と予備品を紐付けて管理する
設備保全の観点で予備品を管理するとき、もう一つ考えたいのが設備図面との関係です。故障した設備の交換部品を特定するためには、組立図や部品図、メーカーの使用機器リストなどを確認することがあります。しかし、図面は共有フォルダ、予備品はExcel、過去の部品交換は保全日報というように情報が分かれていれば、必要な情報をそれぞれ探し直さなければなりません。
そこで、設備番号を共通の管理項目として、図面や使用機器リスト、予備品台帳、改修・交換履歴などを紐付ける方法があります。こうした管理ができれば、設備側から必要な予備品を探せるだけでなく、部品側から、その部品を使用している設備を確認することもできます。

図面バンク for 設備図面では、使用機器リストと予備品リストを設備ごとに紐付ける機能を提供しています。部品名から使用設備を調べたり、使用数と保有数を並べて確認したりすることができ、設備メーカーと情報を共有して互換品を確認する運用も想定しています。なお、システム上で表記揺れを統一した場合、部品の互換性については、メーカー仕様や設備の使用条件などに基づいた確認が必要です。
設備と予備品の紐付けを整理しておくことは、在庫管理の改善だけでなく、設備トラブル発生時の情報探索にも役立ちます。設備が停止した際に図面や過去の対応が見つからないという課題については、関連記事の「設備トラブル時に図面が見つからない原因と対策」でも詳しく解説しています。必要な図面の探し方から過去の修理履歴、交換部品の確認まで、復旧時の情報探索を改善したい場合に参考になります。
設備図面や予備品、改修履歴などが分散している場合は、図面バンク for 設備図面のように、設備を起点として関連情報をまとめて管理する仕組みも検討してみてください。
まとめ|必要な予備品を、必要なときに使える状態へ
設備の予備品管理では、在庫数を把握することに加えて、どの設備に使用する部品なのか、どこに保管されているのか、交換が必要になった場合にいつ入手できるのかを確認できる状態が重要です。Excelによる管理でも、部品番号の統一、使用設備との紐付け、入出庫履歴の記録などから改善を始められます。
そのうえで、部品の重要度や調達期間を考慮して保有方針を決め、設備の改修や更新に合わせて台帳を見直すことが、欠品と過剰在庫を防ぐための基本になります。
設備の数や関係者が増えて管理が難しくなってきた場合には、図面や使用機器リスト、予備品、改修履歴まで設備単位で管理する方法も選択肢になるでしょう。
必要な予備品を、必要なときに迷わず使えること。それが設備予備品管理の目指す状態です。

