ダッソーシステムズのハイエンドCAD・CATIAとは

2024.04.18

製造業の人でCADは何をするシステムかを知らない人はいないでしょう。そして、様々なCADシステムの一つに、特に大規模な設計プロジェクトに向いた「CATIA(キャティア)」があります。このCADシステムは大変有名なシステムで、CADシステムのスタンダードの一つとなっています。ここでは、CATIAの簡単な紹介や、CADシステムの種類、CATIAを開発したダッソーシステムズの紹介や開発の経緯についてご紹介します。

CATIAとは

CATIA(Computer-Aided Three-Dimensional Interactive Application:コンピュータ支援による三次元インタラクティブの応用)を略した造語です。システムとしては、CADシステムです。主に製造業や航空宇宙、自動車産業など、大規模なプロジェクトや部品点数の多い製品に適したハイエンドCADと呼ばれます。もちろん三次元対応(3DCAD)です。

CATIAの特徴

CATIAの特徴は次のようなものです

強力な3Dモデリング機能

高度な3Dモデリング機能を備えており、複雑な形状やデザインを作成するのに適しています。

幅広い産業への適用

航空宇宙、自動車、造船、産業機械、消費財など、さまざまな産業で使用され実績を上げています。業種によって、システムをカスタマイズでき、柔軟性に富んでいます。

統合された設計環境

設計、解析、製造、シミュレーションなどのさまざまな機能が統合されています。これにより、設計プロセス全体をシームレスに管理し、効率的に作業することができます。

複数ユーザー管理

複数のユーザーが同時に作業することができ、チームでのプロジェクト管理や情報共有が容易です。このため、複数の設計者が協調して作業を行う必要がある大規模プロジェクトに特に向いています。

高度なシミュレーション

構造解析、熱解析、流体解析など、さまざまなシミュレーション機能を提供しています。これにより、試作を最小限にしつつ製品の性能や耐久性を評価することができます。

CADの種類と使い分け

CADシステムにはいくつかの種類があります。

ローエンドCAD

ローエンドCADとは、主に小規模な企業や個人が使用する、比較的低価格なCADシステムです。機能や性能がより高度な製品に比べて劣りますが、基本的な設計作業や図面作成などの一般的な用途には十分な機能を提供しています。

このため、予算の制約のある個人や小規模企業もCADシステムをツールとして利用できます。また、機能が絞られているため、直感的なインターフェースを持っています。そのため、操作しやすいです。

なお、一部のローエンドCADシステムは、活発なユーザーコミュニティやオンラインサポートが充実しています。

これらの特徴から、ローエンドCADはCAD初心者が「CADってどんな感じ?」とか「これから設計を勉強したい」と思っている人には最適です。

ただし、機械設計を職業として考えている人や実際に製造を行っている「プロ向け」のCADシステムとは言い難いです。これら「プロ向けのCADシステム」は実質的に次で述べる「ミッドエンドCAD」以上を使用するのが望ましいです。

ミッドエンドCAD

ミッドエンドCADとは、ローエンドCADとハイエンドCAD(高価格で高度な機能を提供するCADシステム)の中間に位置するCADシステムのことを指します。これらのCADシステムはCADを使って本格的な業務を行う場合の実質的な最低限のランクになります。代表的なミッドエンドCADシステムは、SolidWorks、Inventorなどがあります。

ミッドエンドCADシステムは、比較的手頃な価格で提供される一方で、ローエンドCADよりも高度な機能やパフォーマンスを提供します。つまりコストパフォーマンスが高く、価格と機能のバランスが良いです。

また、ハイエンドCADほどではありませんが、十分な3Dモデリング機能を持っています。さらに、必要にして十分な統合された設計環境を構築することが出来ます。業種に合わせてカスタマイズも可能です。

ハイエンドCAD

ハイエンドCADとは、高度な機能やパフォーマンスを提供し、大規模な企業や非常に複雑な設計ニーズを持つユーザーを対象としたCADシステムのことを指します。

これらのCADソフトウェアは、高価格である一方、最先端の機能や技術を備えており、大規模なプロジェクトの遂行や非常に高度な設計を可能としています。ハイエンドCADは実質的にCATIA、NX 、Creoの三種類が市場をほぼ独占しています。

なお、非常に高度な3Dモデリング機能や、大規模プロジェクトのサポート、非常に高度なシミュレーション機能、カスタマイズと柔軟性は、ミッドエンドCADをしのぐ性能を持っています。

ただし、一般的にシステムの規模が大きく、複雑です。さらに、ハードウェアの要件がかなり高いです。そのため操作が複雑になりがちです。また、価格も高いため、特に中小企業が導入する場合には慎重な判断が要求されます。

ダッソーシステムズとは

ダッソーシステムズ(Dassault Systems)は、フランスの企業で、1981年に設立されました。3Dデザイン、3Dデジタルプロトタイピング、PLMシステムの開発・販売を行っています。CATIAやSolidWorksの開発元です。

なお、CATIAとSolidWorksが同じ会社で開発されていることから、この二つのCADシステム間ではCADデータにある程度の互換性があると考えられます。

CATIA開発の経緯と歴史

CATIAの開発は、フランスの航空宇宙企業であるダッソーアビアシオンによって始まりました。ダッソーアビアシオンはフランスの国産戦闘機である「ミラージュ」シリーズの開発を主導した企業で、現在のダッソーシステムズの前身です。

CATIAは、1977年に最初のバージョンがリリースされました。当初は航空宇宙産業向けに設計されたCADシステムでした。

CATIAの開発の背景には、航空機や宇宙船の設計プロセスを改善するという目的がありました。従来の航空機の設計手法では多大な時間と手間がかかり、さらに設計ミスや製造上の問題が頻繁に発生していました。そこで、ダッソーアビアシオンは、コンピュータを活用して設計プロセスを効率化し、品質を向上させるためのソフトウェアを開発しました。

つまり、CATIAはもともと自社製品の航空機の設計を効率化するために開発されたソフトウェアで、製造業における設計業務の問題点や、課題の解決を反映させたシステムと言えるのです。

初期のCATIAはメインフレーム上で動作し、3Dモデリングと図面作成のための基本的な機能を提供していました。その後次第に機能が拡張され、より高度な機能や産業用途に特化した機能が追加されていきました。特に、航空機や自動車などの産業では、CATIAが設計プロセス全体を支援するための重要なツールとして採用され、市場での地位を確立しました。

さらに、動作するハードウェアもメインフレームからワークステーションへ舞台を移し、やがてPCの性能が急激に向上したことで、CATIAもPC上で動作するようになりました。その結果、普及のスピードがさらに加速していきました。

CATIAはその後も、技術の進歩や産業のニーズの変化に合わせて継続的に進化しました。新しい機能やモジュールが追加され、使いやすさが向上しました。現在では、CATIAは他の製品との統合や、デジタルツインなど、新たな技術トレンドにも対応しています。

CATIA略年表

1977年: 最初のバージョンのCATIAがリリースされる。当初は航空宇宙産業向けのCADシステムとして開発された。

1981年: IBMとの提携により、CATIAのマーケティングと販売が強化される。

1984年: CATIAの初のUNIXベースバージョンがリリースされ、UNIXワークステーション上での利用が可能になる。

1988年: 3D CADシステムとしてのCATIAが拡張され、新たな機能が追加される。これにより、CATIAはより幅広い産業で使用されるようになる。

1990年代: CATIAの機能がさらに拡張され、3Dモデリング、シミュレーション、製造プロセスなど、さまざまな領域での利用が可能になる。

1995年: WindowsベースのCATIAがリリースされ、PCユーザー向けにアクセスが可能になる。

2000年代: 航空宇宙、自動車、製造業などの産業での採用が拡大する。

2010年代: クラウドベースのコラボレーションやシミュレーション機能の追加。

2020年代: デジタルツインやIoTなどの最新技術との統合。

(まとめ)CATIAはハイエンドCADのスタンダードの一つです

以上、CATIAについて解説しました。世の中には様々なCADシステムが存在しますが、ハイエンドCADについては、世界的に見てCATIAが最もよく使われています。特に大企業や大きなプロジェクトの場合、CATIAが最も実績があり、ほぼデファクトスタンダード(事実上の標準)と言えるでしょう。

ただし、中規模~小規模なプロジェクトの場合、CATIAなどのハイエンドCADではオーバースペックとなる場合が多いです。CADシステムは一度導入するとなかなか種類を変更することが出来ないため、自分の会社の身の丈にあったシステムを導入することが重要です。

身の丈に合ったCADシステムは、身の丈に合った図面管理システムを必要とします。「図面バンク」は小さな製造業に適した図面管理システムです。

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