製造業DXが進まない理由と現状でできること

2024.04.29

製造業のDX化が叫ばれるようになってからずいぶん経ちました。現状では製造業DXは大企業ではかなり進んでいますが、中小企業ではなかなか進んでいないのが現状です。ここでは、DXとはなにか、製造業の業務の特徴、DXを提供するIT企業の問題点DXを提供される製造業の問題点を考察し、現状で出来ることを考えてみたいと思います。

DXとはなにか

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、従来のビジネスモデルやプロセスにデジタル技術を統合して、組織全体の運営や価値提供を変革する取り組みのことです。

このDXは概念上、企業の業種や大小に拘わらず行うものとされていますが、実際のDX化には様々なハードルがあり、進んでいる業界や業務の事例がそのまま他の業界や業務に適用できるとは限りません。

また、製造業においては、大規模な工場を持つ大手企業では、このDX化はかなり進んでいます。しかし、日本の製造業の大部分を占める中小企業ではDX化が遅れているのが現状です。

製造業DXの成功例

それでは、製造業DXの成功例を見ていきましょう。

CADシステム

製造業DXの成功例の最も典型的なものは、CADシステムです。20年~30年くらい前から爆発的に普及し、設計業務の効率を飛躍的に工場させました。今日では、かなり小さな製造業でもCADが普及しています。

NC(数値制御)/CAMシステム

製造現場のデジタル化の典型として、NC旋盤やマシニングセンターなどのNC工作機械があります。NCとは「数値制御」の略で、工具の経路をあらかじめプログラミングしておくことで、人手による操作を激減させました。これにより、いままで経験が必要だった工作機械の操作を単純化し、生産性を向上させました。

また、CADシステムとNCを連携させることにより、さらなる生産性の効率が図られています。このようなCADシステムとNCの連携システムはCAMシステムと呼ばれます。

そして、NCやCAMもかなり小さな製造業でも普及が進んでいます。

製造業DXは歴史があります

このように製造業のデジタル化は、地味で散発的・部分的ではありますが、「製造業DX」と声高に叫ばれるずいぶん前から行われています。ただ、現在叫ばれているような全体的・体系的・俯瞰的なDX化ではなく、あくまでそれぞれの現場視点での業務改善から出発しています。

日本の製造業は「現場主義」の影響が強いです。そのため「トップダウン的」な考え方が逆に新しい考え方と捉えられ、それによって生産性が更に向上すると勘違いされがちです。しかし現場レベルで現実化したものは、随分昔から行われているものがほとんどです。

そう考えると、今までの製造業DXの歴史の中で行われてきたデジタル化によってかなりの効率化が図られており、大きなパラダイムシフトや技術革新が行われない限り、単純なデジタル化による効率化は限界に達しつつあると言えるでしょう。

ましてや、製造業を知らない「普通のDX」で成功したIT企業が同じ感覚で「製造業DX」に新規に進出しても、うまくいかないのは目に見えています。

そして、多くの製造業の経営者はそのことが「言葉にできないけれど何となく分かっている」ため、IT企業の宣伝文句には簡単には乗らないのです。

製造業の業務の特徴

それでは、製造業の業務の特徴を見てみましょう。

製造業は「実際にモノを作ること」が業務の本質

現在の一般的なDX化は、伝票管理や、文書管理、帳簿の管理などの業務が主流です。そして中小製造業でもこれらの業務はデジタル化が進んでいます。近年これらのシステムの普及が進み、昔に比べると低価格でシステムを構築することができます。

しかし、製造業の本質的な業務は「モノを作ること」です。この「モノづくり」の効率化が図れない限り、上述した業務は付随的な業務にすぎません。

そして、この設計や製造といった「モノづくり」の本質的な部分の効率化は、現在一般的なデジタル化の流れにはなかなか乗らないか、今までのデジタル化の中で限界に達していると言えるでしょう。

製造業DXとスマートファクトリー

一方で、この「モノづくり」のデジタル化を真正面から、さらに推し進めていく考え方もあります。

それが、「スマートファクトリー」という考え方です。現在での工場の自動化をさらに推し進め、工作機械や製造設備を「知能化・自律化」し、「考える機械」を実現することです。支える要素技術としては、人工知能やマシンビジョン、ロボット技術、ネットワークの技術などがあります。

現実に大きな工場では生産ラインのスマートファクトリー化が進んでおり、完全無人の工場も存在します。しかし、中小製造業が効果あるスマートファクトリーを実現するにはイニシャルコストや人材の問題、あるいは「モノづくり」に対する考え方の変革といった現実的には難しい問題をかかえています。

これが、製造業、特に中小製造業にDXが普及しない大きな原因となっているのです。

製造業DXを提供する側の問題点

製造業DXを提供する側、つまりIT企業側の問題点としては「数値目標に頼りすぎ」「効率一辺倒で使う人の使いやすさを考えていない」「そもそも製造業が分かっていない」などがあります。

例えば「生産性20%向上のシステムをつくる」などと言っても現場の人に「かえって使いにくくなったよね」と言われれば評判が落ちます。

また、IT企業は普通のDX化で成功を収めた企業であればあるほど、顧客のニーズ(製造業のニーズ)を考えず「こうするのがベストです!!」と自社の考えを押し付けがちです。それで結果が出ればいいのですが、製造業がよくわかっていないと結果も出ないためやはり評判が落ちます。

このため、製造業を良く理解しているIT企業、つまり製造業に実績のある企業を選ぶのが失敗のリスクを減らすうまいやり方です。

製造業DXを提供される側の問題点

提供される側、つまり製造業の立場から言うと「こだわりや思い込みが強い」「頑固」「ITの勉強不足」などがあります。

いずれも強い「職人気質」から来るもので、それ自体は悪いものではなく、むしろ称賛されるものです。「いいモノをつくるぞ!!」という心意気がないと製造業は務まりません。

しかし、時代は少しずつ変わっていきます。新しい考え方も徐々に取り入れて自己変革を行っていきましょう。

製造業DXを推進するために現状で出来ること

それでは最後に現状で出来ることを考えてみましょう。

情報収集

DXを提供する方も、提供される方も情報収集を怠らないようにしましょう。DXの分野は日進月歩ですすんでいます。また、製造業のことをよく理解してコミュニケーションの基礎としましょう。

適切なコミュニケーション

大企業ではDX化が成功する可能性が高いです。特にIT部門とモノづくり部門の両方がある大企業ではDX化は大成功を収めています。これは、お互いを対等な立場として適切なコミュニケーションと情報交換が行われているためです。

DXを提供する方も提供される方も、対等でざっくばらんなコミュニケーションを心がけましょう。

小さなことからトライ&エラー

DX化は小さなことから始めましょう。失敗した時のリスクを最小限にできます。そして、「デジタル化」の特徴や性質、クセをつかむことから始め、少しずつプロジェクトを大きくしていきましょう。

(まとめ)製造業DXの推進のためには、それに関わる人たちの考えを柔軟にする必要があります。

以上、製造業DXが進まない理由について考えてきました。普通の会社のDX化であれば帳簿作成・文書管理・在庫管理・POSシステムなど、中小企業であってもずいぶんDX化が進んできました。

しかし、製造業の仕事の本質は「モノを作ること」です。この「モノを作ること」の本質が理解できていないと表面的なデジタル化だけに終始し、コストの割には成果が出ないということになります。さらにいえば、このようなIT企業の姿勢は顧客の不信感を招き、デジタル技術が信用できない中小製造業を増やすことにもなりかねません。

一方で、新しいデジタル技術を適切に積極的に導入している中小製造業は利益をきちんと確保しています。

製造業の立場としては、自分の身の丈にあったデジタル技術を導入し、自分の会社らしいDX化を進めるべきだと考えます。そのためにも、日々進歩するデジタル技術の分野に興味を持ち、情報収集を日ごろから行っておく必要があるでしょう。

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