2DCADと3DCAD 違いと使い分け
2024.07.11
機械設計の分野では3DCADがメインで使われています。しかし、2DCADも依然として使われています。これはなぜでしょうか?
なぜかというと2D CADと3D CADは、いずれも設計やエンジニアリングの分野で重要なツールですが、目的や機能が異なるからです。そして、現実にはこれらの目的と機能にもとづいて使い分けられているからです。
ここでは、2DCADと3DCADの違いと使い分けについて説明し、CADシステムの効率的な使い方について考えてみたいと思います。
目次
- 2DCADと3DCADの違い
- 2D CAD
- 3D CAD
- 機械設計での使い分け
- 2D CADの使いどころ
- 3D CADの使いどころ
- 3D CADのメリット
- 詳細な視覚化
- 干渉チェック
- シミュレーションと解析
- プロトタイピングと製造準備
- ライフサイクル管理
- 3D CADの操作が難しい理由
- 高度な機能とツール
- 空間認識力
- 詳細な設定とパラメータ
- 2DCADで十分な場合
- シンプルなパーツやアセンブリの設計
- 部品図の作成
- 電気回路図や配線図
- コストとリソースの制約がある場合
- プロジェクトの初期段階
- 昔の状況
- 2D CADを使った複雑な機械設計の背景
- 見えてきた2DCADの限界
- 3DCADと2DCADの併用の例
- (まとめ)2DCADと3DCADを適切に使い分けていきましょう
2DCADと3DCADの違い
2D CAD
主に平面の二次元図面を作成するために使用されます。
3D CADに比べて学習が簡単で使用が容易です。
システム要件が低いため、性能の低いコンピュータでも利用可能です。
3D CAD
任意の角度から表示および操作できる三次元モデルを作成するために使用されます。
表面、ソリッド、メッシュの複雑なモデリングが可能です。
3D形状、アセンブリ、シミュレーションを作成および編集するためのツールがあります。
システム要件が高く、高性能なグラフィックスカードやCPUを必要とします。
3D CADは空間関係の理解を必要とし、より高度なスキルが求められます。
機械設計での使い分け
機械設計において、2D CADと3D CADの使い分けは、それぞれのツールの特性や設計プロセスの段階に応じて異なります。以下に、機械設計における2D CADと3D CADの具体的な使い分け方法を説明します。
2D CADの使いどころ
機械部品やシステムの基本的なレイアウトやコンセプト図を素早く描くのに適しています。
アイデアを迅速に視覚化し、チームメンバーと共有するためのツールとして使用されます。
また、部品の詳細な寸法、許容誤差、材料指定などを記載した製造図面の作成に使用されます。
さらに、複雑でない部品やアセンブリの設計には、2D CADで十分です。また、平面的な構造や2次元的な形状のみを持つ部品の設計に最適です。
そして、初期投資やハードウェアの要件が低いため、コストを抑えつつ設計作業を行いたい場合に使用されます。
3D CADの使いどころ
複雑な形状や多くの部品を含むアセンブリの設計に適しています。また、3Dモデルを通じて、部品の干渉チェックや適合性の確認を行います。
さらに強度解析、流体解析、熱解析などのシミュレーションを実行し、製品の性能を評価できます。これにより設計の初期段階で潜在的な問題を特定し、修正することができます。
3DプリンティングやCNC加工のためのデータを直接生成し、迅速なプロトタイピングを支援します。これにより、設計の実現可能性を迅速に評価し、フィードバックを得るために使用されます。
3D CADのメリット
3D CADの操作は2D CADに比べて難しいですが、詳細な設計には多くの利点があります。以下に、3D CADが詳細な設計に必要な理由と、その操作が難しい理由を説明します。
詳細な視覚化
3D CADは、製品の形状、寸法、材料などをリアルに視覚化することができます。これにより、設計の意図を明確に伝えることができ、設計の確認が容易になります。
干渉チェック
複数の部品がどのように組み合わさるかを3Dで確認することで、干渉や適合性の問題を早期に発見できます。これにより、設計ミスを防ぎ、製造工程でのトラブルを減少させます。
シミュレーションと解析
強度解析、熱解析、流体解析などのシミュレーションを実行して、製品の性能や耐久性を評価することができます。これにより、設計の信頼性を高めることができます。
プロトタイピングと製造準備
3DプリンティングやCNC加工のためのデータを直接生成できるため、迅速なプロトタイピングが可能です。また、製造工程に必要な詳細な指示やデータを提供できます。
ライフサイクル管理
製品のデジタルツインを作成し、製品のライフサイクル全体にわたって管理や保守を行うことができます。これにより、製品の改良や最適化が容易になります。
3D CADの操作が難しい理由
高度な機能とツール
3D CADソフトウェアには、多くの高度な機能とツールがあります。これらを使いこなすためには、時間と経験が必要です。
空間認識力
3D空間での設計は、2Dの平面図よりも複雑です。部品の位置関係や動きを正確に把握するためには、空間認識力が求められます。
詳細な設定とパラメータ
3Dモデルを正確に作成するためには、多くの設定やパラメータを正しく入力する必要があります。これには注意力と精密さが求められます。
2DCADで十分な場合
シンプルなパーツやアセンブリの設計
複雑な三次元形状を持たない部品やアセンブリの設計には2D CADが適しています。例えば、フラットなプレートやシンプルな金具など、平面的な形状のみを持つ部品の設計には2D CADで十分です。
部品図の作成
製造に必要な部品図のみを作成する場合、2D CADが役立ちます。寸法、材料指定、加工指示などを正確に伝えるための図面を2D CADで作成することができます。
電気回路図や配線図
配線図や回路図は2D CADで作成することが一般的です。これらの図面は、部品の配置や接続を示すために2D CADが適しています。
コストとリソースの制約がある場合
3D CADの導入や運用にかかるコストやシステム要件が高いため、予算やリソースに制約がある場合には2D CADが実用的です。2D CADは比較的低コストで導入でき、性能の低いハードウェアでも動作します。
プロジェクトの初期段階
プロジェクトの初期段階では、基本的な設計概念やレイアウトを迅速に作成することが求められることがあります。この段階では、2D CADでの作業が効率的です。
昔の状況
かつては2D CADが主流で、複雑な機械設計も2D CADを使って行われていました。以下に、2D CADを使って複雑な機械設計を行っていた時代の背景と、その利点や制約について説明します。
2D CADを使った複雑な機械設計の背景
1980年代から1990年代にかけて、コンピュータ技術の進歩とともに2D CADが普及しました。これにより、手書きの製図に代わってデジタルでの設計が一般化しました。
初期のCADシステムは、線、円、アークなどの基本的な図形を描くためのツールを提供していました。これを用いて、エンジニアやデザイナーは複雑な機械部品やアセンブリを設計しました。
2D CADは操作が比較的簡単で、基本的な設計作業に対して効率的です。手書きの図面に比べて、修正や変更が容易でした。
また、2D CADはハードウェアやソフトウェアのコストが低く、初期投資が少なくて済みました。そのため、多くの企業が導入しやすかったのです。
さらに、2D CADを使用して作成された製造図面は、部品の加工や組み立てに必要な情報を正確に提供しました。これにより、製造の品質が向上しました。
見えてきた2DCADの限界
しかし普及が進み、多くの企業で使われるようになると、限界も見えてきました。
2D CADは平面図のみを扱うため、立体的な形状や複雑なアセンブリの視覚化が難しいという制約がありました。このため、エンジニアは部品の干渉や適合性を手作業で確認する必要がありました。
また、複雑な設計では、複数の図面(平面図、立面図、断面図など)を手作業で描き、整合性を保つ必要がありました。これには多くの時間と労力がかかりました。
さらに、2D CADは基本的な図面作成に特化しており、強度解析や流体解析などのシミュレーションを実行する機能が不足していました。このため、設計の妥当性を評価するためには別の手法が必要でした。
このような問題に対応するため3DCADは開発されたのです。
3DCADと2DCADの併用の例
3D CADと2D CADを併用することで、設計プロセス全体の効率を向上させることができます。3D CADを少数導入して全体の組み立て図をモデリングし、多数の2D CADで部品図を描くという使い分けの具体的なメリットについて説明します。
3D CADで全体の組み立て図をモデリングすることで、部品間の干渉や適合性を確認しやすくなります。これにより、設計ミスを早期に発見し、修正することができます。
また、2D CADを使って詳細な部品図を作成することで、製造図面の作成が効率的になります。部品の寸法、公差、材料指定などを明確に伝えることができます。
さらに、3D CADは高価なソフトウェアやハードウェアを必要とするため、少数のライセンスを導入し、3Dモデリングの作業を集中させることで、コストを削減できます。一方、2D CADは低コストで広く利用可能です。
そして、3Dモデリングを専門とするチームと、2D CADで部品図を描くチームに分業することで、各チームの専門性を活かし、作業の効率を向上させることができます。
このような分業体制は、大規模なプロジェクトで特に有効です。また、フリーランスや小さな設計事務所に外注依頼する場合も効果的と考えられます。
フリーランスや小規模の設計事務所では3DCADを導入する余裕のない所も多くあります。そこで、比較的導入コストの安い2DCADをメインで使用することで、機械設計業務の人材の育成になり、フリーランスや小規模の設計事務所の仕事の機会を増やすことにもつながります。
(まとめ)2DCADと3DCADを適切に使い分けていきましょう
3D CADと2D CADを適切に使い分けることで、設計プロセスの効率と精度を大幅に向上させることができます。3D CADを使用して全体の組み立て図をモデリングし、2D CADで部品図を描くという手法は、コストを抑えながら高度な設計を実現するための有効なアプローチです。この使い分けにより、各ツールの強みを最大限に活かすことができ、最終的な製品の品質を高めることができます。
3DCAD一辺倒ではなく、2DCADの良さを生かしつつ適切にCADシステムを活用することが求められます。
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