品質管理の問題解決力が劇的に向上!QC7つ道具の使い方完全ガイド

2024.05.07

製造業において、品質管理は高品質な製品を安定的に供給するために欠かせません。その品質管理活動を効果的に進めるためのツールとして知られているのが、QC7つ道具です。

QC7つ道具は、問題解決のためのデータ収集や分析に用いられる7種類の手法の総称で、パレート図、特性要因図、グラフ、ヒストグラム、散布図、管理図、チェックシートから構成されています。これらのツールを適切に使いこなすことで、問題の原因を特定し、解決に導くことができます。

しかし、QC7つ道具は単に使えばいいというものではありません。それぞれのツールの特徴を理解し、問題解決のフェーズに応じて適切に選択・活用することが重要です。また、QC7つ道具はQCストーリーと呼ばれる問題解決の手順の中で体系的に用いることで、より大きな効果を発揮します。

本記事では、QC7つ道具の基本的な使い方から、QCストーリーでの活用法まで、図解とともに分かりやすく解説します。また、QC7つ道具と混同されがちな新QC7つ道具についても、その違いと使い分け方を説明します。

品質管理の担当者はもちろん、問題解決力を高めたいすべての人におすすめの内容となっています。ぜひ最後までご一読いただき、QC7つ道具をマスターして、品質管理や問題解決にお役立てください。

QC7つ道具とは? 品質管理に欠かせないツール

QC7つ道具は、品質管理(Quality Control)において使用される7種類の手法の総称です。データに基づいた客観的な分析を可能にし、問題の本質を見抜くことを助けます。各ツールには独自の特徴があり、問題の種類や解決のフェーズに応じて使い分けることが重要です。

正しく活用することで、QC7つ道具は品質管理における強力な味方となります。問題の早期発見、原因の特定、解決策の立案と実行など、品質管理のあらゆる場面で威力を発揮します。

QC7つ道具が生まれた背景

QC7つ道具は、1960年代ごろ日本で生まれました。第二次世界大戦後、日本の製造業は品質管理の重要性を認識し、統計的手法を取り入れた品質管理活動を開始しました。

当時、日本科学技術連盟(JUSE)の専門家チームが中心となり、品質管理に役立つツールの選定と普及に尽力しました。その結果、現場の担当者でも扱いやすい7つの手法がQC7つ道具として整理されました。

以降、QC7つ道具は日本の製造業を中心に広く普及し、品質管理の基礎として定着しました。現在では、さまざまな業種・業態で活用され、とくに製造業においては品質管理の標準的なツールとなっています。

QC7つ道具の目的と効果

QC7つ道具の主な目的は、以下の2点です。

1. 問題の発見と原因の特定に役立てる
2. データを視覚化し、客観的な分析に役立てる

QC7つ道具を適切に活用することで、問題が発生したときにその要因を特定し、効果的な対策を早めに打つことができます。また、データを用いて客観的に分かりやすく図示することで、メンバー間で問題の共有を確実に行うことができます。

QC7つ道具は、品質管理における基本的なスキルであると同時に、問題解決力を高めるための強力なツールでもあります。これらのツールを使いこなすことで、品質管理の担当者は、高いレベルの品質を追求することができるのです。

QC7つ道具の種類と使い方

QC7つ道具は、パレート図、特性要因図、グラフ、ヒストグラム、散布図、管理図、チェックシートの7種類のツールから構成されています。ここでは、各ツールの概要、活用時の効果、作成手順を順に解説していきます。

1. パレート図:重要な問題に優先的に取り組む

パレート図
パレート図の例

パレート図は、問題の発生頻度や影響度を棒グラフと折れ線グラフで表現したツールです。棒グラフは問題の種類ごとの発生頻度を示し、折れ線グラフは累積割合を表します。

パレート図の主な目的は、重要な問題を見抜き、優先的に取り組むべき対象を明確にすることです。パレート図を活用することで、以下のような効果が期待できます。

・問題の全体像を視覚的に把握できる
・重要な問題に集中して対策を立てられる
・限られたリソースを効果的に配分できる

パレート図の作成手順は以下の通りです。

1. 問題の種類ごとにデータを収集する
2. 問題の種類を発生頻度や影響度の大きい順に並べる
3. 棒グラフと累積割合の折れ線グラフを描く
4. パレート図に必要な情報(データの個数や収集期間など)を記入する

2. 特性要因図:問題の原因を探る

特性要因図
特性要因図の例

特性要因図は、問題の原因を体系的に整理・分析するためのツールです。魚の骨の形に似ていることから、フィッシュボーン・チャートやイシカワ・ダイアグラムとも呼ばれます。

特性要因図の主な目的は、問題の原因を漏れなく抽出し、真の原因(真因)を見抜くことです。特性要因図を活用することで、以下のような効果が期待できます。

・問題の原因を多角的に検討できる
・真因を抽出し、効果的な対策の立案につなげられる
・問題の構造を視覚的に理解できる

特性要因図の作成手順は以下の通りです。

1. 問題(特性)を明確にする
2. 大骨を設定する(例:人、機械、材料、方法)
3. 中骨を大骨ごとに付け加える(大骨に関連する「事実」が中骨となる)
4. 小骨を中骨ごとに付け加える(中骨に対し「なぜ、そうなるのか?」と考えられる要因が小骨となる)
5. 要因の漏れがないか、分類は正しいのか確認する
6. 真因を抽出する

3. グラフ:データの傾向を視覚的に捉える

グラフ
グラフの例

グラフは、データの傾向や変化を視覚的に表現するためのツールです。折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフなど、様々な種類のグラフがあり、目的に応じて使い分けます。

グラフの主な目的は、データの傾向を一目で把握することです。グラフを活用することで、以下のような効果が期待できます。

・データの変化や傾向を直感的に理解できる
・異常値が視覚的に表現され、問題の兆候を発見できる
・データの比較や関連性の分析が容易になる

グラフの作成手順は以下の通りです。

1. 目的に応じたグラフの種類を選択する
2. データを収集し、整理する
3. 適切な軸(縦軸、横軸)を設定する
4. データをグラフ上にプロットする
5. 必要事項(軸の単位やタイトルなど)を記入する

4. ヒストグラム:データのバラツキを把握する

ヒストグラム
ヒストグラムの例

ヒストグラムは、データの分布状態を表現するためのツールです。データを一定の区間に分割し、各区間に含まれるデータの度数(頻度)を棒グラフで表します。

ヒストグラムの主な目的は、データのばらつきや偏りを把握し、工程の能力を評価することです。ヒストグラムを活用することで、以下のような効果が期待できます。

・データの分布状態から、工程の能力を視覚的に理解できる
・異常な分布パターンを発見できる

ヒストグラムの作成手順は以下の通りです。

1. データを収集する
2. 区間の幅を設定する
3. 各区間に含まれるデータの数(度数)を集計する
4. 各区間ごとの度数を棒グラフで表現し、ヒストグラムを作成する
5. 必要事項(軸の単位や上限規格、下限規格など)を記入する

ヒストグラムは、データのばらつきを評価するための重要なツールです。正常な工程では、ヒストグラムが釣鐘型の対称的な分布を示します。分布の偏りや複数のピークは、工程の異常を示唆する可能性があります。

5. 散布図:2つのデータの関係性を調べる

散布図
散布図の例

散布図は、2つのデータの関係性を視覚的に表現するためのツールです。横軸と縦軸にそれぞれのデータを取り、データ点をプロットすることで、変数間の相関関係を調べることができます。

散布図の主な目的は、2つのデータの関連性を可視化することです。散布図を活用することで、以下のような効果が期待できます。

・データ間の相関関係を視覚的に理解できる
・原因と結果の関係を特定できる

散布図の作成手順は以下の通りです。

1. 関係性を調べたい2つのデータを選択する
2. データを収集する
3. 横軸と縦軸にそれぞれのデータを設定する
4. データ点を散布図上にプロットする
5. 必要事項(軸のデータ名や単位など)を記入する

散布図は、特性評価によく用いられるツールです。例えば、接着剤の塗布量と接着強度の関係を散布図で表現することで、接着剤のおおまかなばらつきの傾向や適切な塗布量を決定するときに用いられます。

6. 管理図:工程の安定性を監視する

管理図
管理図の例

管理図は、工程の安定性を監視するためのツールです。時系列データを折れ線グラフにし、管理限界線を設定することで、工程の変動や異常を検出することができます。

管理図を活用することで、以下のような効果が期待できます。

・工程の安定性をリアルタイムに監視できる
・異常原因を早期に特定し、対策を講じられる
・工程能力の評価や改善に役立てられる

管理図の作成手順は以下の通りです。

1. 管理対象とする特性値を選択する
2. 群分けされたデータを一定の時間間隔ごとに取得する
3. 群ごとにXbar(群ごとのデータの平均値)とR(群ごとのデータの最大値-最小値)を取得する
4. XbarとRのそれぞれについて、上方管理限界線(UCL)、下方管理限界線(LCL)を計算する
5. データ点を管理図上にプロットする
6. 必要事項(UCLやLCLの値など)を記入する

7. チェックシート:データ収集を効率化する

チェックシート
チェックシートの例

チェックシートは、データ収集を効率化するためのツールです。観測したいデータの種類や項目をあらかじめリスト化し、チェックマークやデータを記入することで、簡単かつ漏れのないデータ収集が可能となります。

チェックシートを活用することで、以下のような効果が期待できます。

・データ収取の手順が標準化される
・データの記録漏れを防止できる
・収集したデータの集計や分析が容易になる

チェックシートの作成手順は以下の通りです。

1. 収集するデータの種類や項目を明確にする
2. データの記録方法を決定する(チェックマーク、数値など)
3. チェックシートのフォーマットを作成する
4. チェックシートを使ってデータを収集する
5. 収集したデータを集計・分析する

チェックシートを実際に運用する中で、課題を感じる場面もあると思います。たとえば、足りない項目や不要な項目があったり、チェックシートそのものが見づらく記入しずらいといったことが考えられます。その際は、チェックシートを利用する現場から課題を出し、改善していくことで、より効率よくデータを集計できるようになります。

チェックシートを起点として、他のツールを効果的に活用することで、品質管理における問題解決力を大きく高めることができるでしょう。

新QC7つ道具との違いと使い分け

QC7つ道具の制定後、これらを補完する新たなツール群が開発されました。それが新QC7つ道具です。ここでは、新QC7つ道具の概要と、QC7つ道具との違いや使い分けについて解説します。

新QC7つ道具の概要

新QC7つ道具は、1980年代に日本科学技術連盟(JUSE)によって提唱されました。従来のQC7つ道具が主に製造現場の品質管理に焦点を当てているのに対し、新QC7つ道具は製品開発や管理業務など、より広範な領域で活用されることを想定しています。

新QC7つ道具は、以下の7つのツールから構成されています。

1. 親和図:アイデアや意見を整理・グループ化するためのツール
2. 連関図:問題や課題の因果関係を明確化するためのツール
3. 系統図:目的と手段の関係を体系的に整理するためのツール
4. マトリックス図:2つの要素間の関連性を分析するためのツール
5. マトリックスデータ解析:数値データの関連性を分析するためのツール
6. アローダイアグラム:プロジェクトのスケジュールを管理するためのツール
7. PDPC(Process Decision Program Chart):問題解決のプロセスを計画するためのツール

これらのツールは、QC7つ道具と併用することで、品質管理における問題解決力をさらに高めることができます。

新QC7つ道具は、品質管理だけでなく、製品開発、プロジェクト管理、業務改善など、さまざまな領域で活用することができます。アイデアの整理、問題の構造化、対策の立案などに効果的であり、チームでの合意形成やコミュニケーションの促進にも役立ちます。

QC7つ道具と新QC7つ道具の違い

QC7つ道具と新QC7つ道具は、ともに品質管理における問題解決のためのツール群ですが、その特徴や適用範囲には違いがあります。

1. 目的の違い
 ・QC7つ道具:主に製造現場における品質管理やプロセス改善に焦点を当てている
 ・新QC7つ道具:製品開発、管理業務、アイデア発想など、より広範な領域での活用を想定している
2. 扱うデータの種類
 ・QC7つ道具:主に数値データ(回数や測定値など)を扱う
 ・新QC7つ道具:言語データ、概念、アイデアなど、抽象的なデータも扱う
3. 問題の性質
 ・QC7つ道具:比較的具体的で構造化された問題に適している
 ・新QC7つ道具:抽象的な問題に適している
4. 使用局面
 ・QC7つ道具:主に数値データで捉えられる問題の分析フェーズで使用される
 ・新QC7つ道具:問題の定義、アイデア発想、計画立案など、問題分析以外のフェーズで使用される

このように、QC7つ道具と新QC7つ道具は扱う問題の性質や目的に応じて使い分けることが重要です。両者を組み合わせることで、品質管理における問題解決力をさらに高めることができます。

QCストーリーにおけるQC7つ道具の活用法

QC7つ道具は、単独で使用するだけでなく、QCストーリーと呼ばれる問題解決のプロセスの中で体系的に活用することで、より大きな効果を発揮します。ここでは、QCストーリーの概要と、その中でQC7つ道具を活用する方法について解説します。

QCストーリーとは

QCストーリーは、品質管理における問題解決の標準的なプロセスです。QCストーリーのひとつの型である問題解決型は、問題の発見から解決までを一連のストーリーとしてまとめたもので、以下の7つのステップから構成されています。

1. テーマの選定
2. 現状把握と目標設定
3. 要因の解析
4. 対策の立案と実施
5. 効果の確認
6. 標準化と管理の定着
7. まとめと反省

QCストーリーは、単なる問題解決の手順にとどまらず、品質管理の思想や考え方を体現したものです。テーマの選定から管理の定着まで、一貫した方針のもとで問題解決に取り組むことで、継続的な改善を実現することができます。

QCストーリーの各ステップとQC7つ道具の活用法

QCストーリーの各ステップでは、QC7つ道具や新QC7つ道具を適切に活用することが求められます。ここでは、各ステップでよく使うQC7つ道具・新QC7つ道具と、その活用法を見ていきましょう。

1. テーマの選定
 ・新QC7つ道具の親和図を用いて、課題やアイデアを整理する
2. 現状把握と目標設定
 ・QC7つ道具のチェックシートを用いて、データを収集する
 ・QC7つ道具のパレート図を用いて、重要な問題を抽出する
 ・QC7つ道具のグラフやヒストグラムを用いて、現状を可視化する
 ・新QC7つ道具のマトリックス図を用いて、テーマを決定する
3. 要因の解析
 ・QC7つ道具の特性要因図を用いて、真因をあぶりだす
 ・新QC7つ道具の連関図を用いて、結果と原因の関係を整理する
4. 対策の立案と実施
 ・新QC7つ道具の系統図を用いて、方策を展開する
 ・新QC7つ道具のマトリックス図を用いて、方策の採否を決定する
5. 効果の確認
 ・QC7つ道具のチェックシートを用いて、対策実施後のデータを収集する
 ・QC7つ道具のグラフやヒストグラムを用いて、対策実施後の結果を可視化する
6. 標準化と管理の定着
 ・新QC7つ道具のマトリックス図を用いて、標準化と管理の項目や担当などを決定する
7. まとめと反省
 ・新QC7つ道具のマトリックス図を用いて、各ステップごとの反省点をまとめる。

このように、QCストーリーの各ステップにおいて、QC7つ道具と新QC7つ道具を組み合わせることで、問題解決のプロセスを効果的に進めることができます。

QCストーリー実践のコツ

QCストーリーを実践する上で、以下のようなコツを押さえておくことが重要です。

1. チームで取り組む
 ・QCストーリーは、チームで協力して進めることが基本です。多様な視点や知見を取り入れることで、問題解決の質を高めることができます。
2. ツールを適材適所で活用する
 ・QC7つ道具や新QC7つ道具の特徴を理解し、適材適所で活用することが重要です。ツールの使い方に慣れることで、問題解決のスピードと質を高めることができます。
3. 事実に基づいて判断する
 ・QCストーリーでは、事実に基づいた判断が求められます。データに基づいて現状を把握し、根拠を持って対策を立案することが重要です。
4. 継続的に改善する
 ・QCストーリーは、一回限りの活動ではなく、継続的な改善のサイクルを回すためのツールです。標準化と管理の定着を確実に行うことで、品質管理のレベルを維持し、さらなる改善のネタも生まれてくることが可能となります。

QCストーリーは、品質管理において問題解決の強力な武器となります。QC7つ道具や新QC7つ道具を適切に活用しながら、QCストーリーの各ステップを着実に進めることで、担当者の品質管理のスキルアップも可能となります。改善のサイクルが組織的に広がることで、全社的な品質管理のレベルも上がっていくでしょう。

QCストーリーをもとに改善活動を行うQCサークル活動に取り組む会社も多いです。こちらの記事では、QCサークル活動の推進事務局がすべきことを解説しましたので、推進事務局の方はぜひ参考にしてみてください。

(まとめ)QC7つ道具を効果的に活用するために

本記事では、品質管理に欠かせないツールであるQC7つ道具について、その種類や活用時の効果、QCストーリーでの活用法まで詳しく解説してきました。ここでは、QC7つ道具を効果的に活用するためのポイントをまとめます。

1. データに基づいて判断する
 ・QC7つ道具は、データに基づいた客観的な分析と判断を可能にします。事実に基づいて問題の本質を見抜き、効果的な対策を立案することが求められます。
2. 適切なツールを選択する
 ・問題の性質や解決のフェーズに応じて、適切なQC7つ道具を選択することが重要です。ツールの特徴を踏まえつつ、問題解決に最も効果的なツールを使い分ける必要があります。
3. 新QC7つ道具も活用する
 ・従来のQC7つ道具に加えて、新QC7つ道具も積極的に活用しましょう。新QC7つ道具は、より抽象的で複雑な問題にも対応できるツール群であり、QC7つ道具と組み合わせることで、問題解決力をさらに高めることができます。
4. QCストーリーの枠組みで活用する
 ・QC7つ道具は、QCストーリーの各ステップで体系的に活用することで、大きな効果を発揮します。本記事で書いた各ステップでのツールの活用法をぜひ参考にしてください。
5. 継続的に学習し、スキルを高める
 ・QC7つ道具を使いこなすためには、継続的な学習と実践が欠かせません。社内研修や勉強会などを通じて、QC7つ道具に関する知識とスキルを高めていくことが求められます。

本記事が、皆さんのQC7つ道具の理解を深め、実務で活用することで問題解決の糸口をつかむことに役立つことを願っています。