図面の縮尺がわからない場合の対応

2024.05.25

設計業務を行っていると、時々縮尺が分からなくなる時があります。このような場合、縮尺を推定する必要が生じます。ここでは、建築図面と機械図面を比較しながら、縮尺の推定方法について説明し、縮尺を考えるうえで大変便利な「三角スケール」について解説します。

図面の縮尺がわからない場合にどうやって推定するか

図面の縮尺がわからない場合、以下の手順を踏むことで縮尺を推定することができます。

建築図面の場合

図面上に実寸法が記載されている場合、その値を利用して縮尺を求めることができます。例えば、図面上に「この長さは実際には10mです」といった情報がある場合です。

そして、図面上の距離を測定し、実際の物理的な距離と比較します。例えば、図面上のある部分の距離が10cmで、実際の距離が10mであれば、縮尺は1:100になります。

なお、建築図面では、地図のように図面にスケールバー(例えば、「0mから100mまで」など)が記載されている場合があります。そして、そのスケールバーを基に縮尺を求めることができます。スケールバーが10cmで実際には100mを示す場合、縮尺は1:1000となります。

また、建物の標準的なサイズや部屋の標準的なサイズを利用して縮尺を見積もることもできます。例えば、標準的なドアの高さや畳の寸法などです。

ちなみに豆知識ですが、これらの数字は「モジュール」と呼ばれます。海外では2m、日本では1.8mが基本のモジュールの数値です。

さらに、関連する他の図面や資料に縮尺が記載されている場合、それらを参照することで縮尺を特定できます。

機械図面の場合

機械図面の場合も、縮尺を特定するための基本的な方法は建築図面と似ていますが、特有の要素も考慮する必要があります。以下の手順を参考にしてください。

機械図面には通常、寸法が明確に記載されています。寸法線に基づいて縮尺を確認することが最も簡単な方法です。

また、機械図面では、一般的に使われる部品や要素(例えば、標準的なねじ、ボルト、ナットなど)の寸法が既知の場合、それを基に縮尺を特定できます。

さらに、機械図面にはしばしば縮尺が明示的に記載されています。図面のタイトルブロックや図枠内に「1:1」「1:2」「1:5」などと記載されている場合があります。

なお、図面がCADデータとして存在する場合、CADを使用して直接寸法を確認できます。CADでは実寸法と図面上の寸法を比較できます。

具体的な手順の例

まず、図面上の特定の距離を測定します。

例えば、図面上での寸法が実物ではどのくらいなのかを確認します。図面上に寸法値が記載されていればそれを使い、現物から直接測定してもいいでしょう。

そして、例えば図面上に「20mm」と記載されている長さの線があり、その線を測定すると図面上で2cm(20mm)であれば、縮尺は1:1です。

寸法線が記載されていない場合、標準部品の寸法を利用する方法もあります。例えば図面上のM10ボルトの太さが10mmと記載されている場合、図面上で測定したボルトの太さが10mmであれば縮尺は1:1です。もし図面上で5mmであれば縮尺は1:2です。

そして、実際の物理的な距離と比較し、縮尺を計算します。例えば、図面上で「100mm」と記載された長さの線を測定し、図面上でその線が50mmであれば、縮尺は以下のように計算できます。

縮尺=実際の長さ/図面上の長さ

これらの手順を踏むことで、機械図面の縮尺が不明な場合でも正確に特定することができます。また、機械図面は正確性が要求されるため、寸法線やCADデータを確認することが重要です

三角スケールとは

三角スケールは、建築や機械の図面を読むために使用される特殊な定規です。三角形の断面を持つことで、複数の異なる縮尺を持つ6種類のスケールを一つの定規に収めています。

元々、建築図面用に作られましたが、大変便利なため、機械図面を読む際にも使われています。紙図面の時代では大変盛んに用いられました。

建築の分野では現在でも紙図面が多く使われているため、現在でも需要があり、比較的容易に入手することが出来ます。また、それほど高額でもないので、機械設計技術者でも一本購入しておくと、なにかと便利です。

三角スケールの構造

三角スケールには一般的に6つの異なる縮尺が刻まれています。それぞれの面に2つの縮尺が刻まれており、多くの場合、以下のような組み合わせがあります。

1:100、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600

三角スケールの基本的な使い方

まず、図面の縮尺を確認します。例えば、図面の縮尺が1:100であれば、三角スケールの1:100の面を選びます。

そして、選んだ縮尺の面を上にして、図面にスケールを配置します。三角スケールのゼロ(始点)を図面上の測定したい点に合わせます。

さらに、測りたい距離をスケールに沿って読み取ります。例えば、1:100の縮尺を使用している場合、スケール上で10cmの距離は実際には10mを表します。

具体的な手順の例

図面上の距離を実寸法に変換する場合は、まず縮尺を確認します。ここでは、図面の縮尺を1:500とします。そして、適切なスケール面を選びます。ここでは三角スケールの1:500の面を選びます。

つぎに測定する点にゼロを合わせてスケールを配置し、距離を測定します。 図面上の長さが5cmの場合、1:500のスケールでは実際の距離は5cm x 500 = 2500cm(25m)です。

逆に、実寸法を図面上の距離に変換する場合は、まず縮尺を確認します。ここでは図面の縮尺を1:100とします。そして三角スケールの1:100の面を選びます。

実際の距離が3mの場合、3m = 300cmですから、1:100のスケールでは、300cm / 100 = 3cmとなります。

注意点としては、正確な始点を設定し、正確に配置することで、正確な測定が可能になります、また、異なる縮尺を使うと誤差が生じるため、図面の縮尺に合った面を使用します。

これらの手順を守ることで、三角スケールを用いた正確な測定が可能となります。三角スケールは図面を正確に読み取り、描くための重要なツールですので、正しく使用することが大切です。

三角スケールを使って図面の縮尺を推定する方法

つぎに三角スケールを使って図面の縮尺を推定する方法を解説します。

まず、図面上の既知の距離を見つけます。例えば、標準的なドアの高さや部品のサイズが記載されている場合、その距離を利用します。

そして、三角スケールの任意の縮尺を使って、図面上のその既知の距離を測定し、図面上の距離を実際の距離と比較して、どの縮尺が合っているかを確認します。縮尺が合わない場合、三角スケールの縮尺を変えるか、係数をかけて縮尺を推定します。

なお、三角スケールを機械図面で使用する場合、縮尺が大きいため、スケールで測定した数値を読み替える必要があります。例えば、1:100のスケールであれば、1:10、1:500のスケールであれば1:50に変換する場合が多いです。

建築図面の場合

まず、図面上に、例えば「この壁の長さは実際には5mです」と記載されている部分を見つけます。

つぎに、図面上でその距離を測定します。具体的には三角スケールの任意の縮尺(例えば1:100)を使って、図面上のその壁の長さを測定します。例えば、図面上でその壁の長さが5cmであると測定します。

そして、縮尺を計算します。実際の距離が5m(500cm)で、図面上の距離が5センチメートルであれば、以下のように縮尺を計算します。

500/5=100

すなわち、この場合、縮尺は1:100です。

計算した結果と、選択した三角スケールの縮尺が一致すれば、その縮尺が正しいということになります。そして、場数を踏んで慣れてくれば、これらの計算を頭の中で素早く行うことが出来るようになります

機械図面の場合

まず、既知の部品のサイズを見つけます。ここでは、図面上にM10ボルト(直径10mm)の長さが記載されている部分があるとします。

つぎに、図面上でその距離を測定します。三角スケールの任意の縮尺(例えば1:10)を使って、図面上のボルトの直径を測定します。例えば、図面上でそのボルトの直径が10mmであると測定します。

そして、縮尺を計算します。実際の直径が10mmで、図面上の距離が10mmであれば、以下のように縮尺を計算します。

10/10=1

すなわち、この場合、縮尺は1:1です。

注意点としては、正確に測ることが重要です。誤差が縮尺の推定に影響を与えることがあります。また、複数の既知の距離を測定して確認することで、より正確な縮尺を推定できます。

(まとめ)縮尺を推定するには、まず現物を確認するのが鉄則です

以上、縮尺がわからない場合の対応について解説しました。

縮尺は現物と図面の寸法比ですから、現物の寸法を把握し、図面上の寸法との比率を求めることで算出できます。特に機械設計では、寸法が極端に大きかったり、小さかったりしない限り、製造や組み立ての現場で寸法を比較的容易に測定することができるはずです。

また、三角スケールなどのちょっとした道具をうまく活用することで、縮尺の推定を容易に行うこともできます。

大切なのは、自分が設計している製品や部品の大きさを肌感覚でつかんでおくことではないでしょうか。これができれば、縮尺を見失うことはおおむねないと言えるでしょう。

そして、製造現場との対話と経験がこれらを可能にするのです。

最後に「図面バンク」も設計プロジェクトの成功を心から願っています。

初期費用ゼロ円キャンペーン!図面バンクで利益を増やす!

資料請求【初期費用30万円割引キャンペーン!!】

サービスや導入のメリットをくわしくご紹介しています。
導入する前に、まずは無料の資料請求をしてみましょう。

関連記事