シックスシグマの手法とTQCの違いと融合

2024.07.16

皆さんは「シックスシグマ」という考え方を知っていますか。品質管理の考え方の一つですが、概念としては比較的新しい考え方です。また。一部では既存の考え方を変えてしまうものという主張がなされますが、既存のTQCも依然として確固たる影響力を持っています。

ここでは、シックスシグマの概要を解説し、シックスシグマとTQCとの違いについて述べ、それぞれの特徴を生かした「融合」について考えてみたいと思います。

シックスシグマとは

シックスシグマ(Six Sigma)は、ビジネスや製造プロセスの品質改善と効率向上を目的とした管理手法です。この手法は、統計学に基づいてプロセスのばらつきを減少させ、欠陥の発生率を極限まで低減させることを目指しています。シックスシグマは、通常、「定義、測定、分析、改善、管理」(DMAIC)の5つの段階で進められます。

定義(Define)

改善すべきプロセスや問題点を明確に定義し、プロジェクトの目標を設定します。ここでは、顧客の要件や期待を理解し、プロジェクトのスコープやリソースを決定します。

測定(Measure)

現在のプロセスパフォーマンスを測定し、データを収集します。これは、問題の大きさを定量的に理解し、改善のための基準を設定するために重要です。

分析(Analyze)

収集したデータを分析し、問題の根本原因を特定します。ここでは、統計分析やその他の分析ツールを使用して、プロセスのばらつきや欠陥の原因を探ります。

改善(Improve)

根本原因に基づいて改善策を実施し、プロセスを最適化します。これは、新しい方法や技術を導入して、プロセスのパフォーマンスを向上させる段階です。

管理(Control)

改善されたプロセスが持続するように管理し、継続的なパフォーマンスの監視と管理を行います。これは、プロセスの安定性を維持し、再発を防ぐための管理策を実施する段階です。

シックスシグマの特徴

シックスシグマは統計データを活用してプロセスのパフォーマンスを分析し、改善します。また、顧客の要件や期待を重視し、それに基づいてプロセスの品質を向上させます。さらに事実とデータに基づいて意思決定を行うことを重視します。そして持続的なプロセス改善を目指し、問題が再発しないようにします。

シックスシグマの名前の由来と歴史

名前の由来

Six Sigmaは、統計学の用語である「シグマ(σ)」から取られています。シグマは、標準偏差を意味し、プロセスのばらつきを示す指標です。シックスシグマでは、欠陥が100万回の機会あたり3.4回以下という、極めて高い品質水準を目指します。この水準は、プロセスの標準偏差が平均から6シグマ以内に収まることを意味します。

歴史

1980年代: シックスシグマは、アメリカのモトローラ社で始まりました。エンジニアのビル・スミスがシックスシグマの概念を考えました。

1990年代: ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOであるジャック・ウェルチがシックスシグマを採用し、その成功が大きな注目を集めました。GEはシックスシグマを通じて大幅なコスト削減と品質改善を達成しました。

シックスシグマとTQCの違い

シックスシグマと総合品質管理(Total Quality Control:TQC)は、どちらも品質管理の手法ですが、そのアプローチや焦点にはいくつかの違いがあります。

シックスシグマ

シックスシグマでは「統計的手法の強調」が行われます。統計的分析を駆使してプロセスのばらつきを減少させ、欠陥を極限まで低減させることを目指します。

また、「プロジェクトベースのアプローチ」も特徴です。特定の問題やプロセス改善のプロジェクトに焦点を当て、明確な目標を設定して取り組みます。そして、ブラックベルトやグリーンベルトなど、専門的なトレーニングを受けた人材がプロジェクトをリードします。

さらに、「データドリブン」の考え方もあります。データと統計分析に基づいて意思決定を行い、問題の根本原因を特定して改善策を実施します。

TQC

TQCでは「全社的なアプローチ」が求められます。全社員が品質管理に関与し、組織全体で品質向上を目指すアプローチです。上層部から現場まで、すべてのレベルで品質に対する責任を持つことを奨励します。

また「広範な品質改善」も特徴です。製品やサービスの品質だけでなく、組織全体のプロセスや活動を改善することを目指します。また、小集団活動などの活動を通じて、現場の従業員が自主的に改善活動を行います。

さらにTQCは「顧客満足度を重視」します。顧客の要求に応える製品やサービスを提供することに焦点を当てます。PDCAサイクル(計画、実行、チェック、改善)を繰り返し行うことで継続的な改善を図ります。

ブラックベルトやグリーンベルト

シックスシグマのブラックベルト(Black Belt)やグリーンベルト(Green Belt)は、シックスシグマのプロジェクトをリードする専門的な役割や資格を指します。これらのベルトは、シックスシグマのトレーニングと経験のレベルを示し、それぞれに異なる役割と責任があります。

イエローベルト(Yellow Belt)

基本的なシックスシグマの知識を持ち、プロジェクトに参加するためのトレーニングを受けた人で、グリーンベルトやブラックベルトのサポート役として活動します。

グリーンベルト(Green Belt)

グリーンベルトは、シックスシグマプロジェクトにおいて、部分的なプロジェクトリーダーとして活動します。他の業務と並行してシックスシグマの活動を行い、データ収集、分析、および改善策の実施を担当します。

ブラックベルト(Black Belt)

ブラックベルトは、シックスシグマプロジェクトの全体をリードし、プロジェクトマネージャーとして活動します。フルタイム(つまり専業です)でシックスシグマの活動に従事し、複雑なプロジェクトや複数のプロジェクトを同時に管理します。

マスターブラックベルト(Master Black Belt)

ブラックベルトの上位に位置する資格で、シックスシグマプログラム全体の戦略的なリーダーとして活動します。ブラックベルトやグリーンベルトを教育し、組織全体のシックスシグマの取り組みを監督します。

TQCは全員参加、シックスシグマはプロジェクトベース

TQCとシックスシグマは、アプローチや実施方法において以下のような違いがあります。

TQC

TQCは、組織全体で品質管理に取り組むことを強調しています。上層部から現場の従業員まで、すべてのレベルで品質向上に対する責任を持ちます。小集団活動やPDCAサイクル(計画、実行、チェック、改善)などを通じて、継続的な改善活動が行われます。

TQCは、製品やサービスの品質だけでなく、組織全体のプロセスや活動の改善を目指します。顧客満足度を重視し、顧客の要求や期待に応えることを目標とします。

シックスシグマ

シックスシグマは、特定の問題やプロセス改善のためのプロジェクトとして実施されます。各プロジェクトには明確な目標と期限が設定され、ブラックベルトなど専門のトレーニン

シックスシグマは、統計的手法を駆使してプロセスのばらつきを減少させ、欠陥を極限まで低減させることを目指します。DMAIC(定義、測定、分析、改善、管理)のサイクルを使用してプロセス改善を行い、データに基づいて意思決定を行います。

つまり、シックスシグマはプロセス、データ、統計などの「モノ」、TQCは全員参加、文化、意識などの「ヒト」にフォーカスを当てているといえるでしょう。

TQCの一手法としてのシックスシグマ

TQCの包括的なフレームワークの中で、シックスシグマを一手法として活用することは、非常に合理的な考え方です。TQCの広範な品質管理アプローチにおいて、シックスシグマのデータ駆動型のプロセス改善手法を取り入れることで、より具体的かつ効果的な改善を図ることができます。

TQCの中でのシックスシグマの役割

シックスシグマは、TQCの中で高度な統計的分析手法を提供し、データに基づいた意思決定を支援します。これによりプロセスのばらつきを減少させ、欠陥の低減を目指す具体的なアプローチを提供します。

また、TQCの全員参加型の文化の中で、シックスシグマのプロジェクトベースのアプローチを組み合わせることで、特定の問題に対する集中的な改善活動を実施できます。ブラックベルトなどの専門家がプロジェクトをリードし、具体的な目標を達成するための計画を実行します。

さらに、TQCの継続的改善(カイゼン)の精神とシックスシグマのDMAICサイクルを組み合わせることで、持続的な品質向上を図ります。定義、測定、分析、改善、管理のサイクルを繰り返し行うことで、プロセスの安定性と効率性を向上させます。

(まとめ)シックスシグマとTQCを融合させ品質の向上を目指しましょう

TQCは、全員参加型の文化と継続的改善を重視した包括的な品質管理フレームワークです。これに対して、シックスシグマは、TQCの中でデータ駆動型のプロセス改善手法として活用され、具体的な問題解決と欠陥低減を目指します。

そして、TQCとシックスシグマを組み合わせることで、組織全体の品質向上を効果的に実現することが可能です。シックスシグマの専門的なツールとTQCの全員参加型のアプローチを統合することで、持続的な成果を上げることができます。

特に日本企業においては、TQCとシックスシグマを組み合わせて実施することが、より効果的な品質管理を実現するために重要です。どちらか一方の手法だけでは、全体的な品質向上や組織の文化変革が難しい場合があります。

つまり、日本企業においては、TQCとシックスシグマのどちらか一方だけではなく、両者を効果的に組み合わせることが成功の鍵となります。TQCの全員参加型の文化と継続的改善のアプローチに、シックスシグマのデータ駆動型のプロセス改善手法を加えることで、組織全体の品質向上をより効果的に実現することができます。

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