図面の保管形態と電子ファイル化のメリット

2024.03.26

図面の保管形態には様々なものがあります。古典的な紙図面によるものや、最近では電子化されデータベースに蓄積された図面データもあります。このため、図面管理の方針をそれぞれの場合できちんと決めておかないと、図面管理が大変非効率になってしまいます。ここでは、図面保管形態別のメリット・デメリットについて述べた後、最後に、近年の図面保管の方向性について考えてみたいと思います。

図面の保管形態

図面はどのように保管されてきたのでしょうか。ここでは、それぞれの図面の保管形態を解説し、メリット・デメリットを見ていきましょう。

紙図面を図番順で保管

紙図面を図番順に保管する方法はもっとも単純で、原始的なやり方です。保管する図面の量が少ない場合にはこれで十分です。顧客先、図題と、作成年月日、図番を台帳に記録しておき、台帳にアクセスすることで、検索を可能にします。台帳をExcelで作成し、管理しても良いでしょう。

メリットとして、保管・管理にあまりコストがかからず、手軽にできます。デメリットとしては、図面の量が増えてくると、俯瞰的に管理することができなくなってきます。

紙図面をプロジェクトごとに管理

装置や組み立てが必要な製品の場合、原図のコピーをとり、そのコピー図面でプロジェクトファイルを作成し、管理・保管するという方法がとられます。図番による保管と併用されることも多いです。

メリットとして、ファイルにアクセスすることで、プロジェクト全体を俯瞰的に把握することができ、プロジェクトのマネジメントが効率的に行えます。デメリットとしては、図面の修正や設計変更が多くなると、原図とコピーとの整合性を取る作業が煩雑となり、効率がかえって低下します。

CADで作成した図面を紙図面で保管

CADで作成した図面を紙にプリントアウトし、紙図面として管理・保管する方法です。つまり、CADを「作図ソフト」として使っているやり方です。

メリットして、CADを使うことで修正や変更が容易になり、また、図面をきれいに読みやすく仕上げることができます。デメリットとしては、CADを単なる「お絵描きソフト」としてしか使っておらず、さらに、図面を容易に作成することが出来るために、図面の量が必要以上に増え、かえって図面の保管・管理の効率が低下するという問題があります。

CADで作成した電子化ファイルをデータベースで管理・保管

CADで作成される図面は電子化ファイルです。この電子化ファイルを紙図面に落とさずにダイレクトにデータベースで管理することもできます。つまり、原図とコピー図面を区別せずに一体として管理する手法です。

メリットとしては、電子化ファイルによる図面は保管に場所と時間と手間を取らず、効率が向上します。また、図面は電子化しておいた方が何かと便利なことも多く、近年の主流です。デメリットとしては、年々機能が豊富になっており、年配の人はシステムの操作に戸惑うことも多いです。また、レガシーとしての紙図面を、どうやって効率よく電子化するかといった問題も残っています。

電子化された図面ファイルと関連資料を統合管理

現在の最先端の設計システムでは電子化された図面ファイルと関連資料を統合管理して、関連付けることにより、設計のリサーチの手間を軽減し、効率を向上させたものも登場しています。いわゆるPDM(Product Data Management)と呼ばれるシステムです。

PDMのメリットとしては、特に大規模プロジェクトや複数のプロジェクトが同時に進行している場合に、業務全体の効率が向上します。また、関連情報を探す手間が省け、個々の図面作成の効率が向上します。

デメリットとして、PDM導入の効果が比較的大規模なプロジェクトや、多数のプロジェクトが同時に進行している場合に限られています。そのため、今のところ、事業規模の大きな会社に向いているということです。また、導入コストが比較的高く、中小企業への普及はまだまだこれからといった段階にあることです。

近年の図面保管の方向性

それでは、近年の図面保管・管理の方向性を見ていきましょう。

紙図面だけでの保管は現在ではほぼない

最も簡単かつ原始的な紙図面だけでの保管は、現在採用している企業は、一部の例外を除いてほとんどありません。「一部の例外」というのは、「紙図面一枚で受注」を受ける場合や、工房・職人的な企業で、古くからの「経験と勘」だけで「伝統的なものづくり」をしている場合のみです。

もっとも紙図面一枚で受注を受ける場合でも、例えば製品に応じた「金型」を設計する場合には3DCADを使う場合が多いですし、職人的な仕事をする場合でも、よほどのことがない限りコンピュータを使って工程の一部を効率化しています。

このため、現在、紙図面だけで作業を進める企業はあまりなく、何らかの形で電子化された図面を管理・保管していることがほとんどです。

CAD図面を紙図面にプリントアウトする手法は無駄が多い

CADを使っている企業で意外と多いのが、CADで作成した図面をプリントアウトして紙図面の形で保管している場合です。

この方法は一見すると従来の図面保管・管理手法とCADとのいい所取りのように見えますが、すでに述べた通り、CADによる図面作成が容易なため、図面の量が多くなり、それをいちいち紙図面に変換していたのでは作業がかえって煩雑になります。

また、図面の修正があった場合には紙図面とCAD上の図面データとの整合性をとる必要があり、二度手間になってしまいます。さらに、作業が煩雑になると誤記や転記漏れの可能性が高くなります。

このため、CADを導入した段階で、新規の図面では紙図面による管理・保管を完全に排除するという方向性が重要になるのです。つまり、電子化を徹底しないと電子化の効果は薄くなるということになります。

電子化された図面データを統合管理するのが近年の流れ

そのうえで、電子化された図面データを図面データベースに一元・統合管理することが近年では求められています。このようにすると、営業を含んだ会社の各部署で図面を有効利用することができ、図面を技術資産、ないし経営資源として利用することが可能になります。

さらに、図面だけでなく関連資料もデータベースに関連付けて保管・管理することで、設計業務の効率化や、購買管理の効率化なども達成することが出来ます。

問題はレガシーとしての紙図面の電子化

ここで問題になるのが、すでに作成された紙図面の扱いです。歴史の長い会社は紙図面の時代に大量の図面を作成し保管しています。このため、この紙図面をどのように生かすかというのが古くて新しい問題なのです。

この問題に対しては「紙図面を完全に排除・破棄」するというアプローチと「紙図面を積極的に電子化し、技術資産として生かす」というアプローチがあります。多くの企業では「必要に応じて利用する」というアプローチが現実ではないでしょうか。

商品の市場におけるライフサイクルが短く、技術革新の激しい分野では図面はどんどん価値を失います。そのため、古い紙図面を破棄しても実害はあまり多くありません。

しかし、過去の図面を活かせる分野や、リピートオーダーが予想される場合には紙図面を電子化する意味があります。また、ユニークで面白い機構設計や、設計者の工夫が読み取れる図面も貴重です。

このような図面は多少手間がかかっても積極的に電子化し、最新の図面データベースに保管しておくべきでしょう。

(まとめ)図面ファイルの電子化は業務効率を向上させます

以上、図面別の保管形態と電子化ファイルのメリットについて考察してきました。いまどき、図面を紙だけで保管する会社は少ないと思います。そして、極力図面を紙にプリントアウトせず、電子化された状態で図面データベースに保管するというのが近年の流れでもあります。

ただ、そうすると過去に作成された紙図面をどのように電子化するかが問題となります。多くの場合、電子化された図面が何かと便利なのは分かっています。しかし、歴史が長く、技術資産が豊かな会社は、紙図面も大量に保管しています。これをもっと利用して業務の効率を上げることが望まれているのです。

電子化された過去の図面は「経営資源(リソース)」です。この経営資源を有効に利用して業務の効率をあげ、利益を確保するために、「図面バンク」を是非ご活用ください。

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