製造業向けクラウドERPの概要と選び方

2024.06.23

ERPシステムは、現在ではかなり小さな企業でも導入が進んでいます。そして、その流れは中小製造業にも及んでいます。ここでは、ERPとは何か、ERPとPLMの関係、メリット、主要なERP/PLM製品について解説し、中小製造業が導入する際のポイントについて解説しました。

ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning)は、日本語で「企業資源計画」と訳され、企業の全体的な業務プロセスを統合管理するためのシステムを指します。企業内のさまざまな部門(例:会計、人事、生産、販売、在庫管理など)を横断的に結びつけ、情報の一元化と効率化を図るためのシステムです。

ERPの主な機能

ERPの主な代表的な機能には財務会計、管理会計、資金管理、固定資産管理などの「会計管理」、労務管理、人事評価、給与計算、採用管理などの「人事管理」、生産計画、製造実行、品質管理、設備管理などの「生産管理」があります。

また、在庫追跡、入出庫管理、棚卸、需要予測などの「在庫管理」、購買発注、サプライヤ管理、購買契約、支払管理などの「購買管理」、受注管理、出荷管理、売上管理、顧客管理などの「販売管理」、プロジェクト計画、進捗管理、予算管理、リソース管理などの「プロジェクト管理」もERPの機能です。

ERPの利点

各部門のデータを一つのシステムで一元管理するため、データの整合性と可視性が向上します。これにより、リアルタイムでのデータ更新が可能になり、迅速な意思決定が可能となります。

そして、各部門間の連携が強化され、重複作業やミスが減少します。結果、業務効率が向上し、業務プロセスの標準化と効率化が達成され、運用コストが削減されます。

ERPとPLM

設計や研究開発を含むERPの一部は、PLM(Product Lifecycle Management、製品ライフサイクル管理)と呼ばれます。PLMは製品の設計から開発、製造、販売、サービス、廃棄までの全ライフサイクルを管理するためのシステムです。PLMは、ERPの一部として統合されることが多く、特に製造業では重要な役割を果たします。

PLMの主な機能

製品設計のデータ(CAD図面、仕様書、部品リストなど)を一元管理し、バージョン管理やアクセス制御を行う「設計データ管理(PDM)」、製品開発プロジェクトの計画、進捗管理、リソース配分、コスト管理を支援する「プロジェクト管理」、製品の構成(BOM:部品表)を管理し、設計変更やバージョンアップを管理する「製品構成管理」、製品の品質を確保するためのプロセスや手法(例:FMEA、品質ゲート)を統合する「品質管理」などがあります。

以上の結果、チームや部門間での設計データやプロジェクト情報の共有とコラボレーションを促進する働きも持っています。

ERPとPLMの統合の利点

データの一元管理

製品データやプロジェクト情報がERPと統合されることで、部門間のデータ共有がスムーズになり、情報の整合性が保たれます。

効率的なプロセス管理

設計・開発プロセスと製造プロセスの連携が強化され、開発から製造までのリードタイムが短縮されます。

品質の向上

製品ライフサイクル全体での品質管理が可能となり、不具合の早期発見と改善が実現します。

コスト削減

製品開発や製造プロセスの効率化により、無駄なコストが削減されます。

ERPやPLMをクラウド化するメリット

クラウドERP/PLMシステムは、企業のさまざまな業務プロセスを一元管理し、効率化するためのツールであり、特に製造業においては、以下のような利点があります。

リアルタイムデータアクセス

どこからでもリアルタイムでデータにアクセスできるため、迅速な意思決定が可能になります。この結果、生産スケジュールの調整、需要予測の精度向上などが見込めます。

コスト削減

クラウドシステムは、初期導入費用が低く、ハードウェアやITインフラの維持費も削減できます。その結果、ITコストの削減が図れます。

スケーラビリティ

クラウドシステムは、ビジネスの成長に応じて柔軟にスケールアップ・ダウンが可能です。つまり、成長する企業のニーズに合わせたシステム拡張が容易です。

セキュリティ

クラウドサービスプロバイダーは高度なセキュリティ対策を講じているため、データの安全性が高いです。つまり、セキュリティの専門知識がなくても、高度なセキュリティが確保されるということです。

カスタマイズ可能

製造業特有のニーズに応じてカスタマイズが可能です。つまり、自社の業務プロセスにフィットしたソリューションの提供が可能です。

クラウドERP/PLMは、製造業の競争力を高め、効率化を推進するための強力なツールとなります。導入にあたっては、企業の特性やニーズに応じた適切なソリューションを選択することが重要です。

ERP/PLM導入のステップ

まず、現在の業務プロセスを詳細に分析し改善点を洗い出して、現状分析をおこない、必要な機能やシステム要件を明確にします。そして、プロバイダーを選定します。

その後、具体的な導入計画を策定し、データ移行やシステム設定を行います。さらに、ユーザー教育を行い、システムの効果的な活用方法を指導します。

その後、システムを本格稼働させ、定期的な評価と改善を行います。

主要なクラウドERP/PLMプロバイダー

SAP

世界最大のERPソフトウェアベンダーで、多くの大企業で採用されています。SAP S/4 HANAは高度な生産計画と品質管理機能を提供しています。SAP PLMとの統合で設計データを一元管理できます。またSAP MIIで製造プロセスのモニタリングと最適化を、SAP PPMでプロジェクト管理とR&Dの統合が可能です。

Microsoft Dynamics

Microsoft製品との高い互換性とユーザーフレンドリーなインターフェースを持っています。また、製造業向けのモジュールが充実し、他のMicrosoft製品との統合が容易です。 また、

Dynamics 365 Supply Chain Managementで製造プロセスの管理を、Dynamics 365 Project Operationsでプロジェクト管理とR&Dの統合を、Microsoft Power Platform(Power BI)でデータ分析とプロセスの自動化が実現します。

Oracle

データベース技術に強みを持ち、幅広い業務プロセスに対応しています。Oracle ERP Cloudは製造業向けの豊富な機能と高度なデータ分析能力を有しています。また、Oracle PLM Cloudで製品データと設計プロセスを管理でき、Oracle SCM Cloudとの統合でサプライチェーン全体を最適化、Oracle PPMでプロジェクト管理とR&Dの統合が可能です。さらにOracle Agile PLMと呼ばれるPLMとの連携も可能です。

Autodesk Fusion Lifecycle

Autodesk Fusion Lifecycleは、製品ライフサイクル管理に特化したクラウドベースのPLMです、ERPと統合することで設計から製造までを一元管理します。特に中小企業に向いています。導入が容易で、コスト効率が高いです。また、使いやすいインターフェースで、迅速な導入と学習が可能です。さらに中小企業向けの導入支援やトレーニングプログラムが充実しています。なお、同社のCADシステムであるAutoCADやInventorとの親和性が高いです。

PTC Windchill

PTCのWindchillは、製品データ管理とライフサイクル管理の機能を提供し、設計から製造までのプロセスを統合します。PTCのCADシステムであるCreoとの親和性が高いです。PTCからは中小企業向けのOnshapeというPLMシステムもあります。

Dassault Systemes ENOVIA

Dassault SystemesのENOVIAは、3D設計データを中心にした製品ライフサイクル管理を提供し、製品開発プロセスを最適化します。同社のCADシステムであるSolidWorksやCATIAとの親和性が高いです。

また、必ずしも製造業向けではありませんが、日本における中小企業向けERPで代表的なものにSMILE V (大塚商会)、OBIC7 (オービック)、奉行シリーズ (OBC)、 ZAC (ミロク情報サービス)、JDL IBEX (日本デジタル研究所)などがあります

中小企業がERP/PLMを導入するうえで重視すべきポイント

中小企業がERP/PLMを導入する際には、特有のニーズとリソースを考慮して、以下のポイントを重視することが重要です。

コスト

システムの初期導入費用、ライセンス費用、保守費用、トレーニングコストなどを総合的に考慮しましょう。中小企業にとっては、初期コストが低く、スケーラビリティの高いクラウドベースのシステムが魅力的です。

スケーラビリティと柔軟性

企業の成長や変化に応じて、システムの規模や機能を容易に拡張できるかどうかを確認しましょう。また、自社の特有のニーズに応じて、システムが柔軟にカスタマイズできるかも確認しましょう。

使いやすさ

システムが直感的で使いやすいか、従業員が短期間で習得できるかどうかを確認しましょう。導入後のトレーニングプログラムやサポート体制が充実していることも重要です。

機能の適合性

自社の業務プロセスに必要な機能(例:会計管理、在庫管理、生産管理、人事管理など)がしっかりと含まれているかを確認しましょう。また、必要な機能をモジュールごとに追加できる柔軟性があるかどうかを確認しましょう。

統合性

既存の業務システムやツール(例:会計ソフト、CRMシステム)と円滑に統合できるかどうかを確認しましょう。データの一元化が可能であり、部門間のデータの共有と連携がスムーズに行えるかを確認することも重要です。

ベンダーの信頼性

ベンダーの実績や市場での評価、他の中小企業での導入事例を確認しましょう。導入後の技術サポートやカスタマーサポートの質が高いかどうかも重要です。

セキュリティとコンプライアンス

システムが強固なセキュリティ対策を備えているかどうかを確認しましょう。自社が従う必要がある業界規制や法規制に対応しているかどうかも重要です。

(まとめ)ERP/PLMシステムは企業にとって重要なシステムです

以上。ERP/PLMシステムについて述べてきました。中小製造業がERP/PLMを導入する際には設計や製造、研究開発を含めた形で業務分析を行い、これらの業務の情報も含めた形でシステムを構築するのが理想的です。CADベンダーからも設計業務からのアプローチで、ERP/PLMを考えているシステムが供給されています。

中小企業でも比較的取り組みやすいシステムも徐々に出現し始めているので、これらのシステムの導入を考えている企業はまずは情報収集に努めてみてはいかがでしょうか。

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