これからの設計業務の効率化の考え方

2024.03.09

設計業務は製造業の要となる重要な業務で、図面作成だけでなく様々な要素が複雑に絡み合っています。また、近年の設計業務に対する要請が多様化しており、今まで以上に、設計業務の効率化に取り組む必要があります。ここでは、設計業務の効率化の本質を考えながら、具体的な効率化手法について解説し、これからの設計業務の効率化について考察します。

設計業務の効率化の本質

設計業務とは

「設計業務」とは何でしょうか?

直接的には製品を作るための基本的な仕様や構造を検討し、それを「図面」という形に表すことです。つまり外から見ると「図面」作成の仕事ということになりますし、その具体的な内容を知らない人から見ると「図面作成職人」というイメージかもしれません。

しかし、その図面を作成するためには様々な要素を検討する必要があります。そのため「職人」というよりは「技術者」というイメージの方がしっくりするかもしれません。つまり決まった手順を突き詰めて、徹底的に磨き上げるという「技能者」ではなく、様々な要素を考えながら、その検討結果を図面に落とし込んでいく「知的労働者」と考えるのが妥当です。

設計業務の効率化とは

設計を行っていく過程で、つまり「図面作成」を行っていくうえで、最も重要なのは「思考能力」と「情報収集」です。顧客からの要求仕様や営業からの情報、製造部門からの要望など、それらはすべて「情報」です。

そして、これらの情報を分析し、その分析結果を図面に落とし込んでいく作業は「考察」つまり「考える」ということになります。

この「情報収集」と「分析・考察」を効率よく行うのが、これからの設計業務の効率化の重要なポイントです。

ちなみに「情報収集」は「コミュニケーション能力」、「分析・考察」は「経験やセンス」によって支えられているとも言えます。つまり、設計業務の効率化は設計技術者の負担を減らし、「コミュニケーション能力」と「経験・センス」を高めるものと言えるでしょう。

設計業務の具体例

それでは、具体的な設計業務の内容を見ていきましょう。

顧客要求の検討

まず、顧客や市場が求めている製品の使用を検討し、実現可能かどうか、つまり図面に落とし込めるかどうかを検討します。顧客との折衝は主に営業が行いますが、設計部門も同行し技術的に可能かどうかを検討します。

また、市場のニーズの把握は製品企画やマーケティング部門が担当しますが、技術的に可能かどうかを検討するのは設計部門です。

採算の検討

技術的検討の際には、営業部門や購買部門とも協議し、できるだけ低コストで生産が可能なように持っていきます。また、コストよりも品質を重視する場合でも、可能な限り効率よく設計が行えるようにするのが重要です。この「コストと品質のバランス」を高いレベルで満たすように図面を作成するのが設計技術者の「腕の見せどころ」の一つです。

なお、だれでも最初は先輩の図面や仕事の進め方をまねるだけですが、経験を積み、だんだんと妥当なバランスで設計ができるようになるのが設計の仕事の面白さの一つといえます。

各部署との調整

このように、各部署との協議や相談を繰り返しながら設計業務は進みますが、図面作成が終わり、出図となっても、今度は製造部門からの要望が設計部門に届きます。

「この図面はこうして欲しい・・・」とか「こうした方がいい・・・」という現場の要望を時には即座に、時には次のプロジェクトの時に図面に反映させていきます。

特に新人時代には、毎日製造現場に呼び出され要求を突き付けられ、図面修正だらけ・・・なんてことも珍しくありません(笑)。

さらに、無事製品が完成し、検収が上がっても、ユーザーサポートからの要望も入ってきます。

製品開発

大きな会社では研究開発は設計とは独立して行われていますが、小さな会社では、設計部門が技術開発を担当していることが多いです。この技術開発の成果を図面に落とし込んでいくことも設計の役割です。

このような、研究の成果を図面に落とし込んでいく作業は、難易度が高いですが、クリエイティブな作業でもあります。まさしく「設計」という仕事で、面白さを実感できるでしょう。そして、ここまで来れば設計技術者として一人前ということになります。

このように設計は「分析・考察能力」と「コミュニケーション能力」の両方をフル稼働させて行う仕事と言えます。

設計業務の効率化の具体的手法

それでは、設計業務の効率化の具体的な手法について説明します。

設計プロセスの最適化

設計プロセスとは「顧客要求から製品の検収までの一連の流れ」、特に「顧客要求の分析から製品の完成までの流れ」のことを指します。この一連の流れがスムーズになるようにするのが「設計プロセスの最適化」です。

具体的にはプロジェクトの把握を一元化し、プロジェクトマネジメントとして管理できるようにすることです。「コンカレントエンジニアリング」などとも関連します。

近年では、プロジェクトの「見える化」ツールなども登場し、ひと昔に比べればマネジメントが容易になっています。

ツールと設計支援技術の活用

狭い意味での設計業務の支援ツールとしては代表的なものにCADシステムがあります。また、試作や実験をコンピュータ上でシュミレーションできるCAEシステムや、製造工程と設計をつなぎ製造の効率を向上させたCAMシステムなどもあります。

また、図面管理をスムーズに行うための「図面管理システム」や設計に必要な情報を整理統合して管理しておくPDMシステムなどもあります。

さらに、よく使う強度計算のマクロをエクセルで作成すること等、現場で使えるちょっとしたツールを共有しておくと非常に便利です。

標準化とモジュール化

多数の種類の設計を行っているとそれぞれの製品で、共通して使う部品というのが出てきます。そして、できるだけこのような部品をみんなで使うようにすれば、図面作成の手間は省け、量産効果で製造コストは下がります。このような取り組みを「標準化」、標準化された部品を「標準部品」といいます。そして、このような標準部品の仕様をまとめたものを「規格」といいます。

また、特に装置や複雑な製品は製品全体を各ブロックに分け、それぞれで独立して設計を行うことが良く行われます。これを「モジュール化」といいます。そして、モジュール化されたものを「モジュール」といいます。

メリットとしては、モジュールを標準化して、たくさん作っておけば、量産効果によってモジュールの単価を下げることが出来ます。また、製品のマイナーチェンジなどの時も必要なモジュールのみを設計すればいいので、手間が省けます。

標準化やモジュール化は昔からある手法ですが、現代でも効果的です。

情報の共有

ひと昔、ふた昔前であれば、打ち合わせをしたい場合には必ず図面を持参して、実際に会って話をしていました。しかし現代では、オンラインでの打ち合わせも可能になっています。

また、IT技術の進歩により、生産に必要な情報が集約されて管理されるようになっています。小さな会社であっても「図面管理システム」の導入によって、情報の集約が可能です。

これからの設計業務の効率化の考え方

これからの設計業務の効率化の大きなテーマは「設計ノウハウの継承・共有と技術資産としての図面の活用」です。

小さな会社であっても、歴史の長い会社はそれだけノウハウが蓄積されています。そして、人手不足の昨今、若い技術者は大変貴重な戦力となります。つまり、会社が蓄積してきたノウハウをできるだけ短時間で効率よく若い技術者に継承・共有していくことが重要になります。

もちろん、口頭での指導や、上長の検図などでも指導が行われますが、過去の図面を気軽に参照できるようにしておくことで、若い技術者が自発的に図面を「読む」ことを可能にします。

図面を「読む」ということは、図面に表現された設計者の「意図」を読むことでもあり、図面を通したコミュニケーションを図ることでもあります。つまり、過去の図面を気軽に参照できるようにしておくことは、設計技術者に必要な「分析・考察」の能力と「コミュニケーション」の能力を効率よく高めることができるのです。

過去の図面を「技術資産」として捉えると、このような見方をすることもできます。

(まとめ)多様化の時代に合わせて設計業務の効率化も考える必要があります

以上、設計業務の効率化について考えてきました。設計業務はその歴史が長く、その過程で様々なアイデアや着想が蓄積されています。小さな会社であっても歴史の長い会社であれば、「図面」という形でそれらが蓄積されているはずです。

設計業務の本質は「考える」ことです。蓄積された図面から学ぶことで、新たな「創造的な設計」ができるようになるのです。また、図面を作成した過去の設計者と、図面を通して「コミュニケーション」を取ることでもあるのです。

それが「図面を技術資産として生かす」ことの意味の一つです。そして、これからの設計業務の効率化の考え方の一つと言えるでしょう。

図面を技術資産として生かすためには図面管理システムが重要です。中小企業の図面の技術資産としての活用にマッチした「図面バンク」の導入を是非ご検討ください。

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