町工場が廃業する原因と対策

2024.07.27

今、町工場は深刻な危機に陥っています。というのも、町工場の廃業が急激に多くなっているからです。これには様々な原因がありますが、多くの場合、利益はきちんと出ているのに廃業をせざるを得ないという状況になっているのです。

ここでは、町工場の廃業の原因を分析し、廃業を少しでも減らすための対策について考えてみたいと思います。

町工場の廃業の原因

町工場の廃業については、以下のような要因や状況が影響しています。

経済的な要因

賃金や原材料費の上昇が経営を圧迫し、特に小規模な町工場では対応が難しい場合があります。また、特定の産業や製品に対する需要が減少すると、町工場の売上が減少し、経営が困難になることがあります。

技術的な要因

新しい技術や製造プロセスへの適応が困難な場合、競争力を失い、廃業に追い込まれることがあります。また、設備の更新ができない場合、生産効率が低下し、コストが増加します。

人材の問題

若い世代が町工場の経営を引き継がず、後継者不足により廃業することがあります。また、 日本の町工場では属人的な技術が多く、その技術が一人の職人に依存していることが、廃業の原因の一つになっています。熟練工の引退や不足により、技術やノウハウの継承が難しくなります。

経営の課題

効果的なマーケティング戦略が欠如していると、新規顧客の獲得が難しく、売上が伸びないことがあります。また、小規模な町工場では、必要な資金を調達するのが難しく、運転資金の不足が経営を圧迫することがあります。

社会的要因

地域全体の経済が衰退すると、町工場もその影響を受け、経営が困難になることがあります。また、地域の人口減少により、労働力の確保や地元の顧客基盤が減少します。

若い人が「モノづくり」に関心を持たなくなったのも原因の一つ

若い人が「モノづくり」に関心を持たなくなったことも、町工場の廃業の一因となっています。この現象にはいくつかの要因が考えられます。

労働環境のイメージ

町工場や製造業の労働環境は厳しい、長時間労働が多い、給与が低いといったイメージが強く、若い人が敬遠しがちです。

デジタルネイティブの影響

現代の若者はデジタル技術やITに慣れ親しんでおり、デジタル関連の職業に魅力を感じることが多いです。

教育の変化

学校教育での工業教育や技術教育の機会が減少しており、モノづくりの楽しさや重要性を感じる機会が少なくなっています。

キャリアパスの不透明さ

町工場や製造業でのキャリアパスが明確でないため、将来の見通しが立てにくいことが原因となっています。

社会の価値観の変化

現代の社会では、物質的な豊かさよりも情報やサービスに価値を見出す傾向が強まっており、製造業の魅力が相対的に低くなっています。

会社は利益が出ているのに跡継ぎがいない場合もある

会社は利益が安定して出ているのに、子供が後を継ぐのを嫌がるケースもあります。これについても考えてみましょう。

次世代の意欲不足

子供や若い世代が家業を継ぐことに興味や意欲を持たないケースが多いです。現代の若者は、自分の興味や適性を重視し、家業以外のキャリアを選ぶ傾向があります。

労働環境や生活の不安

中小企業や町工場の仕事は一般的に長時間労働で、それが肉体的に厳しい場合、若い世代がそのような労働環境を敬遠することがあります。また、安定した収入や生活の見通しが不透明な場合も、継ぐことに消極的になります。

親世代との価値観の違い

親世代と子世代の間で仕事に対する価値観や働き方の違いがある場合、コミュニケーションや理解が難しくなり、跡を継ぐことに対する意欲が削がれます。

M&Aや会社統合で中小企業という立場から脱却する必要

M&A(企業の合併・買収)や会社統合は、中小企業が抱える後継者不足や経営課題を解決する一つの有力な手段です。これにより、規模の拡大や経営資源の最適化を図り、競争力を強化することができます。

経営資源の拡充

資金、技術、人材、顧客基盤などの経営資源を拡充し、経営の安定化と成長を促進します。また、規模の経済を実現することで、コスト削減や生産効率の向上が期待できます。これにより、利益率の向上が図れます。

市場シェアの拡大

経営基盤を強化し、市場シェアを拡大することで、競争力を高めることができます。また、複数の企業が持つ技術やノウハウを統合することで、技術革新や新製品開発が進みやすくなります。

後継者問題の解決

後継者不足の問題を抱える企業にとって、M&Aや統合は、継承の問題を解決する一つの手段となります。

M&Aで考えなければならないこと

・文化の統合

企業文化の違いを理解し、統合プロセスにおいて文化の融合を図ることが重要です。企業間の価値観や働き方の違いを尊重し、円滑な統合を目指します。特にこれが出来ていないと「派閥」を生み、かえって厄介なことになります。

・従業員のケア

統合による従業員の不安や抵抗を軽減するためのコミュニケーションやサポートが必要です。従業員のモチベーションを維持し、円滑な移行を促進します。

・適切な相手企業の選定

経営戦略や企業文化が合致する相手企業を選定することが成功の鍵となります。慎重な調査と評価が求められます。

・法的・財務的な準備

M&Aや統合に伴う法的・財務的な手続きや準備を適切に行うことが重要です。専門家の助言を得て、リスクを最小限に抑えることが求められます。

・長期的なビジョンの共有

統合後のビジョンや戦略を明確にし、関係者全員が共有することが重要です。長期的な成長と持続可能性を目指すための計画を策定します。

若い世代に「モノづくり」の面白さを伝える

若い世代にモノづくりの面白さを伝えることも重要です。

現代的な働き方の導入

労働生産性の改善に取り組み、長時間労働の是正や、フレックスタイム制度、在宅勤務やテレワークなど、柔軟な働き方を取り入れることで、若い世代のニーズに応えます。

クリエイティブな環境の整備

ものづくりの現場にアートやデザインの要素を取り入れ、創造的で楽しい環境を作ることが、若者の関心を引きます。

学校との連携

学校教育の中で「ものづくり」を取り入れる授業やワークショップを行い、子供たちに実際に手を動かす楽しさを体験させます。

地域イベントの開催

地元の祭りやイベントで、町工場の製品や技術を展示・体験できるコーナーを設け、地域の人々にモノづくりの魅力を伝えます。

SDGs(持続可能な開発目標)への貢献

環境に配慮した製品開発や、地域社会に貢献するプロジェクトを通じて、モノづくりの社会的意義を訴求します。

異業種交流の促進

異業種の若手企業家やクリエイターとの交流イベントを開催し、新たなアイデアやネットワークを生み出します。

オンラインプラットフォームの活用

SNSやYouTubeなどのオンラインプラットフォームを活用し、ものづくりの楽しさや技術の魅力を発信します。

後継者育成と支援

若い世代に経験豊富な職人や経営者をメンターとしてつけ、実践的な指導やアドバイスを受けられる環境を整えます。

身内だけにこだわらずに、社員や外部の優秀な人間を後継者にする

「身内に継がせる」という固定観念を持たないことも、中小企業や町工場の未来を見据えた重要な考え方です。例えば親が自分の事業を子供に継がせることに固執することで、子供の自由な選択を妨げるだけでなく、企業の持続可能性にも悪影響を及ぼすことがあります。

経験豊富で優秀な外部人材を迎えることで、経営の安定性が向上し、企業の成長が期待できます。このような外部人材は、新しい視点やアイデアを持ち込むことで、企業の革新と発展を促進します。

また、社内外の人材を後継者として育成することで、特定の人物に依存するリスクを分散し、持続可能な経営が実現できます。

さらに、社内でのキャリアパスが明確になることで、社員のモチベーションが向上し、優秀な人材が育ちやすくなります。その結果、社内の優秀な人材を後継者にすることで、企業文化を継承しつつ、外部の新しい視点を取り入れることで、バランスの取れた経営が可能になります。

身内以外を後継者にする方法には以下のようなものがあります。

育成プログラム

社内でのキャリアパスを明確にし、後継者候補となる社員に対して、経営やリーダーシップに関するトレーニングを提供します。

ヘッドハンティング

他の企業や業界で実績を積んだ優秀な人材をヘッドハンティングし、後継者として迎える方法です。

コンサルタントの利用

企業再生や事業継承の専門家をコンサルタントとして招き、適切な外部人材の選定と導入をサポートしてもらいます。

戦略的パートナーシップ

経営資源を補完し合う企業との戦略的パートナーシップを構築し、双方の強みを活かした事業継承を行います。

買収後の経営継承

他企業を買収し、その経営者や幹部を自社の後継者として迎え入れる方法です。これにより、企業文化の融合やノウハウの共有が期待できます。

ファンドからの支援

事業承継を専門に扱うファンドから資金や経営ノウハウの提供を受け、後継者問題を解決します。

企業の持続可能性と成長を確保するためには、身内だけにこだわらず、社員や外部の優秀な人材を後継者として育成・登用することが不可欠です。これにより、新しい視点やアイデアが取り入れられ、企業の革新と発展が期待できます。柔軟な考え方と戦略的なアプローチで、企業の未来を切り拓いていきましょう。

(まとめ)町工場の廃業を食い止め、日本のモノづくりを守っていきましょう

町工場の廃業を減らし、地域のモノづくり文化を守るためには、古い世代の考え方を見直し、若い世代にモノづくりの楽しさや魅力をしっかりと伝えることが不可欠です。これにより、次世代の職人や経営者が育ち、町工場の未来が開けていくことでしょう。地域全体での支援と連携も大切にしながら、持続可能なモノづくりの文化を築いていきたいですね。

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