現役機械設計者がオススメする図面ファイルのコツ5選
2024.01.29
目次
こんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
「図面を紙で保管しているが、いざという時に見たい図面が出てこない」
「数年前に納品したリピート案件の図面と見積もりが、なかなか見つからない」
こんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
今回は、図面バンクのコラム担当かつ、現役の機械設計者である筆者が、「図面ファイルのコツ5選」を紹介したいと思います。
私は産業用機器メーカーで10年以上、機械設計者としてさまざまなプロジェクトに関わってきました。その経験から「見たい図面が見つからない・・・」と悩み、試行錯誤で自分なりに図面のファイルの仕方を考えてきました。
「図面を紙で保管するときのポイントを知りたい」
「図面を探す時間や、リピート案件の見積もり時間を短縮したい」
こんな方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
図面の管理方法は、会社ごとに細かい部分は違うと思います。全部はマネできなくても、参考にできるところがあれば、ぜひ取り入れてくださると嬉しいです。
図面管理の必要性
図面の管理は、製造業にとって業務をスムーズに進めるための重要な項目です。
たとえば、数年前に受注した機械加工部品を再受注したときを考えてみましょう。図面がきちんと管理できれば、以前の案件の図面もすぐに見つかり、再見積もりの時間も短縮できるでしょう。
もし図面の管理が適切に行われていないと、様々な問題が発生します。
まず、必要な図面を見つけ出すのに多くの時間を要します。大量の資料や棚から目的の図面を探し出すのは、とても手間のかかる作業です。
さらに、図面を紛失した場合を考えてみましょう。お客様に再度元の図面を送付していただく必要が生じ、結果としてお客様の貴重な時間を無駄にしてしまいます。
このように、図面管理を適切にしないことにより、業務効率や顧客満足度の低下という悪影響をおよぼす可能性が出てきます。
社長の机の上に図面類がひたすら積み上がっている・・・なんてことはないでしょうか?
図面管理について考えることは、一見面倒で手間がかかります。しかし、図面管理がおろそかになっていると、図面を探す時間・見積もりを取り直す時間が余計にかかってしまう、ということになりかねません。この機会にぜひ、図面の管理について見直してみてはいかがでしょうか。
図面ファイルのコツ5選
図面管理のはじめの一歩は、図面をファイルに整理することから始まります。
「図面を整理するのが苦手」
「どこから手を付けていいかわからない」
こんな人は、次の5つをやってみるのがオススメです。
1. 案件ごとに図面をファイルする
まずは、案件ごとに図面を集めてファイルしましょう。ひとつの案件の図面が少なければ、お客様ごとにバインダーをひとつ使って、複数の案件を保存してもOKです。
設計会社さんの場合、原図は図面棚で保管されていると思います。出図の際に原図をコピーして複写図を作成します。そして、この複写図を案件ごとにバインダーにファイルします。
「原図をそのまま参照すればいいのではないか」と思うかもしれませんが、筆者は最初に原図をコピーして、複写図を案件管理に使うことをオススメします。
図面棚から原図を参照することは、デメリットが多いです。まず、図面棚は案件ごとに整理されていないため、欲しい図面を探しにくいです。また、図面棚から直接原図を参照していると、紛失のリスクもあります。さらに、図面棚は、原図の保管を目的としており、多くの場合デスクや加工現場から離れた場所にあります。そのため、そもそも図面棚に行くこと自体が時間のかかる面倒くさい行為なのです。
そもそも、JISにもとづく機械設計製図便覧では「原図の貸出しは、図面変更の場合以外は絶対に行ってはならない」とあります。製造現場に配布する図面や、案件管理のための図面は、本来複写して使うものという位置づけと言えます。
以上のことから、原図はあくまで図面の原本として保管することを目的としましょう。
出典:JISにもとづく機械設計製図便覧、2009年、p.17-115
2. 見積もりなどの補助資料も一緒にファイルする
案件ごとにファイルした図面と一緒に、案件の補助資料もファイルしましょう。たとえば、次のような資料が挙げられます。
・お客様からの要求仕様書
・見積書
・検査表
・材料表
・設計計算書
・その他、重要な取り決めなどが記載された資料
これらの資料を図面と一緒にファイルしておくと、
・数年前に受注した機械加工案件の見積もりをベースに、再見積もりの時間が短縮できる
・発注時に手配した材料がわかり、手配時間が短縮できる
・図面の改版時に設計計算書がすぐに参照でき、再設計の時間が短縮できる
などのメリットがあります。
3. 背表紙の表記ルールをそろえる
バインダーは、「受注日付 お客様 案件名」の順番に統一するなど、背表紙の表記ルールをそろえておきましょう。
こうすることで、「日付順に並べるなど、整理がしやすい」「背表紙を見たらどの案件の図面ファイルなのか一目でわかる」というメリットがあります。
表紙ではなく「背」表紙とした理由は、書類棚にしまったバインダーでまず目に付くからです。
「2024/1 A社 〇〇〇製造装置」のようにすべてのバインダーの表記がそろっていると、書類を探すストレスが低減できそうですね。
注意点としては、文字数は長すぎないようにしましょう。背表紙に収まらなかったり、文字が小さくなって見づらくなってしまいます。
4. インデックスを活用する
ファイルの中から見たい文書を探すとき、タブ状のインデックスがあれば探すのが簡単になります。図面や補助資料(見積書など)をファイルするときはインデックスをぜひ活用しましょう。
インデックスは、案件名や、書類の種類(部品図、組図、見積書など)、主要図面の図番などで分類するといいでしょう。
インデックスには、インデックスそのものが一枚の紙となり、そのままファイルできる仕切りカードタイプと、書類にタブを貼り付けるシールタイプがあります。
仕切りカードタイプの例:コクヨ 仕切りカード INDEX CARD
5山見出し、6山見出し、10山見出し、12山見出しと見出し数のバリエーションがあり、インデックスの材質もPP製、紙製があります。貴社の図面のファイル整理に適したタイプがきっと見つかると思います。
参考:仕切りカード INDEX CARD – コクヨS&T
シールタイプの例:コクヨ はかどりタックインデックス
あらかじめ折り目が付けられており、これに沿ってまっすぐ貼ることができます。また、傷めたくない書類向けに、シールをきれいにはがせるタイプのインデックスもあります。
参考:はかどりタックインデック
5. バインダーの保存場所を決めておく
図面や見積書などが保存されたバインダーは、保存場所を決めておきましょう。社内の一か所にまとめて保存することで、設計者、営業担当、加工者など、複数の部署の人が探しやすくなります。
バインダーの保存場所は、アクセスしやすい場所にしましょう。図面を探す時間が短縮できます。
「図面の保存場所なんて決めなくても、だいたいの場所は俺の頭の中に入っているよ」とお思いの社長さん、加工現場の管理者さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、図面を探す時間は1回1回は短くても、回数を重ねるとまとまった時間になります。1か月、2か月も経つと、数時間~数日のような時間になり、その間の社長さん・社員さんの時給換算だと実は大きなロスになっているかもしれないのです。
図面ファイル用のおすすめバインダー
ここでは、図面ファイル用のおすすめバインダーを紹介します。
結論:キングジムかコクヨがおすすめ!
筆者のおすすめは、キングジムかコクヨのA4バインダーです。
この2つのメーカーをすすめる理由としては、以下の3つがあります。
1. 文具大手で地域の文房具屋さんでも入手しやすい
2. 両開きタイプがあり、左右両方から書類を抜き差しできる
3. 表紙カバーが頑丈で、長期間の保存に向いている
バインダーのサイズは、基本的にはA4がおすすめです。A2以上の大きさの図面はA3に縮小すると、ファイルしやすくなり、かさばらずに済みます。もちろん、原寸を確認したいという場合は原寸のサイズでファイルするのが良いです。図面の活用状況に応じて印刷サイズを決めましょう。
キングジムかコクヨであればどちらでもいいと思うので、入手のしやすさや、今まで使ったことがあるメーカーで選ぶと良いでしょう。
ちなみに、筆者はキングジムを使っていました。キングジムのファイルを使っていた時の印象としては、表紙カバーが頑丈だということ。長期間保存しても表紙の劣化は少ないと感じました。また、頻繁に持ち出しても表紙がぼろぼろになることもなさそうです。
参考:コクヨの両開きタイプ チューブファイル
参考:キングファイル スーパドッチ<脱・着>イージー 2470A
まとめ
この記事では、現役の機械設計者である筆者が「図面ファイルを整理するためのコツ5選」について解説しました。
図面ファイルを整理するためのコツ5選
1. 案件ごとに図面をファイルする
2. 見積もりなどの補助資料も一緒にファイルする
3. 背表紙の表記ルールをそろえる
4. インデックスを活用する
5. バインダーの保存場所を決めておく
整理整頓がしっかりされていると、ものを探す時間が少なくなります。ものを探す時間が減った分、より多くの製品を作る時間に充てることができます。
自動車メーカーに在籍していた人の話では、大手完成車メーカーの工場はすっきりして整理整頓が徹底されています。具体的には、工具を置く場所がラベルで示され、一目でどこに置けばいいかわかりやすいと感じたそうです。
とは言え、日々の業務が忙しく、「整理整頓といっても、どこから手を付けたらいいかよくわからない」という経営者の方も多いと思います。
まずは、貴社の大事な資産である「図面」を整理するところから始めてみませんか?