図面の電子化のメリットとデメリット~レガシーとしての紙図面の取り扱い方

2024.02.08

皆さんの会社、歴史は長いですか?

歴史の長い製造業は過去の技術資産を「図面」という形で多く保有しています。ただし、その図面は「紙」に書かれていることが多くあります。そして、歴史が長ければ長いほど、その「紙図面」の量は多く、せっかくの技術資産を活かしきれていないことが多々あります。ここでは、図面の電子化のメリットとデメリットについて解説し、技術資産としての紙図面の活かし方について考えてみたいと思います。

図面の電子化とは?

図面の電子化とは、今まで紙に手書きで書かれていた図面をコンピュータの支援によって作成し、デジタル化することです。この「電子化」には主に二つの意味があります。

1つは新しく図面を起こす際に手書きで行わず、コンピュータ上で作図を行うという意味で、具体的にはCAD・CAM・CAEシステムを使用して作図を行います。現在ではほとんどがこの方法によって行われ、作図だけではなく、機構の干渉チェックや強度計算、あるいは電子出図、図面管理、プロジェクト管理まで行えるようなシステムが開発され、利用されています。

もう一つは、すでにある手書きの図面(紙図面)を電子化するという意味です。冒頭でも述べたように、歴史の長い製造業は、手書きの時代が長いために、大量の紙図面を保有しています。そして、多くの場合、これら大量の紙図面は整理がなされていないか、整理が追い付かず、せっかくの技術資産である図面を活かしきれていないという現状があります。

図面電子化のメリット・デメリット

それでは、図面電子化のメリット・デメリットについて考えてみましょう。

メリット

管理がしやすい

電子化された図面の1番目のメリットは、「管理がしやすい」ことです。紙図面であれば、コンピュータ上に電子データとして保管することが出来るので、場所を取りません。また、図面の修正や変更が生じた場合でも、CADによる図面の修正が原図データに即時に反映されるため、紙ファイルの差し替えのような人手による煩雑さがありません。また、図面管理上のミスも少なくなります。

設計業務の負担が減る

2番目のメリットは、「設計業務の負担を軽減できる」ことです。図面作成に当たっては考えなければならないことがたくさんあります。この「図面作成時の考慮」のことを「設計」というのですが、この「設計」の成果が「図面」という形で表れていて、製造業の本質的な部分であり製造業の競争力の源泉の一つです。したがって、この設計業務をいかに効率よく進めるかが製品の製造・開発を進めるうえで重要なポイントの一つです。

設計時に考えなければならないことはたくさんあり、コストや品質はもちろん上述したような機構の干渉チェックや、強度計算、製造のしやすさなどがあります。そして、これらの、「設計考慮事項」を考えることを近年のCADシステムはある程度支援してくれるのです。そのため、電子化された環境で設計業務を進めることは効率化を図るうえで近年当たり前になっているのです。

変更・修正が容易

3番目のメリットは「図面の変更や修正が自在にできる」ということです。このメリットは「過去の図面を有効利用できる」ということでもあります。特に「リピートオーダーだけど完全に同じではない」という場合に、図面を電子化しておけば、元の図面を最低限変更するだけで、顧客のニーズに迅速に対応できます。また、図面を完全にゼロから起こすこともなくなり、コストの削減にもつながります。

そして、このような理由からレガシーとしての紙図面を電子化しておくことは、過去の技術資産を有効に生かすことにつながるのです。

デメリット

それでは、図面電子化のデメリットを簡単に考えてみましょう。特に紙図面を電子化する際には、後述するように、人手と手間とコストがかかる場合があります。そのため、紙図面の電子化の際には、やり方を工夫する必要があります。

また、検図の際にはCAD図面をモニター上で行うよりも、紙図面の方がやりやすい場合もあります。検図する人の「慣れ」の問題もありますが、大規模な組立図や、複雑な図面、また、指示の多い図面などは紙にプリントアウトした方が、効率が上がることもあります。

要は、紙の図面と電子データのそれぞれの特徴を良くつかんで、効率よく設計業務や図面管理を行うことが重要となります。

紙図面を電子化する方法の具体例

次に蓄積された紙図面を電子化する方法について述べます。

スキャナ→ベクタ変換→電子化ファイルのプロセスで処理する方法

この方法は、紙図面をスキャナで電子化し、そのデータをCADシステムで使用できるようにフォーマット変換をおこない(ベクタ変換)、この変換されたデータを整理しデーターベースに登録するという方法です。

メリットは、大量の紙図面を高速に電子化でき、作業を半自動化できることです。また、近年ではベクタ変換システムも画像の認識度が上がっており、ひと昔前に比べると作業効率が向上しています。

デメリットとしては、紙図面にシミや汚れがある場合それを誤認識してしまい、かえって作業の効率が低下してしまいます。また、組み立て図や全体図に用いられるA1やA2の大きさの図面を取り込むことのできるスキャナは比較的高価です。更にシステムの性能は上がってはいるものの、やはり複雑な形状や、指示の多い図面は誤認識する頻度が高くなります。

人手でトレースする方法

もう一つの方法は紙の図面を人手でCADに入力していく方法です。つまり、人間が紙図面を読み取って、CADを使って作図をしていく方法です。この作業を行う人間のことを「トレーサー」といいます。

メリットとしては、複雑な図面や指示の多い図面でもトレーサーの熟練度によっては、きちんとトレースが可能なことです。また、スキャナなどのハードウェアやベクタ変換システムを導入する必要がなく、追加の設備投資が不要です。

デメリットとしては、トレーサーの習熟度が低いとトレース漏れが発生します。また、トレースのスピードはトレーサーの習熟度に依存するために、一般的にスキャナを用いるよりも遅いのが普通です。さらに、トレーサーに図面を見られるために、秘密保持の観点から、トレーサーの人選には注意が必要です。特に外部の派遣社員やアルバイトにトレースをさせる場合にはきちんと秘密保持契約を結ぶ必要があります。

現実的な紙図面の電子化の方法

以上見てきたように、スキャナを使う方法にも、トレーサーを使う方法にそれぞれメリット・デメリットがあります。そこで、現実的にはこの二つの方法を組み合わせて使用するのが普通です。

つまり、紙図面が大量にある場合には、効率よく電子化するためにとりあえずスキャナを使って電子化を行い、そのうえでトレーサーを使って修正と検図を行うのが最も効率がいいと考えられます。

また、複雑な図面や組立図などは、最初からトレーサーによってCADに作図・入力するこことも考えられるでしょう。部品図はスキャナを使ったうえで、トレーサーによって修正・検図をおこない、その電子化された部品図を使ってCAD上で、紙図面の組立図を作っていく(組んでいく)というのが一般的であろうと考えられます。

いずれにしても、状況に応じて柔軟に臨機応変に対応するのが紙図面の電子化を効率よく進めるうえで重要です。

電子化した紙図面を活かすための図面管理システム

次に、この電子化された図面を活かすための図面管理システムについて考えてみたいと思います。

紙図面も重要な「技術資産」

上述したように、紙図面を電子化することにより、様々なメリットがあります。「電子化されていないから」という理由で紙図面を「技術資産」として生かしきっていない製造業は

多くあります。

また、発注元からの図面を電子化データで受け取らず、紙で受け取って保管している製造業も、電子化データで図面を受け取るようにお願いしてみるか、許可を取ったうえで、図面を電子化してみる試みは必要だと思います。そうすることによって、発注元にもメリットをもたらすと思われます。

図面の電子化は時代の流れです。取引先とも協力して電子化を進めていきましょう。

検索機能の重要性

最後に、このような図面の電子化の流れの中で、中小製造業が図面の電子化の恩恵をより受けるために図面管理システムの重要性について少し触れたいと思います。

中小製造業が図面管理システムを導入する際には、図面の「検索機能」を重視すべきだと考えられます。過去の紙図面であっても適切に電子化されていれば、図面を効率的に検索し、「技術資産」として生かすことで、設計や製造の効率を上げ、ビジネスチャンスをつかむことができます。

近年では、図面に対してAIを使って効率的に検索できるものも登場しています。紙図面の電子化がある程度進んだら、このような検索機能が充実している図面管理システムを導入するのも、より電子化の効果を高めるものとしてお勧めできるものです。

(まとめ)レガシーとしての紙図面も重要な技術資産です

以上、電子化時代における紙図面の取り扱いについて考えてきました。過去の図面を良く見ていると、面白いアイデアや発想に気づかされることが多くあります。また、過去の図面を多少手直しするだけで現代に通用する場合が多々あります。

そのような時、図面の電子化が適切に行われていないと、新しく図面を起こす必要があり、時間の無駄になってしまいます。長く培われてきた「技術」がせっかく「図面」という形で残っているのですから、効率よく紙図面の電子化を進め、レガシーとしての技術資産の活用を進めたいものです。

そして、電子化した紙図面を更に生かすため、検索機能の充実した「図面バンク」の導入を是非ご検討ください。ご相談お待ちしております。

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