図面の縮尺の決定の基本

2024.05.28

図面の縮尺についての考え方が大きく変わりました。現在では紙図面での出図はあまりなく、その多くがデジタルデータによる電子出図になっています。そこでここでは、図面の縮尺について紙図面での基本的な考え方を確認しながら、CADによる製図の場合の縮尺の基本について考えてみました。

図面の縮尺とは

図面の縮尺は、実際のサイズを一定の割合で縮小または拡大して表現するための比率を指します。縮尺は図面を正確かつ効率的に表現するために重要です。

縮尺の定義

縮尺は「図面上の長さ」と「実際の長さ」の比率で表されます。例えば、縮尺1:100の場合、図面上の1cmが実際の100cmに相当します。

縮尺の種類

縮尺の種類には2種類あります。

分数縮尺は、縮尺を分数で表す方法です。例えば、1/100(1:100)は、図面上の1単位が実際の100単位に相当することを意味します。また、比率縮尺は縮尺を比率で表す方法です。例えば、1:50は、図面上の1単位が実際の50単位に相当します。

縮尺の計算方法

例えば、縮尺1:100の図面で図面上の長さが5cmの場合、実際の長さは以下のようになります。

実際の長さ=図面上の長さ×縮尺の分母

実際の長さ=5cm×100=500cm

JISでの定義

日本産業規格(JIS)では、図面の縮尺について具体的な規格が定められています。JISで定められた縮尺は、設計や製図の際に一貫性を保つための重要なガイドラインです。適切な縮尺を選ぶことで、図面の正確さと効率性を高めることができます。

JISの具体的な規格

JISに基づく図面の縮尺に関する具体的な規定は「JIS Z 8314: 製図—縮尺」や「JIS B 0001: 機械製図—縮尺」に記載されています。以下に、JISで定義されている縮尺でよく使う代表的な縮尺を紹介します。

1:1、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100、1:200、1:500、1:1000、1:2000、1:5000、1:10000

縮尺の選び方

縮尺を選ぶ際には、以下の要因を考慮します。

まず図面の目的を考えます。 建築図面、地図、機械図面など、図面の種類によって適切な縮尺が異なります。また、詳細の必要性の考慮も必要です。詳細な部分を正確に描く必要がある場合、より大きな縮尺を使用します。さらに用紙サイズも考える必要があります。 実際の大きさに合わせて図面を用紙に収めるために、適切な縮尺を選びます。

なお、現代では、直感的に判断しやすく、計算が容易な縮尺(例えば、10倍、2倍、5倍など)が好まれます。これにより、図面を読む人や共有する人が容易に理解でき、誤解が少なくなります。標準化された縮尺を使用することで、コミュニケーションがスムーズになり、プロジェクトの効率が向上します。

機械図面でよく使用される縮尺

機械図面でよく使用される縮尺には以下のようなものがあります。

1:1: 実寸大で描く。部品図などで使用される。

1:10、1:50、1:100 組立図などに使用される。

具体的には、部品図では、1:1が基本です。組立図では1:10や1:20、1:50、1:100の縮尺が使われることが多いです。

√2を含んだ縮尺

√2 を含む比率は非常に限定的な状況で使用されることがあります。これには以下のような用途が考えられます。

A系列の用紙サイズに関連する場合

日本工業規格(JIS)や国際標準化機構(ISO)で定められたA系列の用紙サイズ(A0、A1、A2、A3、A4など)は、各サイズが前のサイズの半分の面積になるように設計されています。具体的には、長辺と短辺の比が √2です。例えば、A0サイズを半分に折るとA1サイズになり、A1を半分に折るとA2になります。

そのため√2の縮尺は、例えば、図面をA3からA2に縮尺変更を前提とする場合に使用されることがあります。

√2の縮尺があまり使用されない理由

現代では、√2を含んだ縮尺はあまり使用されず。1:50、1:100、1:200といった標準的な縮尺が広く使用されています。その理由は以下のようなものです。

まずデジタル化の進展が大きいです。CADソフトウェアの普及により、図面はデジタルデータで作成・共有されることが一般的になっています。デジタルデータは簡単に拡大縮小できるため、特定の用紙サイズや縮尺に縛られる必要が減少しました。デジタル表示では、ズーム機能を使って自由に拡大縮小が可能なため、特定の縮尺を固定して使用する必要性が低くなっています。

プリンターとプロッターの進化もあります。プリンターとプロッターの発達は、高精度でさまざまなサイズの用紙に印刷できます。これにより、特定の縮尺を考慮せずに図面を作成し、必要に応じて印刷時に縮尺を調整することが可能です。

グローバルスタンダードの影響もあります。グローバルに通用する標準的な縮尺の使用が推奨されています。これは国際的なプロジェクトや国を跨いだ共同作業を考慮したものであり、一般的な縮尺(1:50、1:100、1:200など)が採用されています。

直感的でなく、用途が限定的というのもあります。√2 の縮尺は直感的でなく、計算が複雑になります。実務上、直感的で分かりやすい縮尺が好まれます。また、A系列の用紙サイズ間の変換に特化しており、他の用途ではほとんど使用されません。実際の設計や製図の現場では、より実用的な縮尺が選ばれます。

つまり、現代では、標準化された直感的な縮尺(1:50、1:100、1:200など)が主流となっており、√2を含む比率は特定の状況を除いてあまり使用されなくなっています。デジタルツールの普及やプリンターの進化により、必要な縮尺を柔軟に設定できる環境が整っていることも一因です。

直感的に判断できる縮尺を選ぶ理由

すでに述べたように、現代では、縮尺は直感的に判断しやすく、コミュニケーションや計算が容易なものが好まれます。具体的な理由は以下の通りです。

分かりやすく計算が容易

直感的な縮尺は、図面を読む人がすぐに理解しやすく、誤解が生じにくくなります。例えば、1:10や1:100の縮尺は非常に分かりやすく、図面上の1単位が実際の10倍や100倍であることを即座に理解できます。

また10倍、2倍、5倍などの単純な倍率は計算が簡単で、寸法の変換や面積の計算が容易です。これにより設計者やエンジニアは効率的に作業を進めることができます。

標準化と共通理解

多くの業界で使用される標準的な縮尺は、関係者間の共通理解を助けます。これにより、図面を共有する際に誤解が少なくなります。

CADを使う場合の縮尺の基本

CADを使用する場合、基本的には縮尺1:1で描画するのが一般的です。CADでの作図は基本的に1:1で行い、詳細な設定や印刷時に必要な縮尺に調整するのが一般的な方法です。

なぜ1:1で描くのか

まず精度と詳細度の高いレベルでの確保が可能です。CADソフトウェアでは、詳細な部品や大規模なプロジェクトでも高精度で描画できます。CADでは縮尺1:1で描くことで、実際のサイズと一致するデザインが作成され、後で任意の縮尺に変更することが容易です。

また、標準化と互換性を考慮する必要があるからです。多くの設計者やエンジニアがCADソフトを使用しているため、1:1のスケールで描くことで、他のプロジェクトやユーザーと互換性を保つことができます。また、他のユーザーが図面を受け取った際に、サイズやスケールについての混乱が生じにくくなります。

さらに、CADソフトウェアでは、1:1で描くことで、寸法、面積、体積などの自動計算が正確になります。これにより、設計作業が効率化・高精度化され、エラーが減少します。

CADでの縮尺決定の手順

それでは、CADでの縮尺決定の手順を解説します。

モデル空間での1:1描画

モデル空間で実際の寸法で描画します。例えば、部品や建物の各部分をそのままのサイズで設計します。

レイアウト空間での縮尺設定

レイアウト空間は、印刷や図面のプレゼンテーションのために使用します。ここで用紙サイズを設定し、印刷する範囲を決めます。また、レイアウト空間では、図面を適切な縮尺で配置します。レイアウト空間ではビューポートを作成し、これを通じてモデル空間の内容を特定の縮尺で表示します。

ビューポートの作成

レイアウト空間にビューポートを作成し、モデル空間の一部または全体を表示します。ビューポートはウィンドウのようなもので、モデル空間の内容を特定の縮尺で表示します。

ビューポートの縮尺設定

ビューポートを選択し、適切な縮尺を設定します。これにより、モデル空間の内容が指定した縮尺で表示されます。例えば、1:50の縮尺を設定すると、モデル空間の1単位がレイアウト空間で50単位に相当します。

印刷とプロット

レイアウト空間の設定が完了したら、印刷設定を行います。CADソフトウェアでは、図面の実際のサイズと印刷サイズを対応させる機能があります。用紙サイズ、印刷の向き、印刷範囲などを指定し、最終的な図面の縮尺が正確になるように調整します。

図面のチェックと出力

印刷プレビューで図面が正しい縮尺で表示されているか確認します。必要に応じてビューポートの調整や印刷設定を修正します。そして、図面を印刷するかPDFとして出力します。これにより、設計図が適切な縮尺で提供されます。

(まとめ)縮尺についての考え方は昔とは大きく異なっています

以上、縮尺の基本について考えてきました。現代のCADによる製図では図面の縮尺は1:1、つまり原寸大が原則です。組立図をコンピュータ内部の仮想空間で原寸大で作成し、必要に応じて縮小して表示するという考え方になります。

そのほうが、シュミレーションなど、CADの高度な機能を使用する場合にも高精度な結果が期待できます。紙に出力して出図する時代の縮尺に対する考え方は大きく変わろうとしているのです。

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