製造業の図面をペーパーレス化で効率化!現役設計者が3つの活用事例を紹介

2024.04.21

図面を紙で作成・保存・確認することは、ドラフターで製図していた時代では当たり前のことでした。しかし、紙での図面管理は、探すのに時間がかかる、共有に手間がかかる、劣化や紛失のリスクがあるなど多くの課題を抱えています。

そこで注目されているのが、図面管理のペーパーレス化。図面を電子化し、図面管理システムで一元管理することで、業務を大幅に効率化できるのです。

本記事では、製造業の図面をペーパーレス化するメリットと、ペーパーレス化後の図面の活用事例について、現役設計者の視点から解説します。筆者自身、10年以上機械設計の現場で働く中で、5~6年前に図面管理のペーパーレス化を経験。その効果を身をもって実感しています。

ペーパーレス化後の図面の活用事例は、筆者の経験をもとに3つ紹介します。設計部門と製造部門の図面データ共有、設計者の現場立ち合い、組立ラインでのタブレット活用です。いずれも紙図面のみの運用よりもメリットを感じています。

記事の最後では、ペーパーレス化した後の図面データを管理する「図面管理システム」について紹介します。

「紙の図面の管理に頭を悩ませている……」
「ペーパーレス化後のメリットが想像できず、なかなか踏み切れない……」

このような方は、ぜひ本記事を最後まで読んでみてください。

製造業で働く筆者の図面ペーパーレス化の体験

筆者は、設計者として機械設計の現場で10年以上働いています。以前は、図面の管理は紙を主体としていました。ある時からペーパーレス化が進み、図面も電子データ主体で管理することになりました。

当時は「紙の図面のほうが見やすいし、バインダーからすぐ参照できるから電子データにして大丈夫なのか……」と思っていました。しかし、図面をペーパーレス化したことで、図面を管理する時間が大幅に短縮でき、机周りもすっきり。今ではペーパーレス化にして本当によかったと実感しています。

以前は、設計変更があるたびに原図を紙で印刷し、原図をコピーした複写図を製造部門や調達部門など関係部門に出向いて配布していました。いろんな業務が重なってあわただしいときは、「この改版の図面は製造部門に渡したっけ……?」と、最新版の図面を共有したかどうかを忘れる時もありました。

また、図面を探すときは、何十分もかけて書棚をごそごそ。最近の図面はバインダーの場所を覚えているので良いのですが、何年も前の製品や試作品の図面は見つからないこともしばしば。

ペーパーレス化後は、そうした悩みから解放されました。設計変更があっても、最新版の図面を図面管理システムにアップロードすればいつでも共有できるようになりました。おかげで図面を探す・整理する時間が大幅に減り、本来の設計業務に集中できる時間が増えました。

また、紙の図面で埋め尽くされていた机の上も、すっきりと片付きました。大量の紙図面を収納するための書棚も不要に。オフィスのスペースを有効活用できるようになりました。

「紙の図面が当たり前」という固定観念を捨て、ペーパーレス化に踏み切ったことで、業務の質が確実に向上した――。筆者はそう実感しています。みなさんの会社でも、ぜひペーパーレス化を検討してほしいと思っています。

図面のペーパーレス化の3つのメリット

図面をペーパーレス化し、電子データとして一元管理することで、次の3つの大きなメリットが生まれます。

1. 検索性が向上し、図面を探す時間を削減できる

紙の図面は、探すのに大変な手間と時間がかかります。必要な図面が見つからず、作業が滞ることも。しかし電子化されたデータなら、ファイル名や図面番号などのキーワードですぐに検索可能。必要な図面にアクセスする時間を大幅に短縮できるのです。

2. 他部署との図面共有が楽になる

他部署に配布するのに手間がかかる、バージョンの古い図面が出回ったまま、といった紙の図面ならではの問題はペーパーレス化で一発解決。図面データを所定の場所に置き、共有設定で必要なメンバーにアクセス権を設定すれば、いつでも最新の図面を確実に参照できます。

3. 紛失のリスクを低減できる

紙の図面は、一時的に持ち出したまま返却されず、行方不明になってしまうことがあります。

バックアップ体制として、原図棚の原図をすべてコピーしたバックアップ用の棚を作ることも考えられます。しかし、このやり方は管理コストがとても大きくなり、あまり現実的ではないと思います。

その点、電子化された図面はデータとして保存されているので、バックアップは比較的簡単です。また、図面を保存するクラウド図面管理システムでは、データセンターのBCP対策の一環としてデータの紛失やセキュリティへの対策が強固になっています。そのため、不測の事態によるデータ紛失のリスクを大きく減らせるのです。

このように図面のペーパーレス化は、業務の効率化だけでなく、リスクヘッジの面でも大きなメリットをもたらします。

下記の記事では、図面の電子化のメリット・デメリットを解説しているので、こちらもあわせてご参考ください。

図面のペーパーレス化活用事例1:図面管理システムに図面をアップロードし、製造部門と共有

ここからは、筆者が図面のペーパーレス化で有効だと感じた活用事例を3つ紹介します。最初の事例は、設計部門と製造部門で図面データを共有したことです。

まず、設計部門で承認された図面を、図面管理システムに登録します。そして、その図面データが保存されているフォルダ・ファイルの場所を、製造部門と共有します。これにより、製造部門は最新の図面にアクセスできるようになります。

この事例では、次のようなメリットが生まれました。

印刷にかかる工程が無くなる

以前の製造部門との図面共有は、原図をコピーして紙の複写図を渡していました。この方法は、印刷にかかる工程自体にそれなりの時間がかかります。コピーが漏れなくできているかチェックするのですが、図面の枚数が多くなるほどチェックに時間がかかってしまいます。

また、印刷関連のトラブルがあった時には、さらに時間を取られていました。たとえば、印刷の設定を間違えてA3の図面をA4で印刷してしまったり、プリンターに紙が詰まって直したりといった時です。印刷途中で紙が無くなったら、自分たちで補充しないといけません。

このように、印刷そのものに時間がかかっていたのです。

ペーパーレス化後は、印刷の工程を最小化できるので、その分設計者は時間を他のことに使えるようになります。

製造部門は最新版の図面にいつでもアクセス可能になる

製造部門は、設計から共有されたフォルダ・ファイルにアクセスすることで、いつでも最新版の図面を確認できます。紙の図面を受け取る必要はありません。図面の改版があっても、設計者が改版図面を更新さえすれば、すぐに受領できます。

印刷や廃棄の手間も削減でき、図面管理コストを低減

こうした仕組みにより、製造部門が図面を管理するためにプリントアウトする必要がなくなります。何十枚、何百枚もの図面を印刷したり、古い図面を破棄したりする手間も削減できるのです。これは、用紙代やインク代、印刷に関わった時間の人件費など、図面管理にかかるコストの低減にもつながります。

製造業では、設計部門と製造部門の連携が重要です。図面のペーパーレス化は、その連携をよりスピーディかつ確実なものとする強力なツールだと言えるでしょう。

図面のペーパーレス化活用事例2:設計者の現場立ち合いで必要な図面をすぐ検索

次に、設計者が製造現場に立ち会う際の、ペーパーレス化の事例を見てみましょう。

ノートPCやタブレットに図面データを入れて現場へ。必要な図面をすぐに参照可能

設計者の仕事の一つとして、製造現場に向かい、試作品や製品の組立に立ち会うという場面があります。紙で図面を管理していたころは、関連しそうな図面はすべて印刷し、現場に持ち込んでいました。そうしなければ図面の参照ができなかったからです。

必要な図面が手元になければ、事務所まで紙の図面を取りに行く手間が発生していました。

図面をペーパーレス化することによって、ノートPCやタブレットから直接図面管理システムにアクセスし、必要な図面を参照できます。これによって、組図など参照する確率が高い図面は紙で印刷し、あまり参照しない子図面などは印刷せず、ノートPCやタブレットから参照するようにしました。

図面管理システムに格納した図面は、図番や名称でノートPCやタブレットからすぐに検索ができます。必要な図面をすぐに呼び出せるので、紙の束から図面を探すときと比べると検索時間が短くなりました。

この活用事例によって、立ち会いにおける図面の準備時間、図面の参照時間を大幅に短縮できています。

現場の環境によっては、電子機器が持ち込めないということもあるでしょう。しかし、一般的な製造業の組立現場では、5SがしっかりできていればノートPCやタブレットを置く場所は確保できそうです。

「現場にPC持ち込みなんてできない」と思っている方も、ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。

図面のペーパーレス化活用事例3:試作組立ラインでのタブレット活用

最後に、製造現場の組立ラインでのペーパーレス化活用事例をご紹介します。

組立担当者がiPadなどのタブレットで図面を参照

組立ラインの作業者は、iPadなどのタブレットを使って、ペーパーレス化された図面を直接参照します。組図など紙で参照したほうが見やすい図面は印刷します。このようにして、紙とデータを併用して図面を読み取ります。

タブレットを製造現場で利用することで、紙図面の散乱や紛失を少なくし、製造現場の5Sを保つことにつながります。

図面にマーカーや注釈をつけて保存し、過去の組立情報も蓄積

作業者は、タブレットを使って組立時の注意点などをマーカーで書き込んで保存します。次回同じ製品を組み立てる際、前回の注釈を参照すれば、ミスを防ぎやすくなります。ベテランの技能者の知見を図面に蓄積し、引き継ぐことも可能です。

改善点を書き込んだ図面を設計部門とも即座に共有可能に

組立の際に気づいた改善点があれば、その場で図面に書き込んで、設計部門とすぐに共有できます。図面管理システムを使えば、リアルタイムに情報を共有可能。設計部門は、現場の声を即座に回収し、図面に反映することができます。

このように、組立ラインでのタブレット活用は、現場の5S改善だけでなく、現場の知見の蓄積と、設計部門とのスムーズな情報共有においても有利にはたらきます。

他の活用事例を知りたい方へ:下記の記事では、タブレット端末を用いた図面の活用方法について、製造、営業、ユーザーサポート各現場での具体的なシーンを紹介しています。ぜひ参考にしてください。

ペーパーレス化した図面の管理は、図面管理システムを使うのがおすすめ

図面をペーパーレス化する際は、図面管理システムへの保存をおすすめします。

パソコンのローカルフォルダにデータを保存する方法では、効果が限定的です。保存場所が不明確だと、紙の図面と同様に必要なものを見つけにくくなります。さらに、パソコン内にデータを保存しただけでは、社内のメンバーが図面データを見ることができませんし、機器の故障時にはデータの損失リスクが生じます。

特に中小企業には、初期投資を抑えつつ安全性が保証されるクラウド型図面管理システムがおすすめです。クラウド技術の進化により、高い安全性を維持しながら効率的に管理が可能です。

こちらの関連記事では、図面管理システムの定義やできることについて詳しく解説しています。

また、こちらの記事はクラウド図面管理システムについて解説しています。おすすめの図面管理システムも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

図面のペーパーレス化は、これからの製造業の業務効率化に欠かせない重要な取り組みです。紙の図面ならではの課題:「探す手間」「共有の手間」「紛失リスク」などを、一挙に解決してくれる強力な味方となるでしょう。

本記事では、図面のペーパーレス化の3つのメリットとして、「検索性の向上」「他部署との共有の容易さ」「紛失リスクの低減」を挙げました。また、図面のペーパーレス化の活用事例として、「設計部門と製造部門の図面データの共有」、「設計者の現場立ち会い」、「組立ラインでのタブレット活用」の3つを紹介しました。これらは、いずれも筆者の設計者としての経験にもとづき、筆者がペーパーレス化のメリットを実感したものです。

ぜひ、本記事で紹介したメリットや活用事例を参考に、あなたの会社に合った図面管理のペーパーレス化の活用方法を考えてみてください。業務効率の向上だけでなく、整理整頓、オフィスのスペース増加など、様々な効果が期待できるはずです。

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