図面の保存の必要性
2024.08.21
図面はどのくらいの期間保管すればいいのでしょうか?
図面の保管にはスペースとコストがかかります。しかし、様々な理由で一定期間保管しければならないことが多々あります。また、図面のデジタル化にも一定のコストがかかります。賢いデジタル化とはどうすればいいでしょうか?
ここでは、図面の様々な保管形態について簡単に解説し、法律や規格で規定されている保存期間について述べ、最後に賢いデジタル化のヒントについて考えてみたいと思います。
目次
図面の保存の形態
デジタルファイルとして保存する場合
・PDF形式:広く使われており、図面の形式が崩れることなく保存できます。
・DWG/DXF形式:AutoCADなどのCADソフトウェアで使われるファイル形式で、編集可能な状態で保存できます。
・JPEGやPNGなど、図面の画像として保存できますが、詳細な編集には適していません。
クラウドストレージの利用
Google DriveやDropboxなどのクラウドサービスを利用して、図面をオンラインで保存・共有することができます。これにより、どこからでもアクセスできるメリットがあります。
外部ストレージ
USBメモリや外付けハードドライブに保存することで、物理的にデータを保管する方法です。
印刷物の保存
物理的な図面をプリントアウトし、適切に保管することで長期間の保存が可能ですが、デジタルデータの方が劣化も少なく場所も取りません。
図面の保存方法は用途や必要に応じて選ぶと良いでしょう。どの方法もバックアップを取ることをおすすめします。
図面の保存期間
保存期間を決定する際には、関連する法律や業界標準、企業ポリシーなどを考慮することが重要です。
法律や規制による要件
・建設業界:建設図面は、建物の保守や修理のために長期間保存する必要がある場合があります。たとえば、建物が50年後にリノベーションや改修される可能性があるため、図面は少なくとも建物の寿命の間は保存されるべきです。
・医療業界:医療関連の図面やデータも、患者の治療履歴として長期間保存する必要があります。具体的な保存期間は地域の法律や規制によって異なります。
企業のポリシー
企業によっては、図面や設計データの保存期間を定めたポリシーを持っていることがあります。例えば、プロジェクトが完了してから一定期間(例えば5年や10年)保存し、その後にアーカイブまたは廃棄するというポリシーがあることがあります。
プロジェクトの要件
特定のプロジェクトやクライアントの要求によっても、図面の保存期間が決まることがあります。たとえば、大型プロジェクトの場合は、プロジェクト終了後に数年間保存することが求められることがあります。
製造業における図面の保存期間
製品保証とリコール
製造業では、製品に関する設計図面や仕様書は製品の保証期間中やリコール対応のために保存する必要があります。これには通常、製品が市場に出てから数年間の保存が推奨されることがあります。
業界規制
特定の業界(例:航空宇宙、医療機器など)では、法規制や規格に基づいて、図面や設計データをより長期間保存する必要があります。たとえば、航空機の部品に関するデータは、部品の使用寿命や法規制に基づいて数十年にわたって保存されることがあります。
企業のポリシー
多くの製造業者は、図面や設計データの保存に関して独自のポリシーを持っています。これには、製品のライフサイクルや将来的なサポート、再生産のための参考などを考慮し、一般的に10年から20年程度保存するケースが多いです。
品質管理とトレーサビリティ
製造業では、品質管理やトレーサビリティのために、図面や設計データを長期間保存することが求められます。これにより、製品の品質問題や不具合が発生した際に、過去の設計データにアクセスして原因を追跡することができます。
プロジェクトや契約の要件
特定のプロジェクトや顧客契約によっても、図面の保存期間が定められていることがあります。プロジェクト終了後の数年間保存することが求められる場合があります。
デジタルアーカイブ
デジタルデータの場合、長期間にわたってアクセスできるようにするための適切なバックアップとデータ移行の戦略が重要です。デジタル化された図面やデータは、物理的な劣化を心配せずに長期間保存できますが、ファイル形式や保存媒体の変化に対応するためのメンテナンスが必要です。
製造業では、これらの要因を考慮して図面の保存期間を決定し、適切な管理とバックアップを行うことが重要です。
PL法やISO、CEマーキングとの関係
PL法(Product Liability Law)、ISO規格、CEマーキングについて、それぞれの図面や設計データの保存に関する要件を以下に示します
PL法(Product Liability Law)
目的:製品の欠陥によって消費者が損害を受けた場合の製造者の責任を規定する法律です。
保存要件:PL法自体には具体的な図面や設計データの保存期間に関する明確な規定はありませんが、製造者は製品の設計や製造に関する文書を適切に保管し、消費者の損害請求や法的な問題が発生した場合に対応できるようにすることが望ましいとされています。一般的には、製品が市場に出てから数年間(5年程度)保存することが推奨されます。
ISO規格
・ISO 9001(品質マネジメントシステム):
ISO 9001では、品質マネジメントシステムの一環として、設計データや図面を含む文書の管理が求められています。具体的な保存期間は規定されていませんが、文書の保存期間は企業のポリシーや業界のベストプラクティスに基づくべきとされています。
・ISO 13485(医療機器の品質マネジメントシステム):
医療機器の品質マネジメントシステムに関するISO 13485では、設計と開発の文書、図面、データについて、製品の寿命や規制要件に基づいて適切に管理し、必要に応じて長期間保存することが求められます。具体的な期間は規制や業界標準によりますが、通常は製品が市場に出た後も数年間保存することが推奨されます。
CEマーキング
CEマーキングは、製品がEUの安全基準や規制に適合していることを示すものです。CEマーキングに関連する規制では、製品の設計や製造に関する文書(図面、設計仕様書など)を一定期間保存することが求められています。たとえば、EUの機械指令(2006/42/EC)では、製品が市場に出た後、最低でも10年間は文書を保存することが推奨されています。
それぞれの規制や標準は、製品の種類や業界によって具体的な保存期間が異なるため、関連する法規制や標準に基づいて適切な保存期間を決定することが重要です。また、企業内での文書管理ポリシーや業界のベストプラクティスも考慮する必要があります。
製造終了後の修理の期間
製造終了後に修理やアフターサービスが行われることが多いため、図面や設計データを最低でも5年から7年間は保管しておくことが推奨されます。これにより、必要な修理や部品交換に対応するための情報を確保できますし、長期的なサポートやリコール対応にも対応しやすくなります。
実際には、出図から10~15年程度保管しておくことで、製品の修理やアフターサービス、品質問題の対応に十分な時間を確保できます。これにより、長期的な製品サポートやリコール対応、将来の改修・再生産の際にも適切な情報が提供できるため、安心して対応することができます。また、法的要件や業界の規範に従って、保存期間を設けるのも良いでしょう。
デジタル保存のメリット
・スペースの節約:物理的な保管スペースを大幅に減らすことができます。
・アクセスの容易さ:デジタルデータは迅速に検索・アクセスできるため、必要な情報をすぐに取り出せます。
・バックアップと復旧:デジタルデータはバックアップを取りやすく、データ損失のリスクを低減できます。
・共有とコラボレーション:デジタル形式であれば、チーム内での共有やコラボレーションがスムーズに行えます。
デジタル化を進める際は、適切なバックアップ体制やセキュリティ対策も重要です。デジタルアーカイブの戦略をしっかりと構築し、将来的なニーズに対応できるようにすることが大切です。
ベクター化しないまでも、イメージデータのレベルでもやっておくべき
紙図面で保管してある図面は、最低限イメージデータとしてデジタル化しておくことで、基本的な保存と管理の効率化を図り、必要に応じてベクターデータ化することで、より詳細な編集や利用が可能になります。メリットは以下の通りです。
・基本的な保存とアクセス:イメージデータとしてデジタル化することで、図面の劣化を防ぎ、保存とアクセスの効率を上げることができます。
・段階的な対応:まずイメージデータで保存しておき、必要に応じて詳細な編集やベクター化が求められた場合に対応することができます。これにより、時間とリソースを効率的に使用できます。
・コストと労力の最適化:すべての図面を即座にベクター化するのはコストや時間がかかるため、まずはイメージデータで保管し、後からベクター化することで、必要な部分に集中できます。
・将来的な対応:製品の改良や追加情報が必要になった際に、イメージデータをベースにベクター化することで、更新作業を効率的に行うことができます。
このように、段階的に対応することで、図面の保存と管理がより効率的かつ効果的になります。
(まとめ)図面はできるだけデジタル化して残しておきましょう。
以上、図面の保存期間と効率の良いデジタル化について考えてきました。
多くの場合、デジタル化にはそれなりにコストがかかります。しかし規格や法律、会社のポリシーなどで規定されている期間、図面を劣化なく保存するにはデジタル化は大変有効な手段です。
ましてや図面は増え続けます。この増え続ける図面を効率よく保管管理するには、現状ではデジタル化をおこない、コンピュータの助けを借りて管理するのが最も効率の良い保存法だと考えられます。
紙で保管してある図面も、合間を見つけて、最低限イメージデータ化しておくことをお勧めします。
「図面バンク」は小さな会社のデジタル化を進めるために開発された図面管理システムです。シンプルで使いやすいので、是非一度お試しください。