機械設計のおすすめ本の選び方

2024.04.13

機械設計の業務は勉強と実践の連続です。そのため、基本的な知識は頭の中に入れておく必要があります。例えば、機械工学の知識や製図の仕方などです。ここでは、機械設計の業務の前提となる「本」の選び方のコツを説明し、場合によっては実際の書名を出して解説したいと思います。

機械設計の業務の前提となる学問的知識

機械設計の基礎となる学問は以下の通りです。これらの知識は、取りあえず図面を「作図」する場合にはすぐには役に立ちませんが、高度な「設計」を行うようになってくるとボディーブローのように効いてきます。そのため早い段階から、これらの基礎的知識を意識して業務を進めると良いでしょう。

4大力学

4大力学というのは「材料力学」「機械力学」「熱力学」「流体力学」の4つの力学のことを言います。このうち機械設計で最も重要なのは「材料力学」です。

材料力学が理解できていないと、強度計算や重量配分の設計の勘所が分からなくなります。また、CADの高度な機能を使うときにも、表示される言葉や概念の意味が分からなくなってしまいます。

近年では、あまり数式を使っていない比較的簡単な入門書が出ているので、感覚的に掴んでおけるようになっておきましょう。また、他の3つの力学も概説書が出ているので、必要に応じて読んでおきましょう。

機構学

リンク機構やカム機構、歯車など、機械のメカ機構の挙動を説明する分野を「機構学」といいます。この分野は機械設計の実際にダイレクトに直結する分野で、メカ機構の原理を説明する重要な分野です。

これも、近年では概説書が出ていますから、できるだけ様々な種類のメカ機構の概略をつかんでおきましょう。

制御工学

近年では、機構的な制御を行わず、電子的な制御を行い場合が増えています。このため、機械設計であっても、ある程度の「制御工学」の知識が必要です。このため、制御工学の基本的な知識も頭に入れておきましょう。

実際の機械設計の知識

それでは、実際の機械設計に必要な知識を順番に見ていきましょう。

JIS規格の知識

図面は我流で書いていいというものではなく、文字の書体や、寸法線の入れ方、公差の指示などの「図面の書き方」にも一定のルールがあります。これはJIS(日本産業規格)で決められています(JIS Z8310及びJIS B0001)。この図面の規格は設計者の意図を正確に反映させ、的確な製造を可能にするための「共通言語の文法」のようなもので、生産に係わる人に共通のルールです。

したがって、図面作成や製造業務に当たっては、これらの図面の書き方のルールを最低限知っておく必要があります。これはトレースなどの「作図」の場合でも同様です。

機械要素の知識

機械は機械を構成する「歯車」や「ネジ」、「軸受」、「バネ」などの要素から構成されています。これらの要素を「機械要素」といいます。

これらの機械要素は大きさや使用目的が様々で、種類もたくさんあります。そして、機械設計を成功させるにはこれらの機械要素を適切に使用することが大切で、このため、これらの機械要素すなわち「機械部品」の性質を良く理解する必要があります。

材料の知識

材料に関する知識も重要です。例えば同じ鉄でも鋳物用の鉄(鋳鉄)とステンレスでは加工法が違います。加工法が違うということは、加工精度も異なるということですから、設計の段階で、これらの違いを把握する必要があります。

さらに、近年では金属のほかに、プラスチック(樹脂)がよく使われています。このため、樹脂の特性を良く理解して図面を書く必要があります。

その他、材料によって強度も違いますし、価格も違います。耐熱性も違いますし、もろさも違います。

したがって、材料の特性を良く把握してそれぞれの材料の良さをうまく調和させて設計を行う必要があります。そして、その材料の選定も設計の難しさであり面白さでもあるのです。

機械加工の知識

完成した図面、特に部品図を見て、「この部品自分だったらどう作る」と考えることも重要です。そう考えると「部品の作り方」も設計技術者として知っておく必要があります。

このような部品の作り方を「機械加工法」ないし「機械工作法」と言いますが、この知識も重要です。

現実的に、あまり突飛な加工法を用いないと作れない部品は、製造現場の親父さんに「こんなモノできねえ!(怒)」と言われるか、上司に「金かかるなあ・・・(怒)」と言われるのがオチです。(苦笑)

上司の機嫌を伺いつつ、製造現場の親父さんに気持ちよく作ってもらうために(笑)、これらの機械加工法の知識も頭に入れておきましょう。

情報システムの基本的知識

近年では、設計環境の電子化・デジタル化が進んでいます。ドラフター(製図板)を使って手書きで製図というのはほとんど行われず、CADやPDMを使用して、コンピュータ上で設計が行われています。

コンピュータや情報システムの基本的な知識も入れておきましょう。

実際の本の選び方

それでは、実際の本の選び方について解説します。

材料力学の本

すでに述べたように、材料力学は機械設計の基礎となる重要な分野です。このため、概説書・入門書で大体の内容を把握した後、より詳しい専門書を用意しておくといいです。この専門書は大学や高専で採用されているものを購入すると良いでしょう。

近年では、ネット上で各大学や高専のシラバスが参照できますし、Amazonのレビューも参考になるでしょう。

メカ機構の事例集

メカ機構は実に様々なものがありますが、普段から意識しておかないと適切なメカ機構の選定ができません。できるだけ多数のメカ機構の事例が記載されているものを選びましょう。

機械設計便覧

機械設計便覧は、標準的な機械設計に必要な情報を集約してコンパクトにまとめたもので、実務で最もよく使うものです。JISに準拠しているものを選びましょう。

金属材料やプラスチック(樹脂)の解説本

材料に関する本も重要です。これはできるだけ詳しいものがいいです。とりあえず金属に関するものと樹脂に関するものを用意しておきましょう。樹脂や金属のカタログや技術資料も収集しておきましょう。

機械加工の解説本

切削加工や、放電加工、旋盤やマシニングセンタなどの金属加工法や射出成型などの樹脂の加工法、あるいは、それらの扱い方について解説した本が出ています。現場の職人さんにバカにされないためにもこれらの本も読んでおきましょう。

CADのマニュアル

意外と重要なのはCADのマニュアルです。近年のCADシステムは機能が多彩で、高度な機能を使おうとすると結構操作が面倒だったりします。そのため、CADのマニュアルを容易に参照できるようにしておくと、CADの潜在能力を設計者レベルで最大限引き出すことができます。

CADの使っていない機能をもっとうまく使って、設計の効率を上げていきましょう。

(まとめ)いずれにせよ必要な機械設計の本は一冊では済みません

以上、機械設計に必要な知識と本について簡単に解説しました。機械設計の業務に必要な知識は大変広範囲に及び、さらにとても奥深いものです。そのため、機械設計技術の習得は独学では難しい場合が多いです。

しかし、現場の技能者が機械設計技術者に脱皮するコツは、先輩の指導に従いつつ「本をしっかり読んで、体系的な知識を身に付ける」ことにつきます。そして、それらの本を必要に応じて参照しつつ、実際に図面を書いてみることです。そのうえで、今までの現場での経験を活かすことができれば、素晴らしい機械設計技術者になることが出来るでしょう。

最後に筆者が機械設計業務で最もお世話になった本の題名を紹介します。

「精説 機械製図」実教出版 和田・本荘・福永・新井・石川著

図面の基本的な読み方から、具体的な書き方、標準的な機械要素の説明などが過不足なく記載されており、強度計算を伴わない一般的な機械設計で便覧的な使い方では、この本があれば十分です。もちろんJIS準拠です。歴史の長い本で、多くの機械工学専攻の大学や高専で昔から基本的なテキストとして使用されており、安定感があります。価格が少し高いですが、必携の本です。この本を中心にして、その都度必要な本を勉強していけばいいでしょう。

そして「図面バンク」も技能者・技術者のスキル向上を応援しています。頑張ってください!!

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