DXの製造業における事例集~中小企業を中心として
2024.07.29
製造業DXはかなり昔から行われていますが、今までのDXは現場の業務改善活動の延長線上にあるもので、限定的なものが主流でした。
しかし、近年では全社的、あるいは生産ライン、サプライチェーン全体をDX化し、最適化するのが主流となっており、CADやNCといった従来のDX化とはかなり様子が異なっています。また、人工知能を導入し、生産ラインや生産管理の知能化を図るのも特徴の一つです。
ここでは、大企業の製造業DXと中小企業の製造業DXの事例をいくつか挙げ、中小企業がDX化を推進するためのキーポイントについて考えてみたいと思います。
目次
- 大企業の製造業DX事例集
- IoTを活用した生産効率の向上
- AIを活用した品質検査の自動化
- サプライチェーンのデジタル化
- 顧客ニーズに応じた製品開発の迅速化
- 中小企業がDXを導入するうえでのキーポイント
- 明確な目標設定
- 経営層のコミットメント
- 適切な技術選定
- 人材育成
- プロセスの見直し
- 小規模からのスタート
- データの有効活用
- 持続可能なDX推進
- 社内外の協力体制
- 中小製造業のDX事例集
- 株式会社木村鋳造所
- 株式会社日東電機製作所
- 株式会社木幡計器製作所
- 日進工業株式会社
- 株式会社ヒサノ
- 株式会社NISSYO
- 武州工業株式会社
- 製造業DXは「ものづくりそのもの」のDX化が重要
- 生産工程の最適化
- 生産計画の最適化
- 品質管理の強化
- 持続可能な生産体制の構築
- (まとめ)製造業DXは単なるペーパーレス化ではありません。
大企業の製造業DX事例集
大企業の製造業DXの事例をいくつかご紹介します。これらの事例は、技術革新、効率向上、そして市場拡大を目指して実施された取り組みです。
IoTを活用した生産効率の向上
村田製作所は、世界的な電子部品メーカーとして、多品種少量生産の課題に直面していました。具体的には、生産ラインの効率化が求められていました。
そこで、IoTセンサーを各生産ラインに導入し、稼働状況や生産データをリアルタイムで収集し、クラウドベースの生産管理システムを採用し、データを一元管理するようにしました。そして、収集したデータでAIによるデータ分析を行い、予測保全や生産計画の最適化を実現しました。
その結果、生産ラインの稼働率が向上し、ダウンタイムが20%削減されました。また、在庫管理が効率化され、在庫コストが15%削減されました。さらにリアルタイムのデータ分析により、品質管理の精度が向上しました。
AIを活用した品質検査の自動化
YKKは、ファスナー製造において目視検査に依存していたため、不良品の検出漏れが発生していました。
そこで、高解像度カメラとAI画像認識技術を導入し、ファスナーの品質検査を自動化しました。そして、過去の検査データをAIに学習させ、検出精度を向上させました。
その結果、不良品の検出精度が98%に向上し、出荷後のクレームが大幅に減少しました。また、人手による検査作業が削減され、コストが30%削減されました。さらに、検査速度が向上し、生産ラインのスループットが増加しました。
サプライチェーンのデジタル化
マブチモーターは、サプライチェーン全体の透明性と効率性が低く、納期遅延や在庫過多が問題となっていました。
そこで、取引先と連携したデジタルプラットフォームを構築し、リアルタイムでの情報共有を実現しました。このプラットフォームにはブロックチェーン技術が活用され、取引データの透明性と信頼性を確保しました。
その結果、サプライチェーン全体の可視化が進み、納期遵守率が95%に向上しました。また、在庫管理の精度が向上し、在庫コストが20%削減されました。さらに取引先とのコミュニケーションが円滑になり、供給チェーンの柔軟性が向上しました。
顧客ニーズに応じた製品開発の迅速化
ユニ・チャームは、多様化する顧客ニーズに迅速に対応するため、新製品の開発サイクルを短縮する必要がありました。
そこで、顧客からのフィードバックを収集するためのデジタルツール(アンケートアプリやSNS分析)を導入しました。また、3Dプリンティング技術を活用し、試作品の迅速な作成とテストを行うようにしました。
その結果、新製品の開発期間が50%短縮され、顧客のニーズに迅速に対応できるようになりました。また、顧客満足度が向上し、リピーター率が増加しました。さらに、製品の市場投入までの時間が短縮され、競争力が強化されました。
中小企業がDXを導入するうえでのキーポイント
中小企業がDXを導入する際に成功するためのキーポイントを以下にまとめます。
明確な目標設定
会社全体でDXの目的や期待する成果を明確にし、全社員に共有します。これにより、従業員がDXの意義を理解し、協力しやすくなります。また、売上の向上、コスト削減、品質改善など、具体的かつ測定可能な目標を設定します。
経営層のコミットメント
経営層がDXの重要性を理解し、積極的に推進する姿勢を示します。それに基づいて勇気を持って必要な資金、人材、時間を確保し、DXプロジェクトに投資します。
適切な技術選定
自社の業務プロセスや課題に適した技術を選定します。IoT、AI、クラウド、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、必要な技術を見極めます。このとき、信頼できる技術ベンダーやパートナーを選び、導入・運用サポートを受けます。
人材育成
社員が新しい技術やシステムを使いこなせるように、トレーニングや教育プログラムを実施します。また、DXを推進するための専門知識を持つ人材を採用するか、既存の社員を育成します。
プロセスの見直し
DXを導入する前に、現行の業務プロセスを見直し、無駄や非効率を排除します。この作業は重要なため、慎重に行いましょう。また、新しいプロセスやシステムへの移行を円滑に進めるための変革マネジメントを行います。
小規模からのスタート
まずは小規模なプロジェクトから始め、成功事例を積み重ねます。成功体験を通じて社内の信頼を得て、徐々に拡大します。そして、パイロットプロジェクトの結果をもとに、必要な調整や改善を行います。
データの有効活用
業務のデジタル化に伴い、収集したデータを活用して、意思決定や業務改善に役立てます。また、データの品質、セキュリティ、プライバシー保護を確保するためのガバナンス体制を構築します。
持続可能なDX推進
DXは一度の導入で終わるものではなく、継続的に改善と進化を続けることが重要です。DXの進捗や成果を定期的に評価し、必要に応じて戦略や施策を見直しましょう。
社内外の協力体制
各部署間での連携を強化し、DX推進に向けた協力体制を整えます。また、技術ベンダーやコンサルティング企業、他の企業とのパートナーシップを活用し、知識やリソースを共有します。
これらのキーポイントを押さえることで、中小企業はDXの導入を効果的に進め、競争力を強化することができます。
中小製造業のDX事例集
株式会社木村鋳造所
木村鋳造所では、IoTやAIを活用したスマートファクトリーの実現に取り組んでいます。例えば、鋳造プロセスのデータをリアルタイムで収集・分析し、品質の向上や生産効率の改善を図っています。また、デジタルツイン技術を用いて、シミュレーションによる設計・製造プロセスの最適化を行っています。
株式会社日東電機製作所
日東電機製作所は、クラウドベースの生産管理システムを導入し、各工程の可視化と生産スケジュールの最適化を実現しています。これにより、生産リードタイムの短縮と在庫管理の効率化を達成しました。
株式会社木幡計器製作所
木幡計器製作所は、IoTセンサーを製造ラインに導入し、設備の稼働状況や製品の品質データをリアルタイムでモニタリングしています。これにより、設備のダウンタイムを減少させ、製品の品質向上を図っています。
日進工業株式会社
日進工業は、ビッグデータとAIを活用して、生産ラインの効率を最大化しています。具体的には、予知保全システムを導入し、設備の故障予測とメンテナンスの最適化を実現しました。また、データ分析による生産プロセスの改善も行っています。
株式会社ヒサノ
ヒサノは、クラウド型のERPシステムを導入し、業務プロセスの自動化と統合を進めています。これにより、業務の効率化とデータの一元管理を実現し、迅速な意思決定が可能になりました。
株式会社NISSYO
NISSYOは、デジタルツイン技術を利用して、製品設計と製造プロセスのシミュレーションを行っています。これにより、製品の開発期間の短縮と品質の向上を実現しています。また、IoT技術を用いた設備管理の最適化にも取り組んでいます。
武州工業株式会社
武州工業は、データ駆動型の製造プロセスを導入し、生産ライン全体の効率化を図っています。具体的には、ビッグデータとAIを活用して、生産計画の最適化と品質管理の強化を行っています。また、スマートファクトリーの実現に向けた取り組みも進めています 。
これらの企業は、デジタル技術を活用して生産性や品質の向上を実現し、競争力を高めています。各企業の取り組みは、他の中小企業にとっても参考になるでしょう。
製造業DXは「ものづくりそのもの」のDX化が重要
生産工程の最適化
各企業は、IoTセンサーやビッグデータ分析を活用して生産工程のリアルタイムモニタリングを実施し、工程全体の効率化を図っています。例えば、設備の稼働状況や製品の品質データをリアルタイムで収集・分析することで、設備のダウンタイムを減少させ、製品の品質向上を実現しています。
生産計画の最適化
クラウドベースの生産管理システムやERPシステムを導入し、生産計画やスケジュールの最適化を行っています。これにより、生産リードタイムの短縮や在庫管理の効率化が可能となり、迅速な意思決定が行えるようになっています。
品質管理の強化
AIやデジタルツイン技術を活用して、製品の品質管理を強化しています。製品の製造プロセスをシミュレーションし、品質の向上や欠陥の早期検出を実現しています。また、予知保全システムを導入し、設備の故障予測とメンテナンスの最適化を行っています。
持続可能な生産体制の構築
デジタル技術を活用して、持続可能な生産体制の構築にも取り組んでいます。これには、エネルギー効率の改善や廃棄物の削減など、環境に配慮した生産プロセスの最適化が含まれます。
(まとめ)製造業DXは単なるペーパーレス化ではありません。
以上、製造業DXの事例をいくつか見てきました。
これらの取り組みにより、企業は生産性を向上させるだけでなく、品質向上やコスト削減を実現し、競争力を高めています。また、これらの成功事例は他の中小企業にとっても非常に参考になるでしょう。
そして、製造業DXは単なるペーパーレス化ではありません。モノづくりの本質の知能化・自動化です。今まではそれを実現するのが難しかったのですが、中小企業にも少しずつ普及が進んでいます。
日本の製造業の復活のカギの一つがこの製造業DXです。今後の取り組みに期待しましょう。
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