機械図面の検図とは

2024.08.14

機械設計を行っていると必ず「検図」が行われます。検図とは図面を書いた人以外の人が図面をチェックすることで、大変重要な工程です。

ここでは、検図とは何か、検図のチェックポイント、リーダレベルでのチェックポイントについて解説し、最後に検図作業をCADでやるか、紙図面でやるかについて考えてみたいと思います。

検図とは

「検図」とは、製造の前に図面をチェックし、誤りや不備を確認する作業を指します。製造業では、図面に基づいて製品や構造物が作られるため、図面に誤りがあると大きなトラブルにつながります。そのため、検図は非常に重要なプロセスです。

検図のチェックポイント

寸法とスケールの確認

図面上の寸法が正確であるか、図面のスケールが正しく設定されているかを確認します。また、各部品や要素の寸法が、設計の意図に沿っており、他の部品との整合性が保たれているかを確認します。

形状と配置

図面に描かれている形状が正確であり、設計意図に一致しているかを確認します。また、各部品や要素が適切な位置に配置されているかを確認します。

公差の確認

各部品の公差が適切で、製造可能であるかを確認します。公差が、組み立てや機能に支障をきたさない範囲で設定されているかを確認します。

材質と表面処理

使用する材料が正しく記載されているかを確認します。また、必要な表面処理や仕上げが指示されているかを確認します。

部品番号とリスト

各部品に対応する部品番号が正確であるか、部品リストと一致しているかを確認します。また、必要な部品がすべてリストに含まれているかを確認します。

組み立て方法の確認

図面上で指示されている組み立て順序や方法が、実際に実行可能であるかを確認します。また、組み立て後の部品同士の干渉がないかを確認します。

接合部と溶接指示

接合部や溶接箇所が明確に指示されているかを確認します。接合方法が適切で、強度や耐久性に問題がないかを確認します。

注記や備考の確認

図面に記載された注記や備考が、製造や施工に必要な情報を含んでおり、誤解を招く表記や欠落がないかを確認します。

法規・規格の遵守

図面が関連する法規や業界標準、認証に従っているかを確認します。

製造・施工現場での実現性

図面に基づいて実際に製造が可能であるかを確認します。

これらのチェックポイントをしっかりと確認することで、図面に潜む問題を事前に発見し、製造や施工のトラブルを防ぐことができます。また、検図は複数人で行うことが一般的で、異なる視点からのチェックを行うことで、ミスの発見率が高まります。

プロジェクトリーダーレベルでのチェックポイント

プロジェクトリーダーレベルでの検図チェックポイントは、技術的な内容だけでなく、プロジェクト全体の進行状況やリスク管理も含めた包括的な視点で行われます。

図面の目的と要件の確認

図面がプロジェクトの全体要件や仕様書に適合しているかを確認します。また、図面が設計者の意図を正確に反映しており、プロジェクトの目標達成に必要な要素が全て含まれているかを確認します。

図面の一貫性と統一性

図面がプロジェクトの他の図面と一貫したスタイルやフォーマットで作成されているか、全体的に統一感があるかを確認します。また、図面のバージョンが最新であり、過去のバージョンと比較して変更内容が正しく反映されているかを確認します。

リスク管理と安全性

図面上で潜在的なリスクや安全性に関する問題がないかを確認します。特に、設計変更によるリスクが他のプロジェクト要素に影響を与えないかをチェックします。図面が関連する法規制や業界標準、認証、コンプライアンスに準拠しているかを確認します。

コストと工期の管理

図面に基づく設計変更や追加作業がプロジェクトの予算にどのような影響を与えるかを確認します。コスト増加の要因が含まれていないかをチェックします。また、スケジュール管理: 図面の完成度や修正内容がプロジェクトの工期に影響を与える可能性がないか、スケジュールに遅延が生じないかを確認します。

技術的な整合性の確認

図面上の設計が技術的に実現可能であり、現場での製造に問題がないかを確認します。特に、設計が実現不可能な仕様になっていないかをチェックします。また、他のシステムや部品とのインターフェース部分が正しく設計されているか、接続や組み立てに問題がないかを確認します。

クライアントの承認

クライアントからの承認が必要な図面について、承認を得ているか、必要な修正が指示されているかを確認します。また、クライアントへの提出前に、図面の最終レビューが行われ、全てのポイントがクリアされているかを確認します。

最終確認と提出準備

図面がプロジェクトの全体計画に沿った形で完成し、提出準備が整っているかを確認します。最後に、図面データのバックアップが確実に取られているか、予備データが安全に保管されているかを確認します。

CADでできる検図作業

CADソフトウェアを使用した検図作業は、従来の紙ベースの図面と比べて効率的かつ精度の高いチェックが可能です。以下は、CADソフトウェアで実行できる主な検図作業の一覧です。

寸法の自動検出と確認

CADでは、図面に記載されている寸法を自動的に計測し、正確かどうかを確認できます。寸法チェッカー機能を使って、指定された公差範囲内にあるかどうかをチェックします。

レイヤー管理

異なる部品や図面要素をレイヤーごとに分けて表示・非表示を切り替えることで、特定の要素を集中して検図できます。レイヤー間の干渉をチェックし、重複や不整合がないかを確認します。

重複エンティティの検出

図面内での重複したラインやエンティティを検出し、不要なエンティティを削除することで、図面の整合性を保つことが可能です。

干渉チェック

3D CADでは、異なる部品同士の干渉をシミュレーションし、製品の組み立て時に問題が発生しないかを確認できます。つまり自動干渉チェック機能を使って、物理的な干渉やクリアランスの不足を検出できます。

アノテーション(注釈)の確認

寸法線や注釈、テキストが正しい場所に配置されているか、図面全体に統一性があるかを確認できます。フォントサイズやスタイルが規定通りであるかをチェック可能です。

属性データの確認

CADデータに付随する属性情報(部品番号、材質、仕上げなど)が正しく設定されているかを確認できます。BOM(部品表)との連携を通じて、図面に記載された情報が正しいかをチェック可能です。

図面の自動比較

異なるバージョンの図面を自動的に比較し、変更点をハイライト表示して確認できます。設計の変更履歴を追跡し、誤りや漏れがないかを確認できるからです。

公差解析

公差を設定して、製造時に発生する可能性のある寸法誤差が最終製品の品質にどう影響するかを解析可能です。公差範囲内での動作や組み立てが問題ないかを確認できます。

ビューのカスタマイズ

特定の角度や拡大縮小でビューを設定し、詳細な部分を拡大して検図できます。これにより断面図を生成して内部構造や部品の配置を詳細に確認することができます。

紙でやる?CAD上でやる?

紙での検図作業のメリット

全体のレイアウトや配置が一目で確認しやすく、図面全体を俯瞰しやすいです。また、手書きでメモやコメントを追加でき、直感的に図面をチェックできます。さらに、図面を広げて複数人が同時に確認できるため、現場でのチェックや打ち合わせがしやすいです。

紙での検図作業のデメリット

寸法や細部の確認が手作業となるため、精度がCADほど高くないです。また、誤りを発見しても、修正には図面を引き直す必要があり、時間がかかります。さらに、紙図面はかさばりやすく、保管や管理にスペースと手間がかかります。

CAD上での検図作業のメリット

寸法の正確さや整合性を自動で確認でき、エラーの検出が容易です。また、図面上の誤りを即座に修正し、更新された図面を再度確認できます。さらに、デジタルデータとして保管でき、検索や共有が簡単で、スペースも取りません。そして、自動干渉チェックや図面比較機能など、手作業では難しい検図を効率的に行えます。

CAD上での検図作業のデメリット

図面全体を確認するには、画面をスクロールしたりズームしたりする必要があるため、全体の把握がしにくいことがあります。また、 CADソフトの操作に慣れていないと、効率的に作業を進めるのが難しい場合があります。高機能なCADソフトウェアや専用ハードウェアの導入にはコストがかかります。

どちらを選ぶべきか?

複雑なプロジェクトや精度が要求される場合は、CADでの検図が有利です。一方、現場や対面での打ち合わせが頻繁に行われる場合は、紙図面が便利です。また、デジタル化の進んでいる環境では、CADによる検図が効率的です。

(まとめ)検図は図面の品質をきめる大変重要な作業です。

以上、検図について見てきました。

検図がきちっとできていないと図面の品質が低下し、製造部門に迷惑をかけてしまいます。その結果「こんなもん作らせんのか!!(怒)」とか、「ちゃんと図面書け!!(怒)」とか文句を言われます。(苦笑)

検図はきちんとやりましょう(汗)。自分でも上記で述べたような項目に注意して自己検図を行うことで、このような文句は、かなり少なくなるはずです。頑張りましょう!!

「図面バンク」は中小企業に向いたシンプルな図面管理システムです。比較的ローコストで導入可能なので、是非一度ご検討ください。よろしくお願いいたします。