図面を電子化したときのデータ管理のコツ5選

2024.03.15

図面の電子化

図面の電子化は、現代の建築、製造業、エンジニアリングの分野で必要不可欠なプロセスとなっています。紙の図面をデジタルデータに変換することで、情報のアクセス性が向上し、共有が容易になります。また、紙を使わないことによって保管スペースを節約し、環境にも優しい選択肢となります。

しかし、これらのメリットを最大限に活かすためには、適切なデータ管理が極めて重要です。電子化された図面の管理が不十分だと、ファイルの紛失や誤ったバージョンの使用、アクセス権限の問題など、さまざまな問題が発生する可能性があります。このため、電子化した図面を効果的に管理するためのコツを知り、実行に移すことが求められます。

本記事では、図面を電子化した際のデータ管理のコツを紹介します。デジタルデータは、保存・管理のルールをある程度定めておかないと、必要なデータがどこにあるのか分からなくなることがあります。整理・整頓をを怠ると、必要な図面の検索に時間がかかる点は、紙の資料と同じです。

「図面をペーパーレス化したいが、データ化した図面をどのように保存・管理していいかわからない」
「DX化のためまず図面を電子化したいのだが、管理のコツが知りたい」
こんな方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

コツ1:原図の場所を決めておく

図面を電子化するプロセスにおいて、原図の管理は極めて重要な要素です。「原図」とは、上司や関係する責任者の承認印が押された、正式に承認された図面です。原図は、製造業においてはものづくりの基礎となる文書であり、後の修正や改訂のもとにもなる非常に重要な情報です。そのため、原図の保管場所を明確にし、関係者全員に周知することが不可欠です。

原図の保管場所を選定する際には、アクセスの容易さとセキュリティのバランスを考える必要があります。一般的に、原図の保管場所として考えられるのは、社内サーバー、クラウドストレージ、または紙の図面として物理的な図面棚に保管する方法です。

社内サーバー:社内ネットワークを通じて容易にアクセスでき、セキュリティ対策も社内で管理できるため、機密性の高い原図の保管に適しています。
クラウドストレージ:場所を選ばずにアクセスできる利便性があり、適切なセキュリティ設定を施せば、外部からの不正アクセスのリスクも軽減できます。また、クラウドサービスによっては自動バックアップ機能を提供している場合もあり、データの損失リスクを低減できます。
紙の図面棚:電子化プロジェクトの初期段階や、デジタルデータとしての管理に移行するまでの過渡期に選択されることがあります。紙の原図は、図番ごとに棚を分けるなど、探しやすいように保存するようにしましょう。

どの保管方法を選択するにしても、原図の場所は明確にし、関係者全員が常に最新の原図にアクセスできるようにすることが重要です。また、原図の更新があった場合には、速やかに情報を更新する必要があります。これらの措置により、電子化された図面の管理を効率化し、プロジェクトの進行をスムーズにすることができます。

コツ2:図面に紐づいた関連書類も一緒に保存する

製造業でのものづくりは、図面だけでなく、それに関連する書類も欠かせません。たとえば、見積書、注文書、検査成績書、CAMデータなどなどがあります。図面と一緒にこれらの書類も保存しましょう。これらの文書は、図面と密接に関連しており、設計や製造、施工の各段階で参照されるため、図面と一緒にアクセスできることが求められます。

関連書類を図面と一緒に保存することで、次のようなメリットがあります:
①情報の一元管理:プロジェクトに関連する全ての情報を一箇所で管理することで、必要な文書やデータを素早く見つけ出すことができます。これにより、時間の節約につながり、プロジェクトの効率化を図ることが可能です。
②アクセスの容易性:図面と関連書類を同じ場所、例えば同じフォルダ内やデータベース内に保管することで、プロジェクトに関わるスタッフ全員が必要な情報に容易にアクセスできるようになります。全員が同じデータを共有できるため、ミスコミュニケーションを減らすことができます。
③セキュリティと整合性の保持:全ての文書を一箇所で管理することで、文書のセキュリティポリシーを一元的に適用することができ、データの整合性や機密性の保持が容易になります。

図面と関連する書類を一緒に保存することは、プロジェクト管理の効率性と正確性が大きく向上します。電子化された図面管理のベストプラクティスの一つと言えるでしょう。

コツ3:フォルダ階層をルール化する

フォルダ階層の効果的な設計は、電子化した図面や関連文書の管理において極めて重要です。整理されたフォルダ構造により、必要な文書を迅速に見つけ出し、プロジェクトの効率性を高めることができます。

フォルダ階層をルール化する際のコツは、事前に計画を立て、プロジェクトの特性やチームの作業スタイルに合わせた構造を考えることです。また、フォルダ階層をあまり深くしすぎないことも重要です。

フォルダ階層の例①:顧客ごと

プロジェクトが顧客ごとに紐づいている場合、最上位のフォルダを顧客名で分類し、その下に各プロジェクトのフォルダを配置します。このフォルダ階層は、顧客に関連する全てのプロジェクトが一箇所で管理され、顧客対応時のアクセスが容易になります。

顧客ごとのフォルダ階層は、たとえば次のようになります。

上位フォルダ:顧客A
   サブフォルダ:プロジェクト1
   サブフォルダ:プロジェクト2
上位フォルダ:顧客B
   サブフォルダ:プロジェクト1
   サブフォルダ:プロジェクト2

図面バンクは、案件ごとに一覧表示する機能があります。案件名に顧客名を含むようにすると、たとえば以下のように顧客名ごとに表示します。

図面バンクの案件一覧表示

この場合、フォルダ階層は以下のようになっています。

2024_顧客A_〇〇プロジェクト
   図面
   見積書
   検査表
   CAMデータ
   ・・・
2023_顧客B_△△プロジェクト
   図面
   見積書
   ・・・
2023_顧客C_◆◆プロジェクト
   ・・・

フォルダ階層の例②:製品ごと

製品ごとにフォルダを作って管理する方法です。製品フォルダ内には、設計図、契約書、見積書など、製品関連の全ての文書を含めます。この方法は、さまざまな製品を作っている企業向けと言えるでしょう。

製品カテゴリーごとのフォルダ階層は、たとえば、次のようになります。

製品A
   図面
   見積書
   検査表
   CAMデータ
   ・・・

製品B
   図面
   見積書
   ・・・
製品C
   ・・・
  

フォルダ階層の例③:年度ごと

時間の経過とともにプロジェクトを追跡する必要がある場合、年度ごとにフォルダを分ける方法が有効です。たとえば、次のようになります。

2024年度
   プロジェクトA
      図面
      見積書
      検査表
      CAMデータ
      ・・・
   プロジェクトB
      図面
      見積書
      ・・・
2023年度
   プロジェクトC
      図面
      見積書
      ・・・
   プロジェクトD
      ・・・

フォルダ階層をルール化する際には、将来の拡張性や、チームメンバーが直感的に理解できる構造を心がけることが重要です。また、フォルダの階層を深くしすぎると、逆に目当てのファイルが探しにくくなります。フォルダの階層は、なるべくシンプルさを保つことも念頭に置きましょう。効果的なフォルダ階層は、情報の検索時間を短縮し、プロジェクト管理の効率を大幅に向上させることができます。

コツ4:ファイル名の命名規則を統一する

ファイル名の命名規則を統一することは、電子化された図面や文書を効率的に管理する上で不可欠です。適切な命名規則により、必要なファイルを迅速に探し、作業のスムーズな進行が期待できます。ここでは、ファイル名を検索しやすくするための命名規則のコツを紹介します。

ファイル名規則のコツ

明確性と一貫性:ファイル名には、その内容が一目でわかるような情報を含めることが重要です。プロジェクト名、文書の種類(見積書、設計図、契約書など)、作成日やバージョン番号など、ファイルを識別するための明確な情報を組み合わせます。また、ファイル名に同じ命名規則を適用することで、一貫性を保ちます。

短縮形の使用:ファイル名が長すぎると扱いにくくなるため、プロジェクト名や文書の種類を表す短縮形を使うことが効果的です。ただし、使用する短縮形はチーム内で共有し、誰もが理解できるものにする必要があります。

日付フォーマットの統一:ファイルの作成日やバージョンを示す場合は、日付フォーマットを統一します。例えば「YYYYMMDD」の形式を使用すると、ファイルが時系列順に並び、管理がしやすくなります。

検索しやすいファイル名の作成方法

図面の検索しやすいファイル名の例は、「図番_名称_改版」の形式を基本とします。例えば「BB2024-00002_スピンドルシャフト_rev1」のようします。命名規則をすべての図面に統一して適用すると、図面の検索がしやすくなります。

また、ファイル名は以下の点にも注意するといいでしょう。

キーワードを先頭に置く:最も重要なキーワード(図面の場合は、図番)をファイル名の先頭に置きます。これにより図面ファイルを図番で検索した際に、目的の図面が見つけやすくなります。

特殊文字の使用を避ける:ファイル名にスペース、コロン(:)、円マーク(¥)、スラッシュなどの特殊文字を使用すると、一部のシステムやプログラムで問題が生じることがあります。アンダースコア(_)やハイフン(-)を使うことで、これらの問題を避けることができます。

ファイル名の命名規則を社内で統一し、検索しやすい構造を整えることで、文書管理の効率が大幅に向上します。

コツ5:アクセス権限を決めておく

電子化された図面や関連文書の管理において、アクセス権限の設定は重要なセキュリティ対策です。適切なアクセス権限を決めておくことで、不正アクセスを防ぎ、情報の漏洩リスクを最小限に抑えることができます。以下は、アクセス権限を効果的に管理するためのコツです。

アクセス権限の基本原則

必要最小限の原則:各ユーザーには、その人が必要とする情報へのアクセスのみを許可します。これにより、情報の過不足なく、セキュリティを保ちながら効率的な情報共有が可能になります。

役割に基づくアクセス制御:ユーザーの役割や職務に基づいてアクセス権限を設定します。例えば、プロジェクトマネージャーには全体の文書へのアクセス権を、設計担当者には設計関連の文書へのアクセス権を与えるなど、役割に応じたアクセス管理を行います。

アクセス権限の設定方法

アクセス権限のカテゴリーを定義する:読み取り専用、編集可能、管理者など、アクセス権限のレベルを明確に定義します。それぞれのカテゴリーにどのような権限が含まれるかを具体的に決定し、関係者に通知します。

データの分類:図面や文書を機密性の度合いに応じて分類し、各カテゴリーに対するアクセス権限を設定します。機密性の高い情報には厳しいアクセス制限を設けることで、情報漏洩のリスクを減らします。

定期的なレビューと更新:プロジェクトの進行や人員の変動に応じて、アクセス権限の設定は定期的に見直しと更新が必要です。アクセス権限の適用ミスや不足がないよう、継続的に管理を行います。

図面管理システムでアクセス権限を設定する

図面管理システムは、アクセス権限の設定や管理を容易にする機能を備えています。これらのツールを利用すれば、ファイルやフォルダーに対して、ユーザーごとに異なるアクセス権限を設定し、電子データのセキュリティを強化できます。

適切なアクセス権限の設定は、情報の安全性を保ちながら効率的な共有を実現するために不可欠です。セキュリティと利便性のバランスを考えたアクセス権限の付与が求められます。

クラウド図面管理システムの活用について

画像:O-DAN

クラウド図面管理システムの導入は、現代のデジタル化された作業環境において、図面管理の効率性、アクセシビリティ、セキュリティを大幅に向上させます。ここでは、クラウド図面管理がおすすめな理由と、適切なクラウドサービスの選び方について説明します。

図面管理にクラウド図面管理システムがおすすめな理由3選

場所を問わない図面の閲覧環境:クラウド型の図面管理システムは、インターネット接続ができればどこからでも図面にアクセスできます。これにより、設計現場以外での即時の情報共有が可能です。たとえば、製造現場や、出張時、リモートワーク時でも図面の閲覧ができるようになります。

セキュリティの向上:クラウドサービスプロバイダーは、データの暗号化、定期的なバックアップ、セキュリティアップデートなど、高度なセキュリティ対策を提供しています。これにより、図面データの漏洩や紛失のリスクを最小限に抑えることができます。

導入コストの削減:クラウドサービスを利用することで、サーバーの設置やメンテナンスにかかるコストを削減できます。

ストレージ容量の柔軟性:プロジェクトの規模が変動しても、クラウドサービスならば容易にストレージ容量を調整できます。企業の成長やプロジェクトの多様化に柔軟に対応することが可能です。

クラウド図面管理システムの選び方

セキュリティ機能:データ保護のため、クラウドサーバー内データの暗号化、多要素認証、定期的なセキュリティアップデートを提供するクラウドサービスを選ぶことが重要です。

利用料金とプラン:ストレージの容量、アクセス数、追加機能などに応じた料金プランを提供しているか確認し、企業の予算内で最適なサービスを選択します。

ユーザビリティ:直感的なインターフェースと簡単な操作性を持つクラウドサービスを選ぶことで、チームメンバー全員がスムーズに利用できるようになります。

カスタマーサポート:問題が発生した際に迅速かつ適切なサポートを受けられるサービスを選ぶことは、図面管理システムの管理担当者の負荷を減らし、結果として図面管理がスムーズになります。

クラウド図面管理の活用により、企業は効率的でセキュアな図面管理を実現し、ビジネスの柔軟性と競争力を高めることができます。適切なクラウドサービスの選択は、このプロセスにおいて重要な一歩となります。

下記の記事にクラウド図面管理システムのおすすめ5選について書いてありますので、ぜひ参考にしてください。

参考記事:【2024年最新】クラウド図面管理について完全解説|メリットとおすすめサービス5選を紹介!

まとめ

本記事を通じて、図面を電子化した際の効率的なデータ管理に役立つコツ5選を紹介しました。

コツ1:原図の場所を決めておく
コツ2:図面に紐づいた関連書類も一緒に保存する
コツ3:フォルダ階層をルール化する
コツ4:ファイル名の命名規則を統一する
コツ5:アクセス権限を決めておく

また、クラウド図面管理システムの活用がもたらすメリットと、適切なクラウド図面管理システムを選択するためのポイントも紹介しました。

この記事で紹介したコツを実践することで、電子化された図面の管理をスムーズにし、生産性の向上、ひいてはDX化の一歩とすることができるでしょう。

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