特性要因図の要因の決め方について解説!4M以外の要因とは?

2024.05.27

特性要因図は、特性(問題)と要因(原因)の関係を大骨→中骨→小骨の階層で分類し、要因を掘り下げていくツールです。製造業においては品質管理の問題解決手法として広く使われており、問題の真の原因を突き止めるために活用されています。

しかし、特性要因図を作成する際に、要因の決め方を誤ってしまうと、問題解決に向けた努力が無駄になってしまうリスクがあります。例えば、要因の分類が適切でない場合、真の原因を見落としてしまう可能性があります。また、要因の掘り下げが不十分だと、表面的な原因しか特定できず、根本的な解決につながりません。

特性要因図の要因の決め方を誤ると、以下のようなリスクが生じます:

・真の原因を見落とし、問題解決に時間がかかる
・対症療法的な対策しか打てず、問題が再発する

本記事では、特性要因図について、要因の基本的な決め方、4Mと4M以外の分類、要因出しの良い事例・悪い事例、要因の掘り下げ方まで、詳しく解説します。

読み終えれば、特性要因図の要因を適切に決められるようになり、問題解決力が格段に向上するはずです。それでは、早速見ていきましょう。

要因の基本的な決め方

特性要因図の要因は、大きく分けて「大骨展開法」と「小骨集約法」の2つの方法で決めることができます。それぞれの手順を見ていきましょう。

大骨展開法

大骨展開法は、まず大骨を先に決めて、大骨ごとに中骨以下の要因を挙げる方法です。大骨がある程度わかっている場合に適しています。製造業の生産現場においては、問題の要因を4M(Man、Machine、Material、Method)ごとに分析することが多く、こちらの方法がよく使われます。

大骨展開法による要因の決め方は、以下の手順です。

1. 特性(問題)を決める
2. 特性に影響を与える大きな要因(大骨)を、4M(Man、Machine、Material、Method)などの観点から抽出する
3. 大骨ごとに、より具体的な要因(中骨)を挙げる
4. 中骨をさらに細分化し、小骨、孫骨と順次掘り下げていく
5. 各要因の因果関係を確認し、必要に応じて修正する

小骨集約法

小骨集約法は、まず具体的な要因を出し合い、それらをボトムアップ式にグループ化していく方法です。大骨の分類があらかじめ決まっていない場合や、4Mにとらわれずに要因を抽出したい場合に適しています。

小骨集約法による要因の決め方は、以下の手順です。

1. 特性(問題)を決める
2. ブレインストーミングなどで、特性に影響を与える要因を自由に出し合う
3. 出された要因の内容を似たもの同士を集め、中骨、大骨と段階的にグループ分けする
4. 要因を特性要因図上に配置する
5. 各要因の因果関係を確認し、必要に応じて修正する

4Mと、4M以外の要因

4Mとは

特性要因図の大骨(主要因)は、4M(Man、Machine、Material、Method)で分類されることが製造業においては一般的です。

Man(人):作業者の技能、経験、意識など、人に関連する要因
例:作業者の疲労、作業者のミス、コミュニケーション不足など

Machine(機械):設備、工具など、作業で使う機械に関連する要因
例:機械の故障、工具の摩耗、設備のメンテナンス不足など

Material(材料):原材料や部品など、作業で使う材料に関連する要因
例:材料自体の品質ばらつき、保管状態、供給体制

Method(方法):作業手順、管理方法など、作業の方法に関連する要因
例:手順書の有無や不備、作業基準のあいまいさなど

4M以外の要因

問題の性質によっては、4Mだけでは要因を十分に分類できない場合があります。4M以外に使われる要因の例を、以下に示します。

Environment(環境):温度、湿度、照明、騒音など、作業環境に関連する要因
Management(管理):教育、訓練、手順書、コミュニケーションなど、管理面に関連する要因
Measurement(測定):測定方法、測定機器、校正など、測定に関連する要因
System(システム):制御装置や他の機器との連携など、システム全体に関連する要因
Space(場所):工場の立地や生産場所の変更など、場所に関連する要因

これらの要因は、4Mと併用したり、業種や問題の性質に応じて柔軟に選択したりすることができます。たとえば、4MにEnvironment(環境)を加えて「4M1E」、4Mに2S(System(システム)、Space(空間))を加えて「4M2S」とする場合もあります。

4Mに縛られる必要はない

特性要因図は、そこに問題があって、問題を引き起こす原因を探りたい状況であれば、どのような場面でも使えるツールです。すべての業種において、さらに言うと家庭や学生サークルで発生する問題においても適用できます。

よって、大骨も4M(Man、Machine、Material、Method)に縛られる必要はありません。サービス業や営業会社など、工場や生産設備を持たない業種の場合、Machine(機械)やMaterial(材料)は要因にはならないでしょう。

事例として、「QCサークル活動が形骸化している」という特性(問題)の大骨を分類していきましょう。

まず、QCサークルに関わっているのは、やはり人です。立場の違いごとに登場人物を挙げていくと、「リーダー」「メンバー」「上司」「推進事務局」と分類することができそうです。

つぎに、人以外の要因を考えていくと、サークル活動の運営方法(方法)が挙げられます。また、そもそもサークル活動がしづらい環境も要因かもしれません。

これらから、大骨となる要因を次のように抽出しました。

特性:「QCサークル活動が形骸化している」
大骨の要因:「リーダー」「メンバー」「上司」「推進事務局」「方法」「環境」

大骨の要因の出し方のコツ

大骨の要因は、以下のようなコツを踏まえて決定していくのが良いでしょう。

1. 問題の性質を考慮し、適切な要因分類を選ぶ
-製造業なら4Mを基本とし、問題に応じて関連しそうな要因を選ぶ
-製品の品質問題でない場合は、問題に影響しそうな要素を挙げる

2. チームメンバーの知識と経験を活用する
-チームメンバー全員が集まって、要因を出し合う機会を作る

3. 大骨は4〜6個程度に絞る
-大骨が多すぎると、図が煩雑になり、理解しにくくなる

4. 必要に応じて要因分類を柔軟に変更する
-要因出しを進める中で、分類の修正が必要になることもある
-最初に決めた大骨の案にとらわれず、柔軟に対応する

5. 親和図法を使い、要因をグループ分けする
-小骨集約法で集まった要因は、親和図法を使って下図のように中骨、大骨ごとにグループ分けするのが効果的

親和図法によるグループ分け
親和図法によるグループ分け

要因出しの良い事例・悪い事例

要因出しの良し悪しは、特性要因図の質を大きく左右します。ここでは、製造業やサービス業における良い事例と悪い事例を見ていきましょう。

製造業における事例

良い事例
特性:部品の寸法不良
大骨:作業者、機械、材料、方法
中骨・小骨:作業者のスキル、機械の調整不良、材料のロットばらつき、作業手順の不備など
ポイント:4Mを用いて体系的に要因を整理し、具体的な中骨・小骨を抽出している

悪い事例
特性:部品の寸法不良
大骨:作業者、機械、材料、方法
中骨・小骨:「作業者」の大骨の中に「手順書の不備」が記載
ポイント:「作業者(人)」の大骨に、手順書(方法)に関する要因が混じっている

サービス業における事例

良い事例
特性:レストランの料理提供時間が長い
大骨:従業員、設備、方法、材料、環境
中骨・小骨:調理スタッフの人数不足、調理機器の老朽化、食材の仕込み不足、調理手順の非効率性、厨房のレイアウト不備など
ポイント:4M1Eをベースにして飲食業特有の要因を抽出し、具体的な中骨・小骨を挙げている

悪い事例
特性:レストランの料理提供時間が長い
大骨:従業員、設備、方法、材料、環境
中骨・小骨:調理スタッフを増やす、調理器具を新調する
ポイント:対策が見える表現になっている。

要因の掘り下げ方と主要因の選定

要因を適切に掘り下げ、真の原因につながる主要因を選定することは、特性要因図の重要なポイントです。ここでは、「なぜなぜ分析」の活用方法、対策が見える表現を避けるコツ、主要因の選定方法について説明します。

「なぜなぜ分析」を活用する

「なぜなぜ分析」は、問題の原因を掘り下げるための簡単で効果的な手法で、より深い原因追及ができます。

なぜなぜ分析の手順はシンプルで、特性(問題)に対して「なぜ?」と問いかけを繰り返します。一般的には、「なぜ?」を5回程度繰り返すことで、真の原因が明らかになることが多いと言われています。

例:「部品の寸法不良」
  ↓「なぜ?」
 「機械の調整不良」
  ↓「なぜ?」
 「定期メンテナンスが不十分」
  ↓「なぜ?」
 「定期メンテナンスの時期を担当者が知らない」
  ↓「なぜ?」
 「定期メンテナンスの時期を知る機会がない」

対策が見える表現を避ける

要因の記述は、あくまでも問題の原因を表すものであり、対策そのものを示すものではありません。対策が見える表現を使ってしまうと、真の原因の追究が不十分になるリスクがあります。

・例:「作業者の教育が不十分」という要因に対して、「教育を充実させる」と記述してしまうのは避ける
・対策ではなく、「なぜ教育が不十分なのか」という観点で要因を掘り下げる
・要因の記述は「〜が不十分」「〜が不適切」など、問題点を明確に表す言葉を使う

主要因の選定の仕方

主要因とは、特性(問題)に最も大きな影響を与える要因のことです。主要因は、小骨・孫骨のレベルから選定するのが望ましいです。

理由は、小骨・孫骨レベルの要因は、深掘りされて具体的であり、その要因を取り除けば問題が解決する可能性が高いからです。

主要因は、データに基づく定量的な評価や、チームでの議論を通じた定性的な評価を組み合わせて選出しましょう。

まとめ

本記事では、特性要因図における要因の決め方について、基本的な手順から実践的なコツまで詳しく解説してきました。ここでは、要因の決め方のポイントを再確認するとともに、特性要因図を正しく使いこなすことの重要性を再度強調します。

要因の決め方のポイント:
・要因の出し方には、「大骨展開法」と「小骨集約法」の2つの方法がある
・4M以外の要因分類(Environment(環境)、System(システム)など)も活用する
・「なぜなぜ分析」で要因を深く掘り下げる
・対策が見える表現を避け、あくまでも原因追究に徹する
・主要因は小骨・孫骨レベルから選定する

特性要因図を正しく使いこなすことの重要性:
・特性要因図は、問題を引き起こす要因を洗い出し、主要因を特定するツール
・要因の決め方を誤ると、問題解決が遅れたり、対症療法に陥ったりするリスクがある

本記事で紹介した要因の決め方のポイントを押さえ、特性要因図を正しく使いこなすことで、問題解決力が格段に向上します。日々の業務の中で特性要因図を積極的に活用すれば、問題解決のプロフェッショナルとして社内で一目置かれることになるでしょう。

ぜひ、本記事の内容を実践の場で活かし、問題解決のエキスパートへと成長していただければ幸いです。