図面管理をエクセルで行うメリット・デメリットと、そのテンプレートの選びかた

2024.04.04

小規模な製造業では、図面管理システムを導入せず、エクセルで行おうとしているところも多いのではないでしょうか。確かにエクセルは大変便利な表計算ソフトですが、図面管理に使用する場合には注意点とコツがあります。ここでは、図面管理をエクセルで行うメリットとデメリットを説明し、そのテンプレートの選び方や作成のコツを述べ、最後に、エクセルと図面管理システムやPDMの違いについて述べ、適切な図面管理について考えてみたいと思います。

図面管理をエクセルで行う手順(プロジェクトの場合)

装置など、プロジェクトの図面管理をエクセルで行う場合の手順は以下の通りです。

テンプレートの作成

まず、テンプレートを作ります。テンプレートの横軸の項目には、図面の作成年月日、図番、図題、個数などを記入します。また、図面に起こさない標準部品のメーカや型番なども合わせて記入できるようにしておくといいでしょう。

このようなテンプレートは部品表(BOM)と呼ばれ、この部品表を見れば、プロジェクトの全体像が俯瞰的に把握できます。そして、この部品表自体にもプロジェクト名とプロジェクト番号を付けておくといいでしょう。

なお、部品表のテンプレートのフォーマットは、プロジェクトごとに変えるものではなく、原則として一度決定したら変更せずに使うものです。最初のフォーマットを決定するときに十分に検討しましょう。

データの入力

テンプレートを決定したら、図面データや、部品の型番などをこれに記入していきます。図面データのファイルにリンクを張り、リンク先を部品表に表示しておくと便利です。リンク名としては図番が一般的です。また、同様に部品の型番をリンク名として、カタログや、図面データをリンクさせておいても良いでしょう。

特に装置図面などではユニットごとに部品表をつくり、「ユニット」―「組み立て図」―「サブアッセンブリー」―「部品」として部品表を構造化しておくと分かりやすいです。記入の段階で一段文字を下げて記入するなど自分なりに工夫をすると良いでしょう。

また、マクロを組んで、これらの記入作業を自動化してもいいでしょう。自分でマクロを組めるのが一番いいですが、設計技術者は忙しい場合が多いので、外注に発注することも考えられます。近年ではクラウドソーシングなどでVBAのマクロを組んでくれる人も多いです。

図面が更新された場合の対応

図面や部品が更新された場合、図面ファイルへのリンク先を変更する必要が生じます。実はこの作業が一番厄介で、手動ではミスが発生する可能性が高くなります。マクロを組んでも、煩雑な処理になりやすく、なかなかスムーズに作業を進めることが難しいです。エクセルで図面管理を行う場合の最大の問題点と言えるでしょう。

図面管理をエクセルで行う手順(一製品一部品の場合)

一方、部品単位での受注がメインとなる場合は、顧客ごとの管理となります。つまり、顧客ごとに帳簿を作り、そこに、受注年月日、図題、図番などを記入していきます。感覚としては、「受注台帳」に手を加えた感じになります。

図面をリンク名として図面ファイルにリンクを張るのはプロジェクトの場合と同様ですが、部品単位での受注の場合、図面の修正や変更の頻度はあまり多くありません。そのため、仮に修正や変更が生じたとしてもリンクの張替えはそれほど難しくありません。

もっとも、部品製造に複数の金型が必要な場合や、部品自体がさらに複数の部品から構成されている場合には、プロジェクトでの場合と同様のメリット・デメリットが生じます。

図面管理をエクセルで行うメリット・デメリット

ここで図面管理をエクセルで行う場合のメリット・デメリットについて、まとめてみます。

メリット

メリットとしては、まず、管理する図面の量があまり多くない場合には、あまりコストをかけずに図面管理が可能です。特に個人経営の機械設計事務所や、製造業でも規模が非常に小さい場合には、エクセルによる図面管理でも十分なこともあります。

また、受注する製品が部品で「図面一枚での受注」の場合には、専用の図面管理システムを用いなくても、受注台帳を多少変更するだけで、それなりの図面管理が可能な場合もあります。

デメリット

デメリットとしては、管理対象の図面の量が多くなってくると管理が難しくなってきます。また、頻繁に図面の更新や変更があると、その変更の部品表への反映は原則として手動で行わなければなりません。このため、誤記入や記入漏れが発生する可能性が高くなります。また、作業が煩雑になり、効率が低下します。

さらに、複数の作業者で設計を行う場合にも、対応が難しいです。もちろん、ある程度の自動化はマクロを組むことによって可能ですが、限界があります。

そのため、図面管理をエクセルで行う場合には、「図面の量が少なく、個人レベルの図面管理」に限定されると考えられます。

多くの製造業では設計業務に複数の設計者が関わり、頻繁に図面の変更・更新が行われます。このため、図面管理をエクセルだけで行うことは、あまり現実的な選択ではないと言えるでしょう。

図面管理用テンプレートの選び方・作り方

それでも、エクセルによる図面管理を行いたいという場合には以下のことに注意するべきでしょう。

選び方

ネット上にもエクセル向けの図面管理用のテンプレートが存在し、無料もしくは有料でダウンロードが可能です。しかし、これらのテンプレートは建築図面向けが多く、そのままでは機械図面やで電気図面に使用することは難しいでしょう。

なぜ、ネット上のテンプレートに建築図面向けが多いかというと、建物の建築に際して必要な図面の作成は「建築士」が行っており、この建築士は小規模な自営の人が多いからです。

そして、そのような小規模な自営の建築士が管理する図面の量はそれほど多くなく、これらのテンプレートでも十分に対応が可能な場合が多いからです。

作り方

そのため、機械図面や電気図面に対応したエクセルのテンプレートは原則として自分で作ることになります。

具体的にはテンプレートの横軸は図面の表題欄に記入される事項を記入できるようにしておくのが一般的です。図番や作成年月日、図題などです。すでに述べた通り図面ファイルにリンクを張り、図番をリンク名としておくといいでしょう。可能であればこれらの作業をマクロで自動化できるようにしておくと便利でしょう。

もっとも、このような注意を払っても、エクセルによる図面管理は簡易的なものから脱することが出来ません。そのため、図面の量が多くなってくるとこの手法では図面管理は難しくなってきます。

そう考えると、最初からPDMシステムや専用の図面管理システムを導入した方が合理的と言えるでしょう。

PDM・図面管理システムのメリット・デメリット

PDMや図面管理システムのメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

まず、図面の変更や更新の管理を自動的に行うため、煩雑さが激減します。これにより設計の効率が上がり、業務負担が軽減されます。

また、常に最新の図面間のつながりや構造が一目瞭然で把握できます。これにより、プロジェクト管理の「見える化」が実現し、進行がスムーズになります。

さらに、過去の図面を短時間で検索できます。近年ではAIによる画像検索により、類似図面の検索がスピーディーに行えるものも登場しており、技術資産としての過去の図面を効率よく利用することが出来ます。

その他、様々なメリットがあります。

デメリット

デメリットとしては、一般的に導入コストがある程度かかります。しかし、近年急激に導入コストが低下しており、身の丈にあったものがいろいろと選択できるようになってきています。

さらに、操作が複雑で、使いこなすのにある程度習熟が必要です。しかし、これも機能を絞って操作をシンプルにしたものが登場しています。

このように近年、PDMや図面管理システムの導入のハードルが下がっています。エクセルによる図面管理よりも、これらのシステムを導入した方が長い目で見た時にはメリットが大きくなる時代になってきています。

(まとめ)図面の量や性質に応じて適切な図面管理の手法を選択しましょう

以上、図面管理をエクセルで行う場合のメリット・デメリットについて解説しました。エクセルによる図面管理は業務量が少なく、図面の量が少ないときは対応できるかもしれません。

しかし、機械図面や電気図面ではプロジェクト当たりの図面の量や種類が多く、また、頻繁に変更や修正が行われます。そのため、図面の変更や修正があった場合に、それが自動的に部品表に反映された方が煩雑にならず、効率が上がります。

そう考えると、早い段階から最低限の機能を有した図面管理システムを導入すれば仕事が楽になるはずです。近年では、図面管理システムも機能を絞り、低価格で導入しやすいものが登場してきています。

「図面バンク」はこのような目的に適した、コストパフォーマンスの高い図面管理システムです。是非、導入をお考え下さい。

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