図面管理システムの図面検索機能と製造業の効率化
2024.02.22
近年、CADによる図面の作図だけではなく、図面管理についても電子化・システム化が進んでいます。多くの図面管理システムは大変機能が豊富で、使いこなせれば図面管理の効率を大きく向上させることが出来ます。しかし、機能が豊富な図面管理システムはイニシャルコストがかかり、慣れるまでに時間がかかります。ここでは、特に中小企業向けの図面管理システムに最も必要な「検索機能」を中心に、中小企業に必要な図面管理システムの機能について考えてみたいと思います。
目次
図面管理システムとは
図面管理システムとは「図面や関連文書などの技術的な文書を効率的に管理し、共有するための仕組み」のことです。人手による方法とコンピュータによる方法がありますが、現在はコンピュータでシステム化されているのが普通です。
図面管理システムの主な機能
図面管理システムの機能は、図面の履歴管理・アクセスコントロール・図面共有、図面の検索・プロジェクトの分析などがありますが、最も重要で基本的なものは「図面の管理」と「図面の検索」です。
図面の管理
図面の管理機能は、図面の変更が加えられた場合に履歴の管理を行い、共有時の排他制御やアクセスコントロールを行う機能です。また、図面情報を抽出し整理してデータベース化し、管理する機能でもあります。つまり、一般的な「文書管理システム」の図面版というべき機能を持っています。
この図面の管理機能は図面管理システムの根幹をなすもので、これがしっかりしていないと、図面管理システムを導入しても逆効果になります。また、機能が豊富過ぎても、運用や習熟に手間がかかり、これも逆効果になります。
したがって、特に中小企業が、多々ある図面管理システムを導入する場合には、自らの業務量や規模、導入コストなどの観点から良く考慮し、あまり背伸びせずに「身の丈にあった」図面管理システムを導入するべきです。
図面の検索
図面の検索機能は図面データベースの中に蓄積されている図面を検索・探索し、必要な図面を見つけ出す機能です。そして、この図面の検索機能は「図面の管理」機能の充実の上に成り立っています。
この機能が充実していると、アクセスする人の記憶に残っている情報から必要な図面を検索することが容易になり、会社全体の業務効率が向上します。
したがって、図面データベースの基本的な性能(スピードや安定性、セキュリティ性)などがしっかりしており、かつ図面の検索機能が充実し、使いやすいものを選ぶのが基本的な選定方針となります。
図面の検索機能の具体例
それでは図面の検索機能について、考えてみたいと思います。
プロジェクトごとの検索機能
例えば、設計技術者や、営業マンは「この製品はいつごろ納入したかなあ」という感覚で図面を検索します。つまり、頭の中で、「プロジェクト」単位で過去の記憶を整理しているのです。
このような場合、納入先と納入時期をキーにして検索をかけられるようにしておくと、プロジェクト単位での図面へのアクセスが容易になります。
つまり、様々なプロジェクト情報を整理してデータベース化し、図面と紐づけしておことで、プロジェクト単位で図面をアクセスできるようになるのです。
図面単位での検索機能
一方、ユーザーサポートや製造現場(特に部品製造)では、「この部品どうだったかなあ・・・」という感覚で図面にアクセスします。また、自分で作っていることもあり、図面単位での記憶が残っていることが多いです。
このような場合、プロジェクト単位というよりは部品単位で図面にアクセスできるようにしておくと、作業の効率化が図れます。
また、設計技術者であっても、「こんな部品、確か昔、図面書いたなあ・・・」という場合に、図面単位で検索がかけられるようにしておくと、昔書いた図面をもう一度使うことができます。
このように、図面単位でもアクセスできるようにしておくと、様々なメリットがあるのです。
図面の検索機能と業務の効率化
それでは、図面の検索機能が充実していることのメリットを、もう少し考えてみます。
設計の効率化
まず、設計業務が効率化し、新規図面の数が減ります。また、図面を起こしたとしても短時間で作成することができます。すでに述べたように、ゼロから図面を起こすよりも、既存の図面をベースに図面を起こす方が業務の効率化が図れます。つまり、新規図面作成のコストを100とすると、二回使えば50になり、4回使えば25になります。
また、すでに金型が存在している場合、その金型に対応した図面を使った方が部品のコストと納期の点で有利です。昔作った金型の図面を再度利用して、新しい部品を作るという道もあるのです。
顧客に対するレスポンスの向上
図面管理システムの検索機能が充実していると、過去の図面を迅速に検索し製造に必要な図面を見つけることができます。また、逆に、新たに起こす必要のある図面も迅速に分析することができ、受注が入った場合のできるかどうかの回答をレスポンスよく行うことが出来るようになります。
製造現場とのコミュニケーションの増進
製造現場の技能者さんたちはイメージで話をすることが多いです。そのため、コミュニケーションをとる場合には、昔は設計技術者が必ず紙のプロジェクトファイルを持っていき、図面をベースにして話を進めていく場合が多かったのです。
近年では、図面データベースにタブレット端末からアクセスできるようになり、便利になりましたが、更に検索機能が充実していると、良く似た様々な図面を提示しながらコミュニケーションを進めることが出来、より親密な関係を築くことができます。
また、同様に、取引先とも良く似た様々な既存の図面を提示しながら交渉を進めることができます。
AIによる図面の検索機能
このように、図面の検索機能が充実していると様々なメリットがあります。しかし、今までは検索に必要なキーの種類は限られており、図面の数は多くなっているのに検索ができず、埋もれてしまっている図面が多数存在していました。
このような状況は近年AIの登場によって改善されつつあります。AIを使用すると、極めて柔軟な検索が可能です。また、使えば使うほど、人間の検索意図を学習し、検索精度が高くなっていきます。
そして、近年このAIを図面管理システムに利用する動きが高まっています。
キーワード検索
AIによるキーワード検索では、従来のキーワード検索に加えて「共起語」あるいは「類似語」についても検索が可能で、それに紐づけされた図面が結果に表示されます。図面を起こすときには必ず「図題」を考えますが、過去のよく似た図題についても検索が可能です。そのため、イメージがはっきりしていない図面でも、よく似た図面をベースにして新規作図が可能になります。
類似図面検索
類似画像の検索は現在のAIが最も得意とするものです。
AIによる類似図面では更にイメージ検索が推し進められ、図題もはっきりせず、頭の中にぼんやりしたイメージしかない図面でも、似たような過去の図面が検索可能です。この検索結果は、プロジェクトや時期に関係がないので、納入先やプロジェクトに捉われない図面の活用が可能です。
(まとめ)図面管理システムの検索機能の活用は図面の活用につながります
以上、図面管理システムの検索機能について述べました。図面管理システムの検索機能を活用すると、今まで蓄積された図面を「技術資産」として利用することが出来ます。そのため、中小企業が図面管理システムを選ぶ際にはこの「検索機能」が充実しているものを選ぶべきです。
設計技術者は、とかく新しい図面を起こすのが好きな人が多く、過去の図面を調べるよりも新しく図面を起こした方が早いと思うかもしれません。しかし、いたずらに図面の種類を増やすことは図面管理のコストを増大させ、会社に不利益をもたらします。そのため、同じような図面がすでに存在しているかどうかを検索してから新しい図面を起こすのがうまいやり方です。そのためにも、検索機能の充実している図面管理システムを選ぶことが重要です。
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